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孤独な研究者の夢想

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認知科学研究・最近読んだ本・統計など研究に関係することを書きます。
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2019年6月の記事一覧

問題とはなにか? ー企画とモノと発見とー

「問題」と言われると「社会問題」「地球温暖化問題」などなど、 「なにか良くないこと」だと思う場合が多い。 ただ、「良し悪し」の問題というよりも、 「解くのが難しい問題」や「難問」という風に、デザインの分野では捉えられているのではないだろうか。 イタリアのデザイナーであるブルーノ・ムナーリは、彼の著書『モノからモノが生まれる(原題:Da cosa nasce cosa)』で、 「問題とはなにか?」ということについて考察を巡らせている。 今回はこの「問題」について考え

Computational Thinkerを育てるには? 【Medium記事紹介】

過去に「プログラミング的思考」について書きましたが、今回は世界ではどのような表現がされているか、Computational Thinkingについてご紹介します。 日本でのプログラミング的思考 プログラミング的思考を再び引用すると、下記のようなものです。 「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、とい

エルゴード性の罠とスイッチ 【トッド・ローズ著 ハーバードの個性学入門】

私たちは日々「平均思考」に基づいて様々な意思決定を行っている。 では、なぜそう考えてしまうのだろうか? 暗に私たちが基づいてしまっている前提について今回は考えてみよう。 私たちが基づくエルゴード性エルゴード性とは、確率過程において見ることのできる性質で、 「ある量の時間平均が集合平均と一致する」 という過程だ。 シンプルなことばで表現されているが、これだけを聞くと頭に即座に「?」が浮かぶ。ある量の時間平均が集合平均と一致するというのはどういうことなのだろうか?

現実世界とユートピア 【エンツォ・マーリ著 プロジェクトとパッション】

工場による大量生産の時代。 私達がもっていた職業的知識を失わせ、 自立の余地もない画一化された住居をあてがわれ、 商品と広告にあふれかえり家庭生活や社会生活は貶められた。 現実世界の中で、私達には「プロジェクト」が残されている。 そんなことを伝える書が、エンツォ・マーリの『プロジェクトとパッション』です。 プロジェクトとデザイン プロジェクトは、イタリア語で「progetto」 「design」という英語に先立って使用されていた言葉であることを著者が脚注に記して

活動中心のデザイン思考 【 D.A.ノーマン著 誰のためのデザイン?】

「デザイン思考」の文脈では、序盤の「共感」のフェーズで 徹底的にユーザーを知る ことを重視しています。 そして、今回は人間中心の設計をするのか、活動中心の設計をするのか、というところで、「活動にフォーカスする必要性」について書こうと思います。 デザイン思考のダブルダイヤモンドモデル「デザイン思考」のモデルで紹介されているものは、「ダブルダイヤモンド」モデルです。 (誰のためのデザイン?p.308の図を若干修正) Googleで用いられているデザイン思考のプロセスに

部活と宗教とイニシエーション

私が体験してきた中高の部活。 未だに中学生からの友人と毎年集まることもあるのはなんでだろう、そんなことを最近考えます。 改めて最近の話をしなくても一緒にいることができるのは、なぜだか戦友だからなのか、 でもこの特殊な雰囲気は今まで部活しか味わうことがなかったと思い返します。 部活へのイニシエーション今色々思い返すと、 中学テニス部に入ると、のんびりしていた自分は(今でものんびりしていますが)、練習中は「ファイト行きます!」(これを大きな声で早く唱えるので「ファーイキ

言語とサイエンス・フィクション

今日はTCSワークショップ、「プログラミングは、ことば。」の初回ワークショップを行いました。 改めて「言語」を考えてみるといろいろなアイディアが浮かんできて楽しいのですが、その中でも改めて「言語」を中心にしたサイエンス・フィクションを4作品ご紹介したくなったのでご紹介します。 1.テッド・チャン著『あなたの人生の物語』『あなたの人生の物語』 一時期「巨大ばかうけ」でtwitterなどネット界隈を騒がせた、映画「メッセージ」の原作です。 主人公は言語学者。宇宙人の船であ

学びへのIT活用に役立つ書籍4選

来年度からプログラミング教育が必修化されるなか、私たちの生活だけでなく学校にも深くテクノロジーは入りこんできています。 そうなったときに、どのような活用をすればよいのか、ということで迷うかもしれません。そうなったときに道標となるような本を4冊選びました。もし宜しければお手にとって呼んでみてください。 1.シーモア・パパート著『マインドストーム』 サブタイトルが「子供、コンピューター、そして強力なアイデア」ということで、教育の分野にテクノロジーを入れることを想定した著書です

標準化と分業のテイラー主義 【トッド・ローズ著 ハーバードの個性学入門 平均思考は捨てなさい】

フレデリック・テイラー、といえば経営に関わる人なら知っているかもしれない。 「科学的管理法」と「マネジメント」といえば、この人!のようだ。 この科学的管理法に、現代社会に存在する大企業に限らず、多くの企業が基づいている。 マネジメントと仕事をする人を棲み分けて、アウトプットを計測し、効率的にアウトプットの質を均一化させるために標準化を行うべきだ、という考え方だと、トッド・ローズは述べている。 この科学的管理法は企業のマネジメントに限らず、様々な分野に応用されたことがあ

社会に埋め込まれた平均思考 【トッド・ローズ著 ハーバードの個性学入門 平均思考は捨てなさい】

小学校5年生の算数の単元では「平均」が出てくる。 例えば、東京ベーシックドリル5年生算数の問題を引用すると下記のようになる。 (問題は下記リンクより引用) ちなみに、それぞれの答えは、①が「22ページ」②が「30.8ページ」だ。 平均値、は何を現しているのだろう?上のデータをグラフにしてみるとこんな具合だ。 実際にそれぞれの平均値を出してみると、平均値に近いサンプルは、7つのサンプルのうち、1つずつしかない。 「平均値は集団全体の傾向を示している」と果たして言える

No Child Left Behind Act(落ちこぼれ防止法)のケース 【ジェリー・Z・ミューラー著 『測りすぎ ーなぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』】

No Child Left Behind Act(落ちこぼれ防止法、以下NCLB)は、2001年、ジョージ・ブッシュ政権下で施行された教育に関係する法律だった。 日本語で検索してもあまり出てこないこのNCLB。教育界隈では「最悪な法律だった」と評価されることが多いものの「なぜ良くない結果を導いたのか」ということについてはあまり説明がなされていない。 今回は、この「測りすぎ」の中で紹介されていたNCLBと測定執着の関係を見れば、 なぜNCLBが意図とは真逆に機能してしまっ

私たちはどのくらい知っているんだろう? 【G・ベイトソン著 精神の生態学ー知識の量を測ること】

娘「パパって、どのくらい知っているの?(HOW MUCH DO YOU KNOW?)」 娘との会話の記録をそのまま著書にのせる人類学者グレゴリー・ベイトソン。その対話の中に「知識」というものの本質があらわれてきます。 「一つの知識」が意味をなすには ベイトソンは 父「脳の重さが2ポンドだとすると、だいたい四分の一くらいで、半ポンドくらいかな」 と応える。つづけて、 父「そういえば友達のお父さんがね、お父さんの方が子どもよりたくさんのことを知っていると言っていたんだ。

文書の細部にも宿るものは 【木下是雄著 『理科系の作文技術』】

昨日書いたNoteは文書を書くとき、その「組み立て」に必要な「幹から枝葉へ」という原則をご紹介しました。 話の展開や順番に気を配ることで「伝わりやすい」文書を作ることができます。 しかし、「全体的な流れ」だけでなく「細部にやどる品格」も大切だと、木下是雄先生、そして小山透先生がおっしゃっていました。 今回は「細部に宿る文書の品格」について書いていきたいと思います。 細部に潜む違和感をみつける「音読」私たちは本を読んでいるときしばしば、「誤字脱字」を目にします。私が書い

文書のお作法。【木下是雄著 『理科系の作文技術』】

Noteを書いていると、それぞれの文章へのフィードバックをもらいにくい点が若干気になります。なので、いつもはFacebookでのlikeが多ければ響いた文章。そうでなければ響かなかったのかな、ということで振り返っています。 さて、今回のテーマは文書のお作法。いかにして「文書で人に自分の考えを伝えるか」という問題です。この問題を解決するために、木下是雄先生は、伝わる文書を書くためにその「組み立て」を「読み手の視点にたったもの」としていく必要がある、と述べています。 どうすれ