「墜落の夏」

前から読みたかった文庫。ヤフオクで見つけ即ゲット、即読了。

あの事故は、簡単にいうと、米ボーイング社の尻もち事故の手抜き修理により飛行中に圧力隔壁を破損し尾翼を失ったジャンボ機がダッチロールの末に御巣鷹の尾根に墜落したもの。救助も遅れて520人が死亡、4名だけが生き残った。

生存者の証言を交えた32分間の迷走飛行中の機内の様子は想像すると言葉が出ないね…。意外とスーツのビジネスマンがパニックみたいになり、ディズニーランド等に遊びに行った女の子らが冷静に対処してたという。

遺体も完全体は少なく、バラバラの一部だけ、ならまだしも、飛び出た内臓だけ、骨だけ、歯や髪の毛だけ、と凄まじ過ぎる。当時の一部写真雑誌で見たけど。本人だけでなく遺体に他の乗客の骨や歯がめり込んでたりしてる。それだけ墜落の衝撃がスゴイということだ。ドクターや看護師による検視や身元確認の苦労がわかるよ。

遺族は悲しみにくれる間にも日航と補償の交渉をしなきゃならない。なんか感傷の中にあっても現実は否応なしに迫ってくるというか、被害者の命の値段を決めなきゃならないってのは辛かっただろうなぁ。航空機ってのは最悪の事態(例えばジャンボ機同士が衝突し街に墜落した場合など)を考慮して複数の保険会社にかけてるんだね。数千億単位だって。

結局のところ、墜落の原因はわかっても米巨大企業への責任追及まで行かない。日航も賠償だけで刑事責任までは行かない。

もしいち早く米軍が墜落現場に到着した時、救助作業をしてたらあと10人くらいは助かったんじゃないかと思う。生存者の証言でもあちこちから声が上がったとあるし(運輸省の事故調査委員会は認めてない!)。それが当時の政府と省庁、自治体、各県警のプライド、縄張り争いの縦割り行政で救助に動かなかった。つまりイヤになるほど日本らしい完全なる人災なのだ。

あの事故の日、湯島のバイト先のテレビで臨時ニュースを見た。親しかった同じバイトの女の子が出勤して来ず、貧血で虎ノ門病院に緊急入院したと聞いた。まあ、いろいろあって俺にとっては思い出の日。だからというわけじゃないけど、事故関連の番組や本、動画など、けっこうチェックしてきたね。

こうした本や動画を見ると、御巣鷹山に登りたくなるよ。リハビリでも。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。