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白サシを用いたトカゲ自動捕獲罠

はじめに

今回は、昨年に庭で使用したトカゲ自動捕獲罠を紹介。

このトラップは手元にある有り合わせの道具を組み合わせて作りましたが、結論から言えばカナヘビ成体2匹とヒガシニホントカゲ幼体1匹が捕獲できました。

当記事では両者を共に指す場合、トカゲと呼称します。


設置環境、構造

設置環境と仕組みは以下の通り。


設置環境

①カナヘビやニホントカゲの生息を確認した斜面に沿うように大型プラケースを設置。

②それを支えるように支柱で固定。

③白サシの入った容器(今回は小型プラケースを使用)を吊り下げる


というもの。

トラップの側に水の入った小型タッパーがありますが、これは仕掛けた日が雨がほとんど降っていない真夏だったので、飲み水を目当てにトカゲをトラップ付近へ誘き寄せる事ができるかもしれないと思って設置した物です。
効果がゼロというわけではないと思いますが、これは無くても構いません。

別の角度から見たトラップは以下の通り。

設置環境全体

こんな見え見えのトラップに引っ掛かるものなのか?と思う方もいらっしゃると思いますが、野生のトカゲは基本的に飢えている状態で過ごしているため、餌を目視すれば我を忘れて追いかけます。(実際にこうして罠に掛かっているのが証拠です)

使用する餌はトカゲが食べる生き餌ならなんでも良いですが、白サシ(ウジ虫)を優先的に使っている事には理由があります。

①白サシは"負の走光性"によって暗い場所に向かって移動を行う生態があるために、このトラップ内においては絶えず動き続けてトカゲの誘引に繋がる事。

② ウジ虫は蠕動ぜんどうと呼ばれる運動によって歩行を行うため、餌虫の中でも特に嗜好性が高い事。

③釣具店で販売されているため、入手が比較的容易な事。

などが挙げられます。特に①②の組み合わせによる誘引効果は絶大で、トラップに掛かった後でもトカゲは白サシを狙い続けていました。

一応、トカゲが捕食できるサイズのバッタやコモリグモ、コオロギなど、現地で調達できる餌を使用する事でもトラップは機能します。


捕獲状況、捕獲個体

トラップに近づくカナヘビ
白サシとそれに誘われて
トラップに掛かったカナヘビ
怒ってる
トラップに掛かったニホントカゲ幼体
自分の頭よりも大きな白サシを
捕食しようとしてトラップに掛かった。
白サシの誘引効果が高い事が窺える。
トラップに掛かったカナヘビ2個体目
若虫時代にカナヘビを好んで宿主とする
タネガタマダニが寄生している




注意点、改善案

このトラップを使う際に最も気を付けたい点は、トカゲが地上から餌を目視できる構造にする事です。

例えば、このトラップで使用する白サシを、吊り下げた小型プラケースに入れる事なく、そのまま大型プラケース内に放せば捕獲効率は格段に下がると思われます。
トカゲは離れた場所にいる餌の捕捉を視覚に頼っており、裏を返せばトカゲの視野に餌が見えなければこの罠に近づく事はほとんど無いと思われるからです。
そのため、離れた場所からでも白サシの動きを捕捉できる上記画像のような構造となっています。
その点を守ればペットボトル等でも代用できるでしょう。
ただし、白サシは体が濡れると壁を登る事ができるようになるので、乾燥させたペットボトルを使用する等の注意が必要です。
そして密閉状態では日向に置くと蒸れと高温により白サシが死んでしまう事が危惧されるので、その点も気を付けましょう。


このトラップの改良案としては、トカゲが捕獲される大型プラケース内にトカゲの隠れ家を作る事。
斜面ではなく平面でも設置できる構造にする事でしょうか。

隠れ家が無い事で、鳥等の野生動物にトラップ内のトカゲを捕食されてしまう可能性がそれなりに高いという点はこのトラップの最大の欠点だと思います。一応、落ち葉や枯れ草等を入れる事で多少の対策にはなります。それらを使って外に逃げられる事が無いように気を付けて入れましょう。
また、真夏のように直射日光が著しく高温となる環境では熱射病を起こして死んでしまう可能性が高いので、予め日陰に設置する等の対策が必要でしょう。

斜面ではなく平面に設置できるようにする案としては、平面に置いた大型プラケースの入り口に向けてスロープ(坂)を作る事などは考えました。
鉢底ネットのようなトカゲが爪を立てられる物であれば登りやすいでしょうか。段ボール等はツルツルした表面を剥がして内部の波打つ厚紙が露出するようにすればスロープとして機能するようになると思います。
吊り下げられている餌容器内に餌虫を確認できれば、トカゲ達がそうしたスロープを登ってくる可能性はかなり高いです。


今後は携帯しやすい組み立て構造の改良案も考えていきたいです。


そして最後に、餌として使用した生物が購入したもの、もしくは他のポイントから持ち込んだ生物だった場合は、逃す事なく必ず持ち帰ってください。

特に購入した餌である場合は、現地に生息していない種類や個体群であるために外来種の拡散や遺伝子汚染、交雑に繋がる危険性が高く、その土地に生息していない細菌やウイルス、寄生虫を放つ事にも繋がりかねません。

そうした理由から、一度捕獲して飼育を行ったトカゲ達は餌虫由来の細菌や寄生虫を持っている場合があり、元々の生息地に逃す事も推奨できません。
逃す事なく、最後まで責任を持って飼育しましょう。
(この場合の"責任"は飼えなくなった場合に別の飼い主を探す事も含まれています)



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