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感動ポルノをかわしつつも”まっすぐ”を貫いた信念の作「silent」#2

ドラマ「silent」の感想の続きです(実質、最初ですが)。

脚本家の視点

前回、作り手目線で作品を見てしまうという話をしましたが、本作では新人脚本家「生方美久」さんの起用も話題になりました。

生方さんはこのnoteにもアカウントがありますが、寄稿されている記事を見ると、とにかく「くやしい」が多い印象でした。

結構あけすけに感情をさらけ出していて、「ボクらの時代」に出演された際も「海外とか興味ない」「日本人に見てほしい」といった発言をされていて、見ていた自分は「日本語の面白さ」について話していることが理解できましたが、「これ絶対切り取られて炎えるヤツだ」と思っていたら、案の定でした。

ドラマでは、ろう者役の夏帆さんが結構はっきりした物言いの”やなキャラ”スタートでしたが、最初はいわゆる「感動ポルノ」にならないよう、戦略的にそういう設定にしているのかと思っていましたが、言いたいことが言えるキャラとして割と本人を投影していたのかもとか思って見ていました。

演出家の視点

演出としては、とにかく映像がきれいで、ボケがすごくていいカメラ使ってんなみたいな感じでしたが、撮り方も凝っていて、線路のシーンでは感情の切り替わるタイミングで毎回電車が通過したり、踏切が下りたり、カメラがゆっくりとパンするシーンでは出演者の良い表情をとらえる角度で光がパァッと差し込むなど、すごくこだわって撮っているのがよくわかる作りでした。

アニメなら、そういうシーンを描けばよいので、新海誠作品みたいに(アニメ技術の)撮影のマジックと合わせて印象的にするのも比較的容易な気がしますが、実写でそれやるとなるとタイミングだったり、天気待ちとか効率悪すぎるんで、演者の人も相当粘り強く演じられていたのではないかと思います。

出演者の視点

本作はオリジナルで、脚本も基本的に当て書きということだったので、みなさんハマっていましたが、特に今作のヒロイン像は川口春奈なくしてはあり得なかったような気がします。

自分は正直、彼女の主張の強い目力や空気を読まずに前に来る感じがちょっと当てられてしまうというか、あまり得意ではないのですが、キャラクターとして”まっすぐ”という設定だと、湊斗に振られてすぐに想の元に駆けつけたり、想を奪った形なのに奈々に会いに行くなどの強心臓っぷりも、「自分の感情に正直なだけなんだな」と力ずくで納得させられてしまう存在感がありました。

ただ。個人的に最も印象的だったのは、上でも触れた桃野奈々役の夏帆さんの演技でした。

感情豊かな手話の表現は圧巻で、ずけずけと思ったことを言う性格と相まって、非常に魅力的に感じられました。

役の中ではそれがあまりにも当たり前に映るので、メイキングのNGシーンとかでしゃべってる方が違和感のあるほどでした。

本作の手話の監修指導をされていた中嶋元美さんは、”手話パフォーマー”としても活躍されているそうで、こちらの動画を見るとその表現力をとてもうまく取り入れられていることが分かります。

まとめ

手話のシーンで無音になる音楽の使い方も印象的でしたが、こちらはあまり詳しくないので、このくらいにしておきます。

人気のドラマだけに、もういろんなところで感想や考察も言い尽くされているので、今回は作り手視点という形で自分なりに感想をまとめてみました。

また何か魅力的な作品があれば紹介していきたいと思います。

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