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銀行員だった夫のこと

私たちは結婚して35年になります。
金銭感覚の他何もかもが合わない二人ですが仲良く暮らしております。
お互いに結婚して良かったと思っています。
夫は似合わないけど、結婚当時から私に「愛しているよ」と日常生活の中でよく言う人です。

【金銭感覚の違い】
車で出かける時は私は二人分のお茶をボトルに入れて用意しますが、夫は必ず
「コンビニに寄ってね」
と言い、アイスや脂肪の吸収を抑えると書かれた高めのお茶、スナック菓子、唐揚げなどを買い込みます。
(因みに夫と出かける時は夫はすぐに眠たくなり危険なので私が運転します。)

夫は40代の頃、6年ほど単身赴任をした時に、私に内緒で借金が500万円ほどありました。
「金のことは心配するな。」
と言われるまま、私はのほほんと暮らしておりました。
結局、借金は退職金で返済しました。退職金は借金の返済で全て無くなりました。
現在でも住宅ローンが残っており後10年(夫73歳まで)返済が残っています。

【趣味の違い】
私はテレビのガチャガチャした音が苦手で家の中ではシーンとしているか小さな音でジャズなどが流れているのを好みますが、夫は起きてから夜眠るまでテレビを付けっぱなしにします。
夫のいる休日はそんな音にたえられなくてヘッドホンをしてipodなど音楽を聞きながら過ごしています。
映画は夫は綺麗な女優さんが出演する邦画を好みますが私はほぼ洋画しか観ません。

【食べ物】
夫はとんこつラーメンやもつ鍋、焼き肉などにんにく辛い系こってりした物が好きで、私は食べれますが苦手です。

【旅行】
私は行く前に準備万端に用意して計画を立てて情報収集も完璧にして行きたい方ですが、
夫は朝雪が降っているのを見ながら、雪景色の〇〇寺、見たくなったな。と全く計画にない場所に突然行くと言い出し、行くと雪の降りしきる中、長い時間歩いたり、
または、バスに乗っていて、窓から見えた大学に、あっ、〇〇大学行ってみたいって突然降りたりします。

【それでも夫を好き勝手にさせている理由】
そんな現在63歳の夫ですが、、55歳まで壮絶なサラリーマン生活を送っていました。

銀行員でした。

まさに「24時間働けますか?ビジネスマーン!ビジネスマン!」の当時のCMのどおりのビジネスマンでした。

夏でも白の無地の長そでのYシャツにネクタイ、そして背広も着ていました。
夜11時まで仕事をするのはあたりまえ、朝まで帰ってこなくて心配で銀行に電話すると、警備員さんが
「あっ、○○さんは朝4時に出られました。」
という時もありました。

月曜日に出て毎日サウナに泊まり、金曜日に帰る週もありました。
夫はサウナで下着もYシャツも全部洗濯してくれるからって週2、3日は泊まっていました。

当時、過労死などのニュースもよく流れていましたが、そんな時私は私の夫の残業時間の方が過労死の方の残業時間よりも多いことを確認していました。

夫は精神的に強い人でうつ病の気配も一切なく元気にしていました。
家で私が見る夫はいつも抜け殻で死んだように眠っている姿だけでしたが、私は想像の中で夫がこんな平和な時代の中で見えない血を流し、見えない傷を負い、命がけで戦っていることを知っていました。
それは当然私たち家族のためであることも。

だから、全て許せるのです。
何もかも許せるのです。
人生のほとんどを壮絶な銀行の中で過ごし、大切な自分の時間を私たち家族のために捧げてくれたことを感謝せずにいられません。

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