【映画】「屋根裏の殺人鬼」

コレは俺の好みで面白かった。
「屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ(Der Goldene Handschuh)」(2019・独仏合作、ファティ・アキン監督)。

死体の腐臭はもとより、汗、脂、精子、汚物、アルコール、タバコ、汚い歓楽街のバー…路地裏で蠢く人間の澱みきった臭いが沸き立って来るような刺激的な映画であった。

70年代の独・ハンブルクが舞台。
主人公のフリッツ・ホンカは、奇形のようなデカく歪んだ鼻に、銀縁メガネの奥に鋭く光る斜視、ボロボロに抜けた歯、そして、せむしのように曲がった背中という、誰もが避けるほどの醜い容姿の持ち主。
肉体労働を終えると、場末のバー、“ゴールデン・グローブ”に通って、酒を浴びるように飲んで、そこにいる女達に声をかけるという日々を送ってる。
フツーの女性に相手にされないためか、声をかけるのは、年増の百貫デブの元娼婦や汚れた老婆ばかり。
運良く自分が住んでるアパートの屋根裏部屋に誘い込むと、飲んだ勢いで「やらせろ!」と襲いかかるのだ。
そして、やらせなかったり、自分の思い通りにいかないと、つい苛烈な暴力を振るってしまう。
結果、殺して、バラバラにして、部屋の物置に隠すのだ。

コレも実際に起こった連続殺人事件を題材にしてて、映画の最後に、モノホンのフリッツ・ホンカと死体を隠した部屋がでてくる。

しかし…薄汚れたベッドで、汚れて伸びた下着を付けた、過剰な脂肪であちこち垂れまくった老婆と、その上に股がって、フーッ、フーッと荒い息をしながら、必死になって腰を上下させるホンカを観てると、ホントに臭って来るヘドロのようだ。しかもボカシがなくて、途中で中折れして、必死にシゴく様なんておぞましいし。ヨーロッパ辺りの映画って、こういう汚い役をそのままこなす素晴らしい俳優さんがいるんだよね。

ただ、ホンカには夢があった。町中で偶然出会った金髪の若い子とヤルことだ。そんなにキレイって訳じゃないけど、彼女が咥えたタバコに火を付けてあげたことから、妄想の中で、彼女のムチムチの白い肉体だけが彼の心を支配していく。結局、すれ違いで終わったけど。

この俺好みの映画を観てて思ったのは、どうしても犯罪に手を染めないと自分の欲を発散できない連中が一定数必ずいるということだ。この社会を支える最下層の肉体労働者たち。自己主張をするには醜く過ぎるし、頭も足りない。故に人間だったら誰でも持ってる欲を倫理の範囲内で上手く発散させる術を知らない。せいぜい酒に溺れるくらいだ。

ホンカも一時期、酒を絶って、警備員の仕事でやり直そうとするが、好きになった清掃員の女の誕生日で、つい飲んでしまって、女を暴行しようとして、元に戻ってしまう。

狭い屋根裏に隠した遺体が放つ異臭と共に住むホンカ。夜な夜なバーに出かけて、同じく憂さ晴らしをしてる仲間と時間を共にして、老いた女たちを物色する。溜まったヘドロのような場末の場所。そこでの現実過ぎる現実を表現した映画だ。

あ、音楽が、ノイバウテンのF.M.アインハイトでビックリ。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。