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王道でもないし、人生を変えるほどじゃないけれど、個人的に好きなアルバムシリーズvol.6『ビィ・ヒア・ナウ(Be Here Now)』

「大ヒットの次回作は大体賛否両論」

第6回目は、90年代イギリスを代表するバンド「オアシス(Oasis)」より、3作目の『ビィ・ヒア・ナウ(Be Here Now)』です。

オアシスはギャラガー兄弟を中心として結成されたロックバンドで、1991年に『オアシス(Definitely maybe)』にて、当時のデビュー・アルバム最速売り上げ記録を果たす鮮烈なデビューを果たし、2作目の『モーニング・グローリー( (What's the Story) Morning Glory?)』のモンスターアルバム(全世界で2500万枚以上の売り上げを記録)により、一躍彼らをスターダムに乗し上げました。

そんな中、次回作への多大な期待を受けて発表されたのが本作です。

結論から言うと、このアルバムは前作ほどには振るわず、長らく失敗作と言われてきました。

たしかに、前作の豊富な楽曲群と完成度に比較すると、物足りなさは否めません。

しかし、中には良曲もいくつか存在し、それら一曲一曲は、前作の楽曲群に引けを取らない魅力を秘めていると思ってます。

個人的にオアシスのトップクラスに好きな曲が、このアルバムにいくつか含めれているため、今回記事に取り上げることにしました。

メンバーは前作に引き続き、リアム・ギャラガー(vocal)、ノエル・ギャラガー(guitar、backing vocal)、ポール・”ボーンヘッド”・アーサーズ(guitar)、ポール・”ギグジー”・マッギーガン(bass)、アラン・ホワイト(drums)の5人です。

曲目は以下の全12曲です。

1.『ドゥ・ユー・ノウ・ワット・アイ・ミーン?(D'You Know What I Mean?)』

2.『マイ・ビッグ・マウス(My Big Mouth)』

3.『マジック・パイ(Magic Pie)』

4.『スタンド・バイ・ミー(Stand By Me)』

5.『アイ・ホープ、アイ・シンク、アイ・ノウ(I Hope, I Think, I Know)』

6.『ザ・ガール・イン・ザ・ダーティ・シャツ(The Girl in the Dirty Shirt)』

7.『フェイド・イン - アウト(Fade In-Out)』

8.『ドント・ゴー・アウェイ(Don't Go Away)』

9.『ビィ・ヒア・ナウ(Be Here Now)』

10.『オール・アラウンド・ザ・ワールド(All Around the World)』

11.『イッツ・ゲッティン・ベター(マン!!)(It's Gettin' Better (Man!!))』

12.『オール・アラウンド・ザ・ワールド(リプライズ)(All Around the World (Reprise))』

冒頭一曲目の『ドゥ・ユー・ノウ・ワット・アイ・ミーン?(D'You Know What I Mean?)』を初めて聴いた時の、後頭部を鈍器でガツンと殴られたような衝撃を忘れられません。

まるでこれから負けられない戦いに向かう者を鼓舞するような、オープニングに相応しい曲調で、大胆なエレクトロニクスの導入、効果的なストリングと分厚いギターサウンドが重厚感を与えています。

またPVも、ヘリが飛び交う廃墟をバックに歌い上げるリアムの姿と、男ゴコロをくすぐるものとなっています。(個人的にノエルがフライングVを演奏しているのが珍しいと感じました。)

続いて4曲目の『スタンド・バイ・ミー(Stand By Me)』です。

この曲はノエルが母であるペギーに捧げた曲で、シングルカットもされ2位に輝きました。

しかし、このアルバムを嫌っているノエルは本曲をライブであまり演奏してきませんでした。(ライブ・アルバム『ファミリアー・トゥ・ミリオンズ』で貴重なパフォーマンスが見られます。)

曲名はかの有名な、ジョン・レノンがカバーしたベン・E・キングの『スタンド・バイ・ミー』から取られ、特にサビの部分の”どうなるかは誰にも分からない、だからこそ一緒にいよう”という歌詞は胸に来るものがあります。

続いて、こちらも私のお気に入りの曲の一つである、8曲目の『ドント・ゴー・アウェイ(Don't Go Away)』です。

近しい誰かを失うことへの悲しさを歌った曲であり、ギャラガー兄弟の母ペギーが入院したときの心境を歌ったと言われています。

重々しいギターサウンドで始まりますが、サビの部分では雨上がりの晴空のような爽快感があります。

メロディーメーカーとしてのノエルのセンスが冴え渡り、当時のビルボードチャートで5位を獲得するなど、アメリカで最もヒットした曲でした。(その後『ショック・オブ・ザ・ライトニング』に更新されます。)

そして、こちらもシングル・カットされた私のお気に入りである『オール・アラウンド・ザ・ワールド(All Around the World)』です。

静かなイントロから徐々に盛り上がっていく様は、まさにアルバムのクライマックスに相応しい楽曲です。

ちなみにコード進行はかの「ビートルズ」の『ヘイ・ジュード』に影響を受けているそうです。

たしかに後半のコーラスは同曲へのリスペクトを感じます。

(PVの途中でイエローサブマリンに似ている潜水艦が出てきている点は考え過ぎでしょうか?)

また、アルバムラスト曲の『オール・アラウンド・ザ・ワールド(リプライズ)(All Around the World (Reprise))』は、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の構成へのオマージュと言って間違いないでしょう。

他にもノエルがボーカルを取った3曲目の『マジック・パイ』や、ジョニー・デップが参加した7曲目の『フェイド・イン - アウト』などの興味深い楽曲も収録されています。

前述したように、ノエルは長らくこのアルバムの曲を失敗作と評し(リアムはお気に入りの一枚ですが)、ライブでのセットリスト入りを避けていました。

たしかに、前作の全曲シングル・カットしてもおかしくない、ベストアルバムのような楽曲群の豊富さと比較すると、総合力では見劣りするでしょう。

しかし、大ヒットを記録したあとのバンドは、すべからく次回作への期待という試練に立たされます。

本作は前作の焼き直しという安易な方向に走らず、常に新しいサウンドを求めて進化し、その後解散するまで第一線で活躍し続けたバンドの片鱗を伺うことができます。

並のバンドでは成功といっても良いクオリティだと思いますが、彼らが受けた期待からすると合格点とは言えなかったのでしょう。

それだけオアシスというバンドがいかに巨大で、多くの人に愛されているかという表れともとれます。

現在ノエルとリアムはソロ活動を精力的に続けていますが、いつかまた二人の兄弟があのハーモニーを見せてくれること、その際はぜひこちらのアルバムの曲を歌ってくれることを楽しみにしています。

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