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日本が国家承認していない未承認国家と自称国家の一覧

 国際法上、国家承認と言うのは恣意的にして良いものではなく、客観的に国家が独立していれば国家承認をしないといけないものと考えられています。しかし、「客観的に国家としての要件を備えているのか」という部分に主観的な要素が入ってしまうのが国際社会の常です。
 日本政府が国家として承認していない「国」であっても、他の人からは「いやいや、国家だろ!」と言うケースは少なくありません。日本政府はあくまでも客観的に国家承認をしているつもりでしょうが、傍から見ると「政治的な忖度があるんじゃないの?」と思われることも、当然あります。
 ここで私は日本政府が国家承認していないけれども国家扱いされることのある「国」について、次の二つの類型に分類しました。

未承認国家――本来日本政府が国家承認するべきなのにしていない国。
自称国家 ――日本政府の見解通り、承認するべきではない「自称」だけの国家。

 その一覧についてここに掲載します。

他国が承認している未承認国家

 日本政府が承認している他の国家から承認されている未承認国家です。

パレスチナ国

 パレスチナは日本が国家承認している国の内、137国から国家承認されている国です。
 そして、何よりもパレスチナ国を国連のオブザーバー国家とすることに日本自身が賛成しています。
 それなのになんで国家承認しないのか、やっぱりアメリカ様への忖度なんでしょうかね?
 パレスチナがイスラエルの一部だというのであれば国家承認しないのも理解できますが、日本政府はパレスチナがイスラエルの領土であると認めている訳でもありません。
 じゃあ、パレスチナをさっさと国家承認しろよ、と思うのは私だけでしょうか?
 もう一つ考えられるのは、親パレスチナ派には新左翼やネオナチが存在しているという事情です。
 私も保守派ですから、極左勢力と一緒にされたくない事情は判ります。
 ただ、だからこそ、パレスチナ内の保守派・親日派を増やすことはアラブ外交においてもメリットがあるはずです。

サハラ・アラブ民主共和国

 日本が国家承認している国の内、40国以上が国家承認しているようですが、国家承認とその取り消しを繰り返している国も多いようですので、現在の正確な承認国家数は判りません。
 西サハラの一部を実効支配している国で、モロッコ王国が自国の領土と主張していますが、日本政府はその主張を認めていません
 それならば、実効支配している実体を承認するのが筋であると、私は考えます。
 日本政府がこの国を国家承認しないのは、アフリカ内部でも国家承認とその取り消しが繰り返されるなど、アフリカの複雑な外交関係に巻き込まれることを忌避したい意向があると考えられるのと、もう一つは西サハラがモロッコ王国の領土であると承認しているアメリカ様への忖度でしょう。
 しかし、日本はアメリカとは違い西サハラがモロッコの一部であるとは認めていないので、この国を承認することに本来問題はありません。

北キプロス・トルコ共和国

 キプロス共和国が領有権を主張している、キプロス島の北部にある国でキプロスに住むトルコ系民族によって建国されました。通称は北キプロスです。
 日本が国家承認している国ではトルコが北キプロスを国家承認しています。
 日本は欧米に媚びているのか、北キプロスをキプロス共和国の一部であると見做しています。
 しかし、北キプロスの独立は民族自決の原則にかなうものであり、日本は北キプロスを国家承認するべきであると考えます。
 北キプロスはキプロス共和国におけるクーデター発生を理由として独立したのであり、その独立宣言には正当性があります。且つ、何十年にも渡って実効支配を続けており、民族自決の原則を無視してまで国家承認を拒絶する理由がありません。

他国が承認している自称国家

 日本の承認している国が国家承認しているものの、国家とは言い難い自称国家です。

「平壌政府」(自称「朝鮮民主主義人民共和国」)

 日本が国家承認している国の内、164国もの国が「平壌政府」を国家承認していますが、日本政府は『日韓基本条約』に基づき大韓民国を朝鮮半島唯一の合法政府であると認定しているため、国家承認していません
 しかしながら、日本政府が朝鮮半島全域を韓国領と承認していないことは、私からすると問題です。
 日本はやはり朝鮮半島唯一の合法政府である韓国が朝鮮半島全域の領有権を有すると認めるべきであり、また在日朝鮮民族の方の民族教育についても「平壌政府」系の朝鮮総連が行っている現状がありますが、それについても韓国学校を増やすよう支援する等の取り組みが必要であると考えます。
 一般に国家の三要件は「政府」「領土」「国民」とされています。
 「平壌政府」はまずその主張する領土の全域が韓国の領土であるため、領土を有していません。パレスチナ国やサハラ・アラブ共和国は実効支配している領土が他国の領土と認められていないため、別問題です。
 これだけで国家承認の要件を欠いていますが、加えて「政府」についてはかつて朝鮮半島北部を占領していたソ連が国連総会で決まった朝鮮半島の普通選挙実施を朝鮮半島北部において拒み独自の政府を樹立した経緯があり、その正統性を欠いています。しかも、その当初から正統性を欠いていた政府は現在に至るまで日本人や韓国人の拉致を始めとする犯罪行為に手を染めており、結成時の瑕疵を治癒できるだけの正当性を持っていない状況にあると言えます。

「台北政府」(自称「中華民国」)

 日本が国家承認している国の内、13国が承認している自称国家であり、中華民国を継承していると主張しています。
 昭和23年(西暦1948年、皇暦2608年)の中華人民共和国成立の時点で中華民国は既に亡んだ国であり、その国家承認は中華人民共和国を否定することになるので、出来ません。
 加えて国家の三要素の内の二つである「領土」と「国民」にも問題があります。
 「台北政府」が現在実効支配している領土の内、国際法上中国の領土と言えるのは金馬地区・烏坵郷と東沙諸島のみであり、後は国際法上中国の一部とは言い難く、況してや中華人民共和国成立後に中華民国がその領有権を主張する正当性はありません。
 「台北政府」が実効支配している台湾・澎湖諸島と南沙諸島(新南群島)の一部については、『サンフランシスコ平和条約』第25条で事実上帰属先が決まっています。

   第二十五条

 この条約の適用上、連合国とは、日本国と戦争していた国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。但し、各場合に当該国がこの条約に署名し且つこれを批准したことを条件とする。第二十一条の規定を留保して、この条約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない。また、日本国のいかなる権利、権原又は利益も、この条約のいかなる規定によつても前記のとおり定義された連合国の一国でない国のために減損され、又は害されるものとみなしてはならない

 なお、この「第二十一条の規定を留保して」の意味は、次の条項が例外であることを指します。

   第二十一条

 この条約の第二十五条の規定にかかわらず、中国は、第十条及び第十四条(a)2の利益を受ける権利を有し、朝鮮は、この条約の第二条、第四条、第九条及び第十二条の利益を受ける権利を有する。

 領土問題に関係があるのは第2条ですが、朝鮮と異なり中国は例外規定になっていないので、中国には第2条に基づく利益を受ける権利はありません。

   第二条

 (a) 日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 (b) 日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 (c) 日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 (d) 日本国は、国際連盟の委任統治制度に関連するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、且つ、以前に日本国の委任統治の下にあつた太平洋の諸島に信託統治制度を及ぼす千九百四十七年四月二日の国際連合安全保障理事会の行動を受諾する。

 (e) 日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。

 (f) 日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 従って、新南群島や台湾・澎湖諸島と言うのは、『サンフランシスコ平和条約』に署名・調印した国に割譲されない限り日本の利益は減損されない領域と言うことになります。
 そのため、中国にこれらの領域を支配する権限はなく、況してや中国の正統政府ではない「台北政府」による実効支配など単なる不法占拠に過ぎません。
 こういうと「台湾独立ならばどうだ!」と言う人も出てくるでしょうが、「台北政府」自身が台湾独立を宣言していない以上、日本が台湾独立を承認することは出来ないのは当たり前の話です。
 かと言って、中国領の内小さな島いくつかしか支配していない「台北政府」を中国全土の政府として承認できるはずもありません。
 また、こうした経緯から台湾の住民が「中国人」であるかにも大きな疑問符がつくのであり、実際に中国人扱いを拒否する台湾住民も存在します。

「ツヒンヷリ政府」(自称「南オセチア共和国・アラニヤ国」)

 日本が国家承認している国の内、5国から承認されています。
 ジョージアの一部であるという立場から南オセチアは国家の三要素の内の「領土」を満たしているとは言えません。
 しかしながら、その独立は民族自決の原則に基づくと全く正当性が無いともいえないものであり、今後の動向次第では国家承認するべき状況になるかもしれません。
 一方でジョージアがソヴィエト連邦のグルジア共和国の全域を以て独立を宣言したことには正統性があるものであり、北キプロスのようにキプロス共和国において不法なクーデターが起きたという事情もありません。
 「ツヒンヷリ政府」を国家承認するべきかどうかは、所謂「時効の法理」がその実効支配に適用されるかどうかにかかっていると言えるでしょう。
 ここで危惧されるのは、南オセチアにおいてロシアへの編入を求める動きがあることです。自ら独立を放棄しているようでは、その独立の正当性を認定するのは困難となります。

アブバジア自治共和国独立派(自称「アブバジア共和国」)

 「ツヒンヷリ政府」同様、日本が国家承認している国の内、5国から国家承認されています。ジョージアの一部であることも含めて「ツヒンヷリ政府」とほとんど同じ状況です。
 ただ、アブバジア自体はジョージアも自治共和国と認めている存在であり、その独立の正当性の度合いは「ツヒンヷリ政府」よりも高いと言えます。

チェチェン共和国独立派(自称「 チェチェン・イチケリア共和国」)

 ロシア連邦の一部であるチェチェン共和国の独立を訴えている勢力で、日本が国家承認している国の内、ウクライナのみが承認しています。
 確かにチェチェン共和国の独立自体は過去に正統性はありました。しかし、過去にチェチェン共和国の大統領がコーカサス首長国への衣替えを発表しており、以来チェチェン共和国独立派は自分たちの大統領を選出できていません。
 そしてコーカサス共和国はISILに併合されて事実上消滅しました。
 仮にウクライナがそれでもチェチェン共和国を国家承認するべきであるというのであれば、より独立に正統性のあるアブバジア共和国も国家承認しないと筋が通りません。
 無論、日本にとってもアブバジア共和国同様、将来的にチェチェン共和国を国家承認するべき場面が出てくる可能性はあります。

「他国が承認している自称国家」から承認されている未承認国家

 他国からは残念ながら承認されていないものの、国家承認するべき未承認国家は存在します。
 その中で、「他国が承認している自称国家」からのみ承認されている国々を紹介します。

ソマリランド共和国

 ソマリランド共和国は「台北政府」が国家承認している国です。
 ソマリア共和国は長らく無政府状態であり、しかも現在ソマリア共和国が実効支配している地域とソマリランド共和国とは歴史的にも異なる経緯があり、ソマリランド共和国が独自の政府を持ち領土を実効支配し国民が存在することは、正当な理由があり独立を承認するべきであると考えます。

「他国が承認している自称国家」から承認されている自称国家

 無論、自称国家からいくら承認されていても国家の正当性には繋がりません。ここで紹介するのはそんな自称国家からしか承認されていない自称国家たちです。

「ドラム政府」(自称「アルツァフ共和国」)

 アゼルバイジャンの一部を実効支配するアルメニアの傀儡政権ですが、アルメニアからも国家承認されていません。
 「ツヒンヷリ政府」とアブバジア自治共和国独立派から国家承認されています。
 全く正統性が無いという訳ではなく、まさにアブバジアやチェチェンと同程度の正統性はあるということが出来ます。

「ティラスポリ政府」(自称「沿ドニエストル・モルドバ共和国」)

 国家承認は「ドラム政府」と同じ状況で、こちらはロシアの傀儡政権であると言えますが、ロシアからも国家承認されていません。

国家承認をされていない未承認国家

 一応政府の実態はあるものの亡命政府であることもあり国家承認されていない未承認国家です。

チベット法王国

 大清帝国が辛亥革命で崩壊したことを理由に独立したので、独立の正当性は存在します。
 「チベット中央政府」(ガデンポタン)という亡命政府が存在します。

東トルキスタン共和国

 チベットと同じです。
 こちらは東トルキスタン・イスラム共和国と東トルキスタン国民会議という二つの亡命政府が存在し、また世界ウイグル会議も独立回復運動と密接な関係にあります。

満洲国

 こちらも上記二国と同じです。
 こちらは「満洲国政府」という亡命政府が存在します。

未承認国家から承認されている自称国家

 未承認国家のみから承認されている自称国家です。いずれも事実上住民がいないため、ミクロネーションと見做されます。

リベルランド自由共和国


 ソマリランド共和国から承認されたミクロネーションです。

オウラニア王国

 満洲国政府から承認されたミクロネーションです。

ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。 拙い記事ではありますが、宜しければサポートをよろしくお願いします。 いただいたサポートは「日本SRGM連盟」「日本アニマルライツ連盟」の運営や「生命尊重の社会実現」のための活動費とさせていただきます。