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“一目惚れ”の出会いを求めて

引っ越してから約半年。ずっと、「醤油皿」に相当するものを持っていなかった。

自炊をしていてもお刺身を食べることはまずないし、焼き餃子なんて深めのお皿にポン酢を入れてジャブジャブ浸して食べている。「醤油皿」がなくてもとりあえずはやって来られたのだ。しかし、食後のデザートにイチゴを2粒だけお皿に載せたい時は、「醤油皿くらいの大きさのお皿があるといいのにな」と思っていた。

私が欲しかったのはつまり、「醤油皿」というか、「醤油皿っぽい皿」だった。

どうせなら、ちゃんと気に入ったものを買いたい。これまで、ことあるごとに探してはいたのだが、なかなか見つからなかった。イチゴを載せるお皿がない”不便さ”を感じるたび、何度となく「すごく気に入ってもいないが嫌いでもない皿」を買ってしまいそうになった。スマートフォンがあれば寝転びながらでも買い物ができる時代だ。しかし、私は誘惑に耐えようと思った。

詰まるところ、私が欲しかったのは「醤油皿」というか、「醤油皿っぽい皿」というか、「すっごく気に入った醤油皿っぽい皿」なのであった。”一目惚れ”と呼べるくらいの気持ちになるものが欲しかった。今までの経験上、洋服であれ文房具であれ”一目惚れ”したものは、それが手元にあるだけで、また、視界に入るだけで、とても幸せなのだ。

そして先日、私は長野県のとある小さなお店で"一目惚れ"をした。金色の装飾が繊細で可愛らしい小皿だ。煌びやかな雰囲気は、旅館のお膳を連想させるけれど、真ん中の小鳥がモダンで可愛らしい。一目で好きになった。これが食器棚に並んだら、絶対に毎日ウキウキする。私はそう確信した。

「醤油皿」としてはちょっと値段はお高めだった。しかしこれは単なる「醤油皿」ではないのだ。このお皿は私にとって、「すっごく気に入った醤油皿っぽい皿」なのである。

母に見せると、「こんなちっちゃいとこにお醤油入れて足りるの?」なんて言われた。「高そう! 飾る用じゃないの? 使うのもったいない」みたいなことも言われた気がする。しかし、そんなことは私には関係ない。

好きになったら親の批判的な言葉なんて大して耳に入らない。そもそも母とは、好みのタイプも違うのだ。“一目惚れ”をして手に入れたからには、ちゃんと丁寧に、この先も一緒の時間を過ごしたいと思っている。

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