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タリバンの政権奪還は「アフガン版正平一統」だ

 タリバンの政権奪還を朝廷が幕府から政権を奪還した明治維新に例える人がいたが、私は一か月前から(画像参照)Twitter等で「これは正平一統だ」と主張してきた。

 正平一統とは、南北朝時代に南朝が一時的に京都を奪還して北朝が滅んだ事件を指す。

 北朝は室町幕府の軍事力に依存していたが、その室町幕府が足利尊氏と足利直義の兄弟喧嘩で分裂してしまった。これを受けて足利尊氏は南朝と弟の両方を敵に回すのは無理なので、「平和的統一」を南朝に申し入れた。

 南朝はそれを受け入れたが、それは軍事力で勝る足利尊氏を欺くための方策であった。足利尊氏の留守中に南朝は北朝の天皇・上皇・皇太子を全員拉致した。

 足利尊氏抜きの北朝など、何の軍事力もない存在である。北朝が優位であったのは、室町幕府が北朝についていたからだ。室町幕府自身が分裂していると、軍事力で劣る南朝にも勝ち目はあったのである。

 ただ、明治維新も軍事力で劣る朝廷が幕府から政権を奪還した事件だが、明治維新と正平一統の違いは、南朝は明治政府とは違い「現実的な統治能力」が無かったということだ。

 南朝は権力闘争の仕方は知っていた。「騙してでもいいから、権力を握る!」と言うことだ。

 権力を取った後の理想もあっただろう。問題は「理想を現実にするには?」と言うことを、考えていなかった。

 足利尊氏を味方に引き込めばいいのに、よりにもよって足利尊氏が足利直義に勝利したに、足利尊氏を罷免するという、政治的センス皆無なことをやった。足利尊氏が弱っている時ではなく、彼が勝利を得たときに敵に回すとは、アホでしかない。

 結果、南朝はふたたび政権を失うのだが、タリバンも現状は他の勢力を事実上排除しているようなので、同じ結果を招くだろう。

 しかしながら、足利尊氏が「何が何でも政権を守る!」とは言わずに南朝に降伏した結果、北朝は大損害を受けた。

 アフガン政府もタリバンに徹底抗戦はしなかった。だから今回の事件からアフガンが立ち直るのは、まだまだ先になりそうだ。

 タリバンは南朝以上に残酷な集団である。正平一統ですら大混乱に陥ったのに「タリバン一統」は大混乱どころではない、世界の大迷惑となるであろう。アフガン政府の責任も重いと言わざるを得ない。

 平和も大切だが、混乱を生む平和は戦争よりも恐ろしいのだ。

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