昭和な服
祖母の家に行くと、必ず「おふる」を押し付けられる。
これは私が子供の頃からだから、もう何十年前からの話で、「おふる」の内容は洋服だったりお皿だったりする。叔母が若い頃に着ていたスカート、従姉妹のカーディガン、お正月用の重箱からザルまで。全てに共通しているのは、どれもデザインが「今」の感覚とはズレているということだ。どれもこれも、「ザ・昭和」なのである。
だから私は、祖母から「これ、持って帰ってよ」と言われるたび、一応は受け取るものの、結局は箪笥の肥になるか、数回着て捨ててしまうことがほとんどだった。
それでも社会人になってからは、昭和な洋服たちを活用できている時期もあった。そのまま着るだけだと野暮ったくても、ちゃんとお化粧をして、髪も整えてネイルもして、ヒールのある靴にあわせれば、そこそこレトロモダン風になるのである。そのことに気付いた時には、それまで数々の昭和な服を手放してきたことを後悔したものだ。
とはいえ、昭和な服を上手く着こなすには、頭も使うし時間もかかる。私はもともと面倒臭がりなので、お化粧に力を入れたり、ファッションのことを考えるもだんだん辛くなってしまった。だから今手元に残っている昭和な服たちはごくわずかで、あまり気合いを入れなくても着られるような無難なデザインのものばかりだ。
素材がしっかりしているものが多いから、出来れば大事にしたいけれど、最近の私にはそんな昭和な服たちを活用する気力がない。「ばっちりメイク」は肌に負担がかかるし、常に気持ちを張り詰めていなければいけない感じがする。いつの時代も、おしゃれと我慢はセットなのだろうか。
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