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「自衛戦争」は本当に正義なのか?

 今回のロシアとウクライナの戦争を私は露宇戦争と表現していますが、実際にはロシアもウクライナも宣戦布告をしていないようです。
 プーチン大統領もゼレンスキー大統領もどちらも自衛権の発動を主張してはいますが、国際法上の戦争には該当しないという解釈なのでしょう。ただ、私の目にはこれが戦争であるようにしか見えませんが。
 類似の例としては、イラク戦争があります。
 イラク戦争においてアメリカはイラクに対して宣戦布告をしていません。大東亜戦争で日本の宣戦布告が遅れたことを批判した割には、露骨なダブルスタンダートです。
 因みに、アメリカは大東亜戦争の際には日本に対して宣戦布告をしています。自衛戦争であっても宣戦布告をするべきであるというのが、一般的な解釈なのです。
 もっともイラク戦争について言うと、アメリカは「最後通牒は出していたから合法だ!」と言う言い訳をするかもしれません。
 しかし、イラク戦争の最後通牒の内容は「48時間以内のフセイン大統領の国外退去」です。そんなものは内政干渉であって、自衛権の行使を逸脱することは明白であり、戦争を正当化する理由にはなりません。
 リビア内戦では国連安全保障理事会の決議を根拠にオバマ大統領がリビアで軍事行動を行いましたが、これは国連決議があるとはいえ、宣戦布告も最後通牒も一切無しにリビアを攻撃したものですから、開戦条約に違反している可能性があります。湾岸戦争の場合は国連が多国籍軍を編成しましたが、リビア内戦はあくまでも国連が各国の判断による軍事行動を許可しただけですので、宣戦布告や最後通牒は必要なはずです。
 因みに、中国は中越戦争でベトナムに宣戦布告をしています(茂木敏夫2017「中国的秩序の理念」)し、イラン・イラク戦争等では宣戦布告が行われているようですから、戦後の国際法で宣戦布告の概念が無くなった訳ではありません。
 いずれにせよ、戦後の諸外国は自衛権の行使について宣戦布告が必要であるものと不要なものがあるとの解釈に立っているようですが、自衛権の行使であれば宣戦布告は不要であるというような単純な話ではないのです。
 例えば外国に占領された領土を奪還するのは自衛権の行使として正当です。
 しかし、いくら自衛権の行使だといっても、「竹島を占領されたから報復にソウルを攻撃してやる!」とか「尖閣諸島を守るために北京を攻撃する!」とか言い出すと、それは戦争を開始したものと見做されます。
 あくまでも一般論として言いますが、仮に日本政府が宣戦布告も最後通牒も無しにいきなりロシア本土を攻撃して「これは自衛権の行使であり、北方領土占領に対する反撃能力の発動です!だから戦争の放棄には違反しません!」等と言い出した場合にそれが通用するのか、と言う話です。
 この点インドとパキスタンは、領土紛争はしていても全面戦争まではしませんから、いくら領土問題を抱えていても「自衛戦争」まではしない、という意味での自制心があるようです。
 国際法上は自衛権の行使に制限がありませんから、自衛戦争であっても合法ではあるのですが(無論、『日本国憲法』第9条には違反するとの解釈が妥当です)、それが正義かどうかは別問題です。
 人間同士では正当防衛と過剰防衛の区別がありますが、国際法上は正当防衛と過剰防衛の区別はありません。しかし大東亜戦争は日本と中国による「過剰防衛」の応酬の結果起きたものであることを考えると、自衛権の暴走への歯止めが必要であると考えます。


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