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植物を自分で増やして「複利」を学ぼう! #0096

そろそろ東北も種蒔きシーズンに入るのですが、種蒔きでいつも思うのが、「植物の種ってのは、完全に複利の考え方だよなーー」ということなんですね。

おそらく農家の方はこのことを実感することが多いと思うのですが、要するに1本の木や苗から取れる種の数がハンパないんです。1本の苗さえあれば、どんどん増やしていけるってことで、食料用の作物にはもってこい。

造園も本来はこの考え方で増やしてきたのですが、いまやどこかから木を持ってくるのが主流で、すっかりこの考えは廃れています。
今日は植物の複利的性質とは何?どう活かしているの?ということを考えたいと思います!


タネで増やすと、ものすごい複利に

冒頭にも書きましたが、植物の繁殖力というのは本来凄まじいものがあるのです。

下手すると1本の苗から、数千の種を取れることもあって、それが一気に芽を出すと考えると、狂気的ですらありますな。

で。この種ですが、「種をそのまま売る」という方法があります。
これは速攻で現金化できますが、何しろ単価が安い。数千取れるような種類だと、数百くらいの単位でパッケージして数百円にしかなりません。これでは手間に見合わない。

なので、売りたいときは大体蒔きます。
植物は種類によって違いはあるものの、案外芽だしが一番難しかったりします。芽を出させるだけで、「1苗数百円」の値がつきます。ここですでに価値が数百倍爆上がりします!

とりあえず蒔く!蒔けば芽がでる!

植物というのは不思議なもので、育てれば育てただけ、苗の高さに乗じて単価がどんどん上がっていきます。つまり、時間=価値というダイレクトな投資になるっていう寸法です。

ホームセンターなどで市販されている苗は、こんな感じで時間投資を受けた苗なんですな。苗=株、とも言い換えられることを考えると、まさに株の価値が上がっていく、ということだよなーと実感します。

「挿し技」は時間を短縮できる

さて、植物というものはさらに不思議なもので、増やし方は播種(種蒔きのことね)以外にもたくさんあるんです。

その一つがまず「挿し技(さしぎ)」。
原理は単純で、剪定などで切った勢いのありそうな枝を土にブッ挿す!すると、勝手に根を出して増やしていけるのです。(多少コツはありますが、、)

挿し技は種よりも時間を短縮して苗を育てることができます。種からの芽だしが不要ですからね。単純計算で最低1年は前倒しできるのです。

また、種では増えづらい樹種などによく使われますね。代表的なものとしては、ブルーベリーオリーブ。この辺りは苗の単価が高いので、自分でもやっています。

オリーブの剪定枝から根出し

あとはレア品種などもこのやり方で増やします。最近人気のあるオージープランツ系なども、この方法で増やしています。レア物の苗だけひとつ購入しては、ブッ挿して増やしています。
具体的にはグレビレアなどは自分でも育てていて、昨年挿し技したものもひとつ順調に育っています。春にはまた増やそうと思っているところなんですな。
あと、今年はジンなどに使われる、ジュニパーベリーもやってみようと思っていますよ!

ブルーベリー苗、育ってきてます!

これら上記の品種は、高さ1mくらいまでなると数万円(うまくすると数十万円)の値がつきます。
特に単価が高くて人気の樹種は、この方法で増やしていくことが多いわけです。
わざわざその度に購入したり運んだりするのはとにかく手間でお金がかかる。
ならば、すぐに手に入るタイミングで使えるように手元にあったほうが良いし、苗としても単価が取れるので、現金化しやすいメリットがあります。

「株分け」という分身の術

あと使う手段としては、株分けがありますな。これも割と一般的です。

最近自分でやったものでいうと吾亦紅(ワレモコウ)。秋になると赤いエアリーな穂をつけます。株が大きくなりやすいし、アクセントとして使いやすいので、自分で増やすことにしました。

去年、株分けしてきましたが、大いに育っております。

以前、施工時に使ったことがあったので、そのお客さんの手入れついでに株を分けて家に植え付けました。これがまた樹勢が強いので、すぐに根を張って根付きました。
今後、施工で使う際は、ここから使っていこうと思っているので、ぶっちゃけ原価不要になりますよね。非常にありがたい存在です。
これは、種という「1」に戻らず、「10」ならほぼ「10」の状態で増やしていけます。これも横展開的に価値を倍々にしていけるわけです。

宿根草は、本体すら残る

施工時によく使うのは宿根草ですね。これは「増やす」という意味とは違うのですが、「なくならない」というメリットのある種類たちです。

どういうことかというと、一度活着(根付くと)すると、冬に上は枯れても、春になるとまた生えてくる、という意味で「なくならない」のです。
もちろんタネもつくので、毎年種を取れば、一つの苗から毎年生産ができるのです。

よく使う宿根草のひとつ。エキナセアパリダフラダンサー

この辺もガーデンに使いやすいものが多いので、大いに増やしたいのですが、なかなか芽だしが難しくて、今の所あまりうまくいっていないのが悩みのタネ。
特に増やしたいエキナセアのフラダンサーやエリンジウムは毎年芽が出ないので、この辺りも芽だしがうまくいくと、今後増やして使っていけるのでいいんだけどなーと毎年実験しています。

一代限りの種は、逆にコストがかかる

こんな感じで見ていくと、F1種のように一代限りで終わってしまう種は、サステナブルでない上に、毎年種を買わなくてはならない、という意味であまりプロダクティブでなく、コストがかかりやすくなってしまいます。

正直、個人的には種の生産力があるもの、または刺し技で増えやすい樹種で、かつ単価が高かったりレアだったりする品種を育てて行った方が、コストをかけずかつ複利的に増える植物の恩恵を受けやすいと思うのです。

昔、長野で働いていた頃、松本の園芸屋さんは自分の圃場で、松やクヌギなどの高木も種から育てていました。さすがにそこまでいくとマニアックではありますが、実質原価ゼロで、2、30年後を見越して育てている様子は、長期ビジョンを形成する助けにもなるよなーと思いました。

まあそこまで行かなくても、仕事に困ったら種を育てて売る、残った種で増やす、を繰り返すと、少なくとも食うには困らない程度にはなっていけます。

また、「複利」という考え方を学ぶにはもってこいなので、自分自身、あるいは子供と一緒に育ててみると、とても面白いと思いますよ!

ウチも子供とよくやっております。

必要なのは、種と土と水と太陽だけ!ぜひやってみてください!!

ではでは!

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