【邦画】「夏の庭」

「セーラー服と機関銃」(1981年)を撮った相米慎二監督(故人)の、1994年公開の「夏の庭 The Friends」。図書館で見つけて、なんとなく借りて観た。

原作は児童文学の名作らしいけど、3人の小学生の男の子の視点を通して、老人の死を身近に感じるという内容のなかなか感動できた映画であった。

戦争で悲惨な体験をした孤独な老人と小学6年生3人の交流を基に、様々な想いを残したまま突然死んだ老人と、荒れ果てて朽ちていく家と、さらに、新たに花を咲かせるコスモスと、日常に戻っていく小学生と…日本映画の特徴ともいえる、物事の移り変わりの機微と終わりのない“無常感”を表したといえると思う。

小学生3人はオーディションで選んだ素人で、老人はベテラン俳優・三國連太郎。三國の落ち着いた円熟の演技と、小学生の元気頼りの危なっかしい演技が、上手く功を奏して、アクセントが強調されていると思う。

神戸に住むサッカー部員の3人は、1人が身内の葬式に出たのを機に、「人が死んだらどうなるのか」に興味を抱き、近所に住む、もうすぐ死にそうな孤独な老人を観察することにした。3人は家に忍び込み、老人の日常を観察するが、徐々に老人と親しくなっていく…。

3人は、サッカーの試合をサボってでも老人の家に通い、庭の手入れや古い家の修繕等を手伝う。そして、台風の夜、老人から、戦争で生き残るために、ジャングルの村で若い妊婦を殺してしまったという体験を聞くことに。老人はその事が負い目となって、終戦後、復員しても妻と会うこともなく姿を消していたのだ。

このように、多分、悲惨な体験をしたけど、語らずして亡くなった人もいっぱいいるだろう。美化することなく、こういう体験を聞かせることこそ良い教育になると思うけど、もう体験者は亡くなっていることが多いし、今では困難なことも多いのだろうなぁ。

メディアでも人の死を見せないことが多いから、死についてわからない子供も多いんじゃないだろうか。実は老人介護は、朽ちて死にゆく人間をダイレクトに触れて見ることができる良い機会の場なのだ。

宗教的概念は別にして、人の死は、特に親しい者の死は、様々な想いが交差することで、人間が如何に感情に左右されるものであるかを認識できるのだ。最後のシーンを観てて、6月の母の死を思い出して、ちょっとウルッと来ちまったぜ。俺なりに後悔することなく最期を看取ったので、感情が揺さぶられることはほぼないけど。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。