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湿地帯の友



某日、訪れた土地で偶然にゲンジボタルと出会う。いつのまにかホタルの時期になってしまっていたようだ。
多忙と充実が伴った今年は特に体感時間が短い。

目の前に突如飛来したゲンジボタル


昨年、いくつかの希少種の生息地を探し回っていた頃は、あちこちでホタルに遭遇した。
航空写真で環境が良さそうに思えるポイントを品定め、ピン留めしていると、やはりそうした所に集約してしまうようだ。


初めて自力でホタルのポイントを開拓した時の事はよく覚えている。
前述の通り、希少種の生息地を探し回っていた最中に一休みをしようと懐中電灯のスイッチを切り、湿地帯の真ん中で疲れた目をしばらく閉じた。
1分ほどそうしたのちに再び瞼を開くと、いつのまにか自分の目の前には何匹ものヘイケボタルが飛び交っていた。
不意に幻想的な世界に包まれていた事で、思わず「あっ」と声が漏れてしまった。
今でも不意に出会うホタルは疲れを癒してくれる存在だ。
その地へのアクセス時及び観察時の安全性が確認できた場合は、誰かを連れて再訪する事もある。

良好な湿地故にマムシに遭遇する確率はかなり高い。
そのため、足元が安全かつ見通しが良いポイントのみを案内し、同行者に履いてもらうための長靴も欠かさず用意している。









自分はホタルが好きだが、必ずしも『ホタルが生息している=嬉しい』『ホタルが飛んでいる=嬉しい』とはならない事もある。
ホタルが飛び交う環境は確かに良好な湿地である事が多いのだが、大抵は周辺住民が知る人ぞ知る鑑賞スポットとなっている場所が多い。
そのため、普段は一切の人気ひとけが無かったポイントでも、6月に入ると何人もの周辺住民や車と遭遇するようになる場合がある。車を停めやすいポイントも埋まってしまう。
それに加えて、そうした場ではホタルに強い刺激を与えて発光を止めてしまう恐れがある懐中電灯の光は基本的に御法度となる。
そんな状況では灯りを照らす事ができず、夜間における水生昆虫や徘徊性昆虫の観察はまず行えないだろう。
そうした場で人気ひとけを感じたらすぐに明かりを消すか、光量を最小限に絞りつつ先に挨拶をするので、懐中電灯に関して他人から咎められた事はない。
しかし、向こうも静かに1人で、または身内だけで鑑賞をしたいだろう。自分だったらそう思う。
それ故に、この時期はそもそもホタルの発生ポイントには出向かないという選択を多くする事が基本となってきた。


ホタルの発光が最も盛んになる時間とゴミムシ等の徘徊性昆虫の活動ピーク時間も被ってしまうため、余計に都合が悪い。
一応、希少種はホタルとは無縁の環境にも生息している事があるため、基本的にはそちらへ向かうようにしている。

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