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カンボジアの夏の夜と、冬になりかけの東京の夜をつなぐ再会

シェムリアップ空港に着いたとき、なんでここへ来たんだっけ、と思った。9月の少しじめっとした空気、夏の夜21:30、誰のことも知らない街。

でも、私はこの街のことを知っている。

昔、まだ長く旅をする前の私。タイとカンボジアを10日間、ひとりで旅をした。

シェムリアップ。それ以来5年ぶりくらいの訪問だ。タイまで仕事でやってきたから、ふらり、久しぶりに遺跡が見たい気分になって。

そうだ、私は遺跡を見にきたんだった。前は、アンコールワットの周りにばかりいたから、今回は少しだけ遠くへ。ベンメリアくらいまでは行きたいと。

空港に着いて、トゥクトゥクを拾って、宿まで15分ほど走る。宿について、フロントで尋ねる。ベンメリア遺跡まで行くには、どうしたらいいのか?と。

遠くで猫と、トカゲが鳴く。壁に触れたら、じんわり、と湿り気が伝わってくるような月の夜。

フロントの彼は答える。あのソファの向こうにいる、彼女と一緒に行けばいいんじゃないか?と。彼女もベンメリアに行きたくて、一緒に行く人を探してる。ひとりで車を借りるのは高いけれど、もうひとりいれば割安だから、とね、と彼は笑う。

そうして私たちは目が合って、次の日の朝からベンメリアに晴れて向かう。私は麦わら帽子をかぶって、あなたは日焼けのストールをかぶりながら。


その時に出会った彼女と、その後2年の時を経て、日本で今日、また逢う。旅先の出逢いは一期一会。そう思っていたのに、縁が続くことはあるみたい。

不思議に想う。カンボジアのあたたかな空気。いま私がいる日本の冬を前にした冷たさ。つながっているみたい。夜は今日も紡がれていって。

いつも遊びにきてくださって、ありがとうございます。サポート、とても励まされます。