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ぼのぼのちゃんと、いっしょ


ぼのぼのちゃんと、一緒に寝た。

ぼのぼのちゃんを、かかえて寝た。

ぼのぼのちゃん(カピバラさんコラボ)
あたま
おしり


そうしようと思い立ったのは、自分の寝相に疑問を感じたからだ。
自分は寝相が特別悪いわけではないが、特別良いわけでもない。
腕や体があっちこっちに行ってしまうほどではないが、枕に敷いたタオルは朝起きると大幅にズレていたりする。
しかし、誰かと寝たりソファーで寝落ちしてしまった時などは何かにぶつかる事はないし、落ちる事もない。枕も定位置にある。



ある程度の緊張感を持った睡眠は寝相を固定させるのではないか。
かつて趣味で行ったサバイバルにて、橋の下で野宿した時は微動だにする事なく寝ていた。少しでも寝相を崩せば落水の危険があったからかもしれない。
恐らくはそうなのだろう。だが、一応試して納得してみたい。



それを試すためにいつも枕元に居るぼのぼのちゃん(カピバラさんコラボ)を選んだ。
ぼのぼのちゃん(カピバラさんコラボ)を抱き抱えて寝れば緊張感が生まれて寝相が固定されるのではないかと思い立った。




そしてぼのぼのちゃん(カピバラさんコラボ)と一緒に寝た。










そして、夢を見た。

















それは薄れていたはずの記憶。
小学校の1年生。
初めてできた友達と、初めて並んで帰った記憶。初めて笑って帰った記憶。
その再上映だった。
相手は近所に住むNくん。その子との初めての会話は少しぎこちなかったように思える。
まだお互いにどんな共通点があるかも分からずに当たり障りのない会話をしていた中で、Nくんが口にした"ひとつの質問"が、ふたりの距離を縮める。


「すきなアニメってなに?」そう聞かれた。


「うーん、ぼのぼのかな」そう答えた。


幼稚園の頃、自分のいちばん好きなアニメである「ぼのぼの」を知っている子は周りに一人としていなかった。放映はいつ頃だったのだろうか。自分の家では何度もビデオをレンタルして文字通り擦り切れるまで繰り返し視聴していた。となるとリアルタイム放映ではなかったはず。



「え!いっしょじゃん!」


Nくんの声は、いちだんと明るくなって返ってきた。

意外だった。「ぼのぼの」の話を家族以外とする時が来るなんて思っていなかったからだ。


その瞬間以降、自分の目に映る景色全てに輝きが増したような感覚があった。


それからはずっと、「ぼのぼの」の好きなエピソードを途切れることなく話し合った。

ふたりは慣れないランドセルの重さを物ともせず、弾むように歩いた。

ふたりは眩しかった。
少年でもあり、少女でもあった。

声変わりをする前の自分は、シマリスくんのモノマネがすこぶる上手かった。

それを披露するとNくんは、いたく喜んでくれた。

家に着くまで笑いが絶えず、夢が醒めることもなかった。




夢の中で見たあの空は今よりずっと蒼かった。そして、Nくんの琥珀色の瞳はずっと透き通っていた事を思い出した。

コブクロが歌う「今よりずっと蒼く 優しく見えた空」というフレーズは僕らの記憶の彩度補正を指すのだろう。



「好きな人の写真を枕元に置くとその人の夢を見る」と昔から言われていた。好きな人の写真を入れた事はないが、何かしらの夢を見ようとしてそれが成功した試しがないので迷信だと思っていた。
まさか、ぼのぼのちゃん(カピバラさんコラボ)で夢を見るとは思わなかった。

















翌朝



目覚めると、その腕には、ぼのぼのちゃん(カピバラさんコラボ)が抱き抱えられていた。
変わる事なく、胸に顔を埋めていた。





"護るべきもの(カピバラさんコラボ)"が、いる。

そう思った。







こんなにも、すぐそばに-----。





























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