見出し画像

全裸監督を見た。泣いた。唸った。

(※若干ネタバレあります)

全裸監督を見た。

見るまでは、村西とおるというキワモノAV監督の、イロモノドラマ、スケベドラマ、といったイメージだった。

全く、違った。

人間の性(さが)を描き切った、群像劇だった。
人間の持つ、素晴らしさも、どうしようもなさも、下劣さも、全部がつまった、奇跡のような作品だった。

見る前と後で、ずいぶんイメージが変わった。
自分のように、この作品のことを「イロモノ」と感じている人もいるのではないかと思って、作品の素晴らしさを、書き留めておきたいと思う。

けど、難しい。どこから描けばいいのか。とても難しい。
キャラが立ちすぎていて、ひとりひとりのキャラが持っている、人生ひとつひとつに、意味がありすぎて、書くのが難しい。

村西の人生だって、素晴らしいし、
川田の人生だって、素晴らしいし、
トシの人生だって、素晴らしいし、
三田村や、ラグビーや、黒木の人生だって、素晴らしい。

人生が素晴らしいって、なんなんだ。
この作品を見て思うのは、
人生を素晴らしいと思わせる、
仕事の素晴らしさだったりする。

あらゆることが入れ子になっている作品のように感じる。
村西とおるの仕事、作品があり、
それを演じる山田孝之の仕事があり、
同様に、ドラマに携わった、あらゆるキャスト、監督、スタッフの仕事がある。

山田孝之と、玉山鉄二と、満島真之介のこの動画、見てみてほしい。


こんなにも、出演者たちが、自分たちの作品を嬉しそうに語るかね。
作品、あるいは仕事には、あの時、あのメンバーがいたからこそ、生まれた、再現性のないものがある。
同じものをもう一度、と言われても、それはもう、絶対に生まれえないような、全てが噛み合ったからこそ、生まれる作品。

全裸監督は、そんな作品だ。

村西は、どこまでも、どこまでも、どこまでも、追いかける。
彼が追いかけたものは、なんだったのか。

やるんだ!やるんだ!!やるんだ!!!やるんだ!!!!

村西についてきた人たちも、あの人が何を考えているのか、わからなくなったし、もはや、本人もわからなくなってたんじゃないだろうか。

それでも、追いかける。

おって、追って、追って、追って、追って、追って。
追っている瞬間にしか感じられない「熱」に村西は取り憑かれていた。
その熱が周囲を焼こうが、自分を焼こうが、熱に取り憑かれた村西には、どうにも、とめられなかったのだと思う。

命乞いをして、全裸で演説して、新宿でホームレスになって、海岸で石売って。それでも、彼は「熱」に向かう。熱病なのだ。

村西率いるサファイヤ映像、ダイヤモンド映像のAVスタッフに、三田村とラグビーがいる。
ふたりは、最後まで、村西についていった。最後、村西が、金をどうにもかき集められなくて、ヤクザに借金して、返済に窮して殺されかけて、ある裏切りをする。
三田村は、そのことを知って、ついに、村西の元を離れる。
それまで、三田村とラグビーは、どこまでもピュアに、村西との旅に、連れ添った。

三田村、最高だった。
一日も休まず、献身的にAVを作り続けて、村西を支え続けて、きっと使う暇もなかったから金が溜まって、その金とともに、最後、ある人に想いを伝える。
けど、想いは成就せずに、アパートの玄関で、三田村は泣き崩れる。
ラグビーは三田村の相棒で、ただただマッチョで優しげで、男優としても活躍してきた。
泣き崩れる三田村にそっと、ラグビーは寄り添う。
三田村もラグビーも、いつも誰かに寄り添おうとしていた。

ただ、そこにいてくれる。
全幅の信頼を置いて、旅に連れ立ってくれる。
村西にとって、三田村とラグビーがいたことの意味は、とても大きかったように思う。

トシと川田。
このふたりも、すごすぎた。
満島真之介と玉山鉄二。
すごかった。
トシと村西の出会いから、すべては始まった。
川田と村西との出会いから、飛躍への第一歩が生まれた。

ふたりがいなければ、物語は、始まらなかっただろうし、
ふたりがいなければ、村西には栄光も破滅もなかったかもしれない。

トシも川田も、村西と行動を共にし、別れ、出会い直す。
そして、死ぬ。

トシがヤクザの世界に足を踏み入れ、殺されそうになって、小指を詰めながら、もう俺たちには関わらないでください、って叫ぶ。
その場には、川田もいて、川田は自分の金を使って、トシを救おうとしていた。

トシは小指を失って、血だらけの中、ヤクザの事務所を後にする。
川田がトシを支えながら、二人は歩き出す。
俺ら、何したらいいんだろなって、トシがボロボロの中で聞いて、川田はいう。

はたらくしか、ないだろ。

このドラマの人たちはみんな、猛烈に、はたらいている。
実存を燃やしている。

お読みいただき、ありがとうございます。七転び八起きな人生を、みんなで楽しみ合いながら、笑い合いながら暮らしていけたらいいなぁと思って、noteでマガジンやっております。もしよろしければ、フォローいただけると嬉しいです(^^