【古典邦画】「愉しき哉人生」

成瀬巳喜男監督の、戦時中の1944(昭和19)年の作品「愉しき哉人生」。YouTubeにて。

同じようなタイトルがアメリカの古典映画にもあったなぁ。

国策映画ではないものの、当時の、銃後の守りのために、耐え忍ぶ生活の中にも幸せを見出そう、と啓蒙するような内容の喜劇だった。

いつもの、悲しむ女性の話ではなくて、明るく楽しい地方の町の長屋の話となってる。戦時中だから仕方なかったのかもしれない。でも戦時臭はしない。

地方の小さな町に荷馬車に乗った3人の家族が越して来る。
早速、よろず屋を開業する一家は、貧しいけど、家族仲良く、いろいろと工夫して、毎日を楽しく過ごしている。
一家の主人は、町の人々に、機会あるごとに、こんな工夫で幸せに過ごすことができる、という話をする。
町の人々は徐々に一家に感化されていく…。

「考え方一つで世の中は無限に楽しくなる」「どこにも幸福は見つけ出せる」「やればなんだってできる」の3つを実践し、グチばっかだった町の人々の心を少しずつ変えていく。

が、ある日突然、一家はこれまでのお礼のメッセージを記した貼り紙を残して消えてしまう。家族が現れる時はつむじ風が吹いて、前日に一台の黒い車が一家の店を訪れた翌朝、一家は東京へ帰ると姿を消す。

一家が何者なのかは最後までわからない。正体を明かさない。皇族に近い人間なのか、政府や軍と繋がってるのか、あるいは神風だったりして、アッという間にやって来て、アッという間に消えていくのだ。

コレも一種の大衆洗脳映画かもしれないが、不思議な余地を残しているところは成瀬監督だからだろうか。子役の中村メイコが、ちと気持ち悪いけど(笑)。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。