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問題とはなにか? ー企画とモノと発見とー

「問題」と言われると「社会問題」「地球温暖化問題」などなど、

「なにか良くないこと」だと思う場合が多い。


ただ、「良し悪し」の問題というよりも、

「解くのが難しい問題」や「難問」という風に、デザインの分野では捉えられているのではないだろうか。

イタリアのデザイナーであるブルーノ・ムナーリは、彼の著書『モノからモノが生まれる(原題:Da cosa nasce cosa)』で、

「問題とはなにか?」ということについて考察を巡らせている。

今回はこの「問題」について考えてみよう。

友人、アントニオ・ロベリーニのことば

ムナーリの友人、ロベリーニのことばから、ムナーリの考察は始まる。

解決できない問題は、問題じゃない。
解決できる問題なら、問題じゃない。

まず一行目から考えれば、解決できない問題はそもそも問題ではないはずだ。

まず「問題」と思ったものが、そもそも「解決可能かどうか」を吟味する必要がある。

では、解決可能かどうかはどのように判断したら良いのだろうか?

それは症状?原因?

認知科学者ドナルド・ノーマンの著書、「誰のためのデザイン?」で、

彼は

それは、解決を求められる問題は常に、実際の問題でも基本的問題でも根源的問題でもないからだ。それは通常、症状なのだ。

と述べている。

問題は、そもそもそれが本当の問題かどうかを吟味せねばならない。

ムナーリはノーマンと同じように考え、

第一に重要なことは、問題そのものを定義することである。

と言い切り、デザイナーであるD.アーチャーの言葉を引用している。

多くのデザイナーが、問題は依頼主によって充分に定義されていると思い込んでいる。しかし、大部分は不十分なままである。


問題の定義はどのようにすればよいのか?

ワインバーグ、ゴースの共著による『ライト、ついてますか』は、この問題の定義に特にフォーカスを置いた物語になっている。

「きみの問題は何か」という冒頭の章では、このように書いている。

問題とは、望まれた事柄と、認識された事柄の間の相違である。

自分の理想にたどり着くために、そのプロセスとしてどんな差や落差、崖があるのか、「差分」こそ問題だと捉えるということです。

問題とは実際に固定化されたものであるわけではなく、柔軟に対処できるシステムなのです。

問題定義に役立つ「原因3つ」

問題を、それが解決することができる問題であるかを判定するためには、

原因を3つ考える

ことを、ワインバーグとゴースはオススメしている。

彼らは次のように続ける。

どんな問題定義でも、見落とされる恐れのある要素は何百とある。
そのうちたった3つを考え出せないようだったら、それは読者が考える能力、または意志に欠けているということを示しているのだ。

よくよくかんがえてみると、「問題」なのか「症状」なのかだんだんわからなくなってくる。

「問題の定義は解決したあとでもそれでよかったかわからない」

と、ブルーノ・ムナーリは述べているように、

いくら考えてもキリがない、マトリョーシカや「らっきょう」のような入れ子の構造になっている。

あけてもあけても、むいてもむいても、

その芯にたどり着くことはなかなか難しい。

しかし、解決しようとし続けることこそが、デザインの本質と言えるのではないだろうか。

ただ続けることを目的に、毎日更新しております。日々の実践、研究をわかりやすくお伝えできるよう努力します。