見出し画像

ヤンマのヤゴを捕食するコキベリアオゴミムシを確認


某日、コキベリアオゴミムシが水際でヤンマのヤゴを捕食している様子を観察した。

自分が撮影を始めてすぐに行われたのは、ヤゴの翅が収まっている部分の外皮を噛み千切り、中身を引き摺り出すという場面だった。
コキベリアオゴミムシが干上がった水路でシオカラトンボやアカネ系のヤゴを捕食している様子は何度か確認した事があるが、まさかヤンマほどの大きさの虫を率先して捕食するとは思わなかった。

生きたヤゴを捕食するコキベリアオゴミムシ
2022/06/30撮影

ヤンマのヤゴは羽化のために陸上に居た所を襲われたのだろうか。ヤゴに抵抗の動きがほとんどなかったのは気になる所。最初から亡くなっていた個体だったのか、擬死によって外敵から身を守る生態のヤンマだった故に、そのまま捕食を継続されてしまったのだろうか。ヤゴには詳しくないが、この辺りではカトリヤンマを捕獲した事がある。
近辺に居た同じ種類のヤゴを手に掴んでも、ギンヤンマのヤゴのような激しい抵抗を行わなかった。
ギンヤンマのヤゴは抵抗の際、尾端の棘を激しく突き刺してくる。


ヤゴが農薬で亡くなった可能性も浮上したが、オオトックリゴミムシやオオサカアオゴミムシ等の農薬に非常に弱い種類の湿地生物が同所に多数生息していたので、その線は薄いだろう。
現時点で最も有力なのは、擬死による防衛を行う生態のヤゴがそのまま捕食されてしまったというものだと思われる。



アオゴミムシ類の多くは節足動物食のようで、飼育下で赤虫を与えて繁殖〜羽化を行なったデータがいくつかの論文に掲載されている。

干上がりかけた水際に取り残されたボウフラやカイミジンコ、ゲンゴロウ幼虫等を狙って積極的に水の中に脚を踏み入れる様子を自分も多数確認しており、成虫の重要な餌資源となっているのだろう。泳ぐそれらを追いかけて捕食する様子がよく見られる。

以下は飼育下にてそれを再現した様子。
いずれ高画質での撮影を遂げてみたい所。

また、飼育容器内の多くの個体がペットボトルキャップ内に放った水中のボウフラの捕食を行なったが、その中でも何度も繰り返し入水した1個体からは興味深いデータが得られた。
その個体は水中でボウフラを捕獲すると即座にペットボトルキャップから離れ、水中へ逃亡されないように陸上へと連れ去った後に咀嚼を行なっていた。
捕食を終えると再びペットボトルキャップへと向かうという行動を何度か行なったが、そこへ向かうルートは全て同一にも見えた。
スナハラゴミムシの研究を行なった小松貴氏が『月刊むし』に寄稿した記事によると、「タニシを捕食していたスナハラゴミムシが小松氏の気配に驚き、タニシを放置したまま逃走を行なったが、しばらくすると同一個体が同一ルートを通り、同所へ戻ってきて再びタニシの捕食を行なっていた」という観察記録が存在する。
この観察結果から、小松氏はスナハラゴミムシに空間把握能力(記憶能力)がある可能性への言及をしていたように思う。(現在は自宅に帰れていないため、文献を再確認する事が難しく、うろ覚えだ。確認次第修正する可能性がある。)

今回の飼育下におけるコキベリアオゴミムシの観察例は、狭い飼育容器内だからこそ起きた偶然の一致である可能性も高いが、スナハラゴミムシと同じ空間把握能力を持つ可能性も少なからず浮上した。




関連記事

逃走経路を辿って再び採餌を行ったと思われるゴミムシの観察記録一例

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?