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活動中心のデザイン思考 【 D.A.ノーマン著 誰のためのデザイン?】

「デザイン思考」の文脈では、序盤の「共感」のフェーズで

徹底的にユーザーを知る

ことを重視しています。

そして、今回は人間中心の設計をするのか、活動中心の設計をするのか、というところで、「活動にフォーカスする必要性」について書こうと思います。

デザイン思考のダブルダイヤモンドモデル

「デザイン思考」のモデルで紹介されているものは、「ダブルダイヤモンド」モデルです。

(誰のためのデザイン?p.308の図を若干修正)

Googleで用いられているデザイン思考のプロセスにもダブルダイヤモンドモデルが紹介されています。

英国デザイン協議会においてもダブルダイヤモンドモデルです。

「発散」と「収束」を二回繰り返すことで、デザインをするというのが、このダブルダイヤモンドモデルです。

真の問題を発見する第一ダイヤモンド

最初のダイヤモンドでは、Empathize, Define, Ideationの3つのプロセスがよくあるデザイン思考の5ステップに該当します。

ノーマンは、彼の著書でこのように書いています。

コンサルティングをするときの私のルールの一つは単純だ。解決するように求められている問題を決して解決しないことだ。
(中略)
デザインにおいても成功の秘訣は、何が本当の問題かを理解することである。

問題と思われていることは大抵の場合、実際の問題でも、基本的な問題でも、根源的な問題でもない。人々は、よく「症状」を「問題」だと取り違えてしまいます。

まずは、徹底的に観察し、何が問題であるか、「定義」する必要があるのです。

デザインリサーチとマーケットリサーチ

過去に「ハーバードの個性学入門」の紹介記事でも紹介したように、マーケットリサーチは「平均値」に基づいて人のニーズを導こうとしています。

しかし、「平均的にあてはまる」ものとして「だれにでもあてはまる」ことを期待されますが、

往々にして、「だれにも当てはまらない」デザインになってしまうことがわかっています。

そこで、ノーマンは「応用エスノグラフィ」という手法を提案しています。

デザインリサーチャーは潜在的な顧客の元へ行き、活動を観察し、興味、動機、真のニーズを理解しようとする。
(中略)
環境や関係と切り離された経験ではなく、彼らが出会う本当の状況を、理解することが重要だからである。この技法は人類学の分野から持ち込まれた手法で、応用エスノグラフィと呼ばれている。

徹底的に現場に入り、「行われる活動」にフォーカスすることで、真の問題を発見することができるのです。

応用エスノグラフィで発見した活動を基に、「収束」である「問題の定義」を行います。真の問題を定義することができれば、次は解決策のダイヤモンドに移っていきます。

解決策を発見する第二ダイヤモンド

そして、問題が定義されると、次はIdeationとPrototyping、そしてTestのフェーズに移ります。

第二ダイヤモンドでは、どんな突飛でも、素朴なものでも、たくさんのアイディアを可能な限りだすことで拡散させ、試作品をつくることで収束してテストを重ねることが求められています。

Ideationの技法、ブレインストーミング

まず、第二ダイヤモンドの最初の「発散」のIdeartionのプロセスでは、特にノーマンは「ブレインストーミング」を提案しています。

ブレインストーミングのコツは3つ。

・数多くのアイディアを出すこと

・制約を気にせず、創造的であれ

・あらゆることを質問する

この3つを重視しているのがノーマンのIdeationのプロセスです。

できるだけたくさんのアイディアをポスト・イットなどを使って出していけば共有も簡単にできることでしょう、。

可能な材料で創り出す試作品

ソフトウェア開発では、試作品の制作のために、近年では時間があまりからないような工夫がされてきていますが、試作品をつくるために多大な時間がかかってしまっては勿体ありません。

ノーマンはプロトタイプ技法に「ウィザード法」を提案しています。

どういうことかというと、システムで自動化されているとおもっているものを、実際には裏で人間がやるというような方法です。

つまり、ハリボテを作って実験をしてユーザーがどのような行動をするかを試すのです。

活動中心デザインと人間中心デザイン

これらのデザイン思考のプロセスのなかで、特にダブルダイヤモンドモデルを採用しているGoogleや、ノーマンの著書の中で紹介される重要なポイントに、「個人をいかに取り除くか」という工夫がされていることに気付きました。

それは、Googleのデザイン思考の手法の中にある「10倍思考」です。

Googleの資料をご覧いただくと、Ideationのところに、「10倍スケールで考える」とあります。

これは、一度問題を定義したあとにアイディアを広げる上で

1人を対象にして考え出した問題を10倍の人たちに届けるためにはどうすればよいか、考えを広げるためのキーフレーズです。

徹底的に一人の人を観察してきた人たちにとっては、

「その一人にとって最適なもの」を創り出すことはできるかもしれません。

しかしそれでは、過剰適応になってしまい、多くの人に使ってもらえるサービスを作り出すことはできません。

そこで、Googleでは、「10倍スケールで考える」というキーフレーズを使っているのでしょう。

そのキーフレーズの根底にある思想は、ドナルド・ノーマンが提案した

「活動中心デザイン」

にあると思います。

一人の人にフォーカスしすぎると「その人のためだけのもの」になってしまいますが、

一人の人の活動にフォーカスすれば、「他の人にも当てはまるもの」を創り出すことができるとノーマンは述べています。なぜならば、人の活動は大体似通っているためだということです。

そう、フォーカスした人の活動へと視点をずらすことで多くの人の活動・行動を抽出することが、人々のためのテクノロジーを開発する「デザイン」につながるのです。

ただ続けることを目的に、毎日更新しております。日々の実践、研究をわかりやすくお伝えできるよう努力します。