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飼育下にてセアカオサムシの蛹化を初確認


※蛹化後5時間が経過した画像を追記しました



2023/05/13

先日、記事に上げたセアカオサムシ前蛹が蛹化を始めていた。

蛹化中のセアカオサムシ


幼虫の殻を脱ぎ捨て蛹となった
セアカオサムシ


感無量と言う他ない。
インターネット上に蛹の姿が載るのは初めてだと思われるからだ。
何せ、前回記事でも語ったように、この虫の公式観察記録は3齢(終齢)幼虫までしか存在しない。



さらには本日、『この虫の羽化を日本で初めて確認した』…という夢を見て目覚めた。
それも、この虫を飼育している自宅から数十キロは離れた場所で。
大きな溜息が出た。

蛹になってくれるかもしれないけど、死んでしまうかもしれない。そんな不安を四六時中、毎日のように抱えた上で目撃した希望が夢オチだった。
夢の中で羽化を目撃していた時、心の底から感動しつつも「あれ?でも昨日まで幼虫だったのに、いつの間に蛹になっていたんだ…?」「なんで蛹になったばかりのはずが、今ここで羽化しているんだ…?」との矛盾に気付き、その瞬間に夢から醒めてしまった。
深く絶望する。

しかし、そんな夢を見せられてしまったらもう居ても立っても居られない。すぐに数時間かけて自宅へと戻った。
そこには、蛹化を始めたセアカオサムシの姿が………ある訳ではなかった。


前蛹の基本姿勢である仰向けが解かれて、うつ伏せとなっていた。
うつ伏せは幼虫として活動する際の基本姿勢だ。

仰向けになるセアカオサムシ前蛹
ゴミムシ及びオサムシは
仰向け状態が数日続いた後に蛹となる
(前日撮影)


再び絶望する。
本来ならば仰向け状態の解除は蛹化の直前段階と捉える事も可能だが、この個体は前蛹に至るまでに1週間近くも飲まず食わずのまま飼育容器の中で絶えず動き回った後にようやく仰向けになったという経緯を持つからだ。
自分は仰向け状態の解除を『振り出しに戻った』と判断してしまった。
ここで振り出しに戻ってしまったのなら、もうこの幼虫が無事に蛹になれるだけの体力は無いはずだと、判断してしまった。
仮にそうだった場合、すでに新たに栄養を摂取する機能さえ失われてしまっていたはずだろう。


そして、この個体が無事に蛹になってくれる事をほとんど諦めた状態で意気消沈のまま買い出しに行き、他生体のメンテ等を済ませつつも、その間に何度も何度もこの個体を確認した。
しかし、変わらずに微動だにしないうつ伏せ状態のままだった。
もう本当にこの個体が無事に生きられる事は無いのだなと心の底から諦めてしまった。

それから1時間ほどして、再び数十キロ先の目的地に向かおうとした時、99%の諦めを感じつつも前蛹だった個体の様子を最後に確認した。
すると、飼育容器の中に白い物が見えた。
まさか?と思い、容器内をしっかりと確認すると、あれほど待ち望んだセアカオサムシの蛹化が始まっていたのだ。

それが冒頭でも載せた以下の画像のシーンだ。

その時の手は、ひどく震えていたように思う。
しかし、最もデリケートな状態である蛹化中に振動を与えてはいけないと考え、数十回は深呼吸をしてから撮影に臨んだ記憶がある。



しかし、経過を常に撮影した訳ではなかった。
以前に脱皮中の幼虫を撮影時のフラッシュによるストレスで亡くしてしまっているため、撮影枚数は最小限に留めた。

脱皮中の3齢幼虫。
外皮は2齢時の物。
この状態のまま脱皮不全を起こして
亡くなってしまった。

フラッシュを焚く度に幼虫は大きく仰け反った。
脱皮は外皮が硬質化する前に体の各部位を一時的に膨張させる事によって行われるが、フラッシュへの強い忌避反応を繰り返したために、各部位に対しての体液の流動を阻害してしまった事で脱皮不全を引き起こしてしまった可能性が高い。



そうした事もあり、失敗できない蛹化の撮影は最低限の枚数とした。

適切に撮影できたと思った1枚を確認した後、すぐに飼育容器を暗所へと移動させた。

その後、20分ほど経過してから容器を確認すると、蛹化は無事に完了していた。
ほっと胸を撫で下ろしつつ、数枚の写真を収めて再び暗所に戻し、現在に至る。

蛹化後5時間が経過した様子。
蛹化直後と比べて腹部が縮んだ状態。



この個体が無事に羽化するか否かは運次第、そして自分の適切な管理次第ではあるが、今回試した飼育法にてセアカオサムシが蛹にまで成長できる事が分かったのは、この虫の研究史において大きな一歩だと思われる。

また、3齢時に2種類の代用餌のみをそれぞれ単一に与えて育てた後続の2個体も蛹化準備を始めており、しばらく後に経過を観察したい次第だ。

セアカオサムシ3齢幼虫を入れた
飼育容器



セアカオサムシに関する過去の観察記録は

#セアカオサムシ  

を参照していただきたい。


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