見出し画像

D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略

本書は、消費者へ直接商品を販売する「D2C(Direct to Consumer)」のビジネスモデルについて本質的な意味を読み解き、ビジネスに適応可能に編集して説明されている。そして、これからブランドやメーカーを立ち上げたい、あるいは革命を起こしたいと考える全ての人々に向けて、何かしらのきっかけになることを目的に書かれている内容となっている。

内容は第1章〜第6章の構成であり、簡単にまとめますが、急成長しているビジネスモデルを学ぶことができる非常に学びの多い一冊であると思います。

第1章:D2Cが生んだパラダイムシフト
第2章:「機能」ではなく「世界観」を売る
第3章:「他人」ではなく「友人」に売る
第4章:D2Cの戦略論
第5章:D2Cを立ちあげる(スタートアップ・大手ブランド・大手小売)
第6章:D2Cの先にあるもの

第1章:D2Cが生んだパラダイムシフト

第1章ではD2Cの定義から従来の伝統的なブランドの違いを説明している。

昨今、伝統的なブランドが経営不振に陥り、新興企業にシェアを奪われている現状があるかと思います。特に従来テクノロジーと無縁だった業界(小売業など)では瞬く間に消費者と直接関係を築き、直接販売するD2Cブランドが台頭している。これまでのルールにとらわれない形で商品開発・チャネル開発・マーケティング・値付けを行う「DNVB」と呼ばれるデジタル起点の垂直統合志向が主流となりつつある。

そして、D2Cは「モノからコト」→「コト付きのモノ」という新しい流れを作っている。インターネットサービスであるという「コト」的な側面をもちつつも、リアル店舗を持ち、実質的な「モノ」を核としながら世界観を作り込むハイブリット性が特徴となっている。

スクリーンショット 2020-01-01 18.52.08

第2章:「機能」ではなく「世界観」を売る

D2Cは、従来の伝統的なブランドと比較して、ブランドの品位品格や知名度などではなく、なによりその世界観が最重要と考え、プロダクトではなく、世界観を売ることに注力している特徴がある。
これまでの瞬間的なインパクトに依存するのではなく、消費者に長い言葉で語りかけて世界観を理解してもらい、長期的な関係を築くコミュニケーション手法をとっている。

ここまで世界観を重要としている理由は主要ターゲットであるミレニアル世代やZ世代が世界観の訴求に強く共感するからである。ブランドという絶対的な信頼性に動くXY世代とは異なり、彼らは本物であることや社会によっての意味にポジティブな反応を示す特徴があるため、ストーリー性を持たせ、ブランドをメディア化することで、その世界観を理解してもらうことでロイヤルティを高める必要性を考えている。

スクリーンショット 2020-01-01 18.52.53

第3章:「他人」ではなく「友人」に売る

伝統的なブランドでは、マスメディアを通じてメッセージを届け、消費者の能動的な行動に依存する傾向があるが、D2Cブランドでは双方向のコミュニケーションをとることで友人のような関係性を築く必要がある。

しかし、友人になることはいかに消費者との距離を近くして、相手が何を思い、どう感じているのかを知る必要があるが、これまで消費者とブランドの間には2つの大きな壁が存在していた。

①販売チャネル
小売店が介在することでマージンを取られることだけでなく、顧客データの喪失、ブランドの世界観の毀損、消費者体験の毀損がある。

②広告プロモーション
基本的に広告代理店やPR会社に依頼をすることになるため、自分たちのブランドを他人から伝えてもらっている状態である。そのため、結果はわかるとはいえ、消費者の反応をダイレクトに感じることができていない。

スクリーンショット 2020-01-01 19.01.26

また、これからは「作る、広める、売る」といった役割が固定されている時代も終わったと言える。これはデジタルの発展により融解しつつある。そのためには、インフルエンサー型かたアンバサダー型にシフトして、認知の質をケアしながらメッセージを投げかける必要がある。

第4章:D2Cの戦略論

D2Cのビジネスモデルは、これまでのメーカーとは全く異なる構造であり、ものづくり企業であると同時にメディア企業、テック企業でもある。

スクリーンショット 2020-01-01 19.02.08

テック企業でもあるとは、D2Cビジネスではデータ・ドリブンな意思決定や素早いPDCAサイクルによって、プロダクトを改善し、消費者に価値を提供する必要があるため、テクノロジーにも重点が置かれている。

メディア企業でもあるとは、世界観を作り、様々なチャネルで届け、ファンひいてはエバンジェリストになってもらうための「コンテンツ×世界観」が重要とされているからである。

そして、従来のマーケティングの考え方からも変化していると言える。
具体的には以下の4点があげられるだろう。
具体的には本書にてご確認ください。

「トランザクション」→「リレーション」
「個人的ジャーニー」→「社会的ジャーニー」
「4A」→「5A」
「4P」→「4E」

第5章:D2Cを立ちあげる(スタートアップ・大手ブランド・大手小売)

本章では、D2C企業を立ち上げるにあたっての要素やVCの投資条件、他企業との連携について説明されている。そのなかでもD2Cビジネスの展開には、デザインやクリエイティブ要素は非常に重要であると言われている。この飽和状態のビジネス世界では、機能や価格にどの差別化は年々厳しくなっている。だからこそ、プロダクト+消費者体験やストーリーテリングのイノベーション(世界観作り)が必要不可欠、そのためにたとえプロダクト品質に改善が必要な状況であったとしても、クリエイティブだけはベンチャー企業らしい荒削り感はあってはならず、革新的でいながら、洗練さと高級感のバランスをとった高度なクオリティが必要なのである。

スクリーンショット 2020-01-01 19.03.31

第6章:D2Cの先にあるもの

D2Cという言葉は、今やバズワードとも言われるほど、国内のベンチャー投資でも、最も盛り上がっているカテゴリの一つとなっている。

しかし、D2Cビジネスの課題として、成長のキャップ(上限)がよく挙げられる。行っての規模まで成長した際、それまでの成長速度を維持することが難しくなり、さらなる成長のためには伝統的な小売業が仕掛けたゲームルールの中で戦わざるを得ない状況になってしまう。
指数関数的成長は売上500億程度までと言われ、それ以上の安定的成長のため、変化に緩慢に対応するマジョリティに対して伝統的な売り方、メッセージの伝えかたをする必要性があるということだ。

また、国内でのD2Cビジネスの場合、価格帯と流通にも留意する必要があり、米国と同じ戦略をとってしまわないようにする必要もある。

しかしながら、これからも手を替え品を替えD2Cビジネスは発展していくことが予想される。D2C商材も多様化し、消費行動が減退している状況の中でメルカリのようなユーズド品にフォーカスしたビジネスも伸びてきている。
この先、さらにデジタルが発展していくなかで、D2Cがもたらしたパラダイムシフトが全世界の全業種に波及していくことになる可能性もあるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?