Tomo Horita

2013年より長野県軽井沢町を拠点に絵を描いています。 https://www.tom…

Tomo Horita

2013年より長野県軽井沢町を拠点に絵を描いています。 https://www.tomoshidachi.com

最近の記事

The sound of the forest

この夏、湖の近くにある森の中で2日間、一人きりで過ごす時間をもらいました。 ほとんど人の気配が残されていない場所。 そこで感じたのは、自然のもつ透明感と果てのないような連続性です。 分裂、結合、増殖。常に流動し、変容する森の構造は、あまりにも混沌としていて、言葉では捉えきれません。 大きい小さい、とか、上と下、とか、持ちあわせた尺度は少しずつぼんやりとして、淡々とリズムを刻む、内からの小さな振動だけが、私に残された、ただ一つのものであるような気がしてきます。 いつしか、

    • 我が家には犬が一匹いる。 名前はフラン。 名付け親は夫だ。 この名前がどこから降ってきたのかわからないが、私は勝手に、卵と牛乳でできたフランス菓子の名前からきているのではないか、と思っている。 フランはトイプードルだ。体重は3キロ。 小さい。 毛色は菓子のフランのような黄色ではなく、ミルクティーのような、ちょっとくすんだ色をしている。 巻き毛。 頭が丸くてホワホワとしているので、たまに陽だまりに寝ていると、天使がいるのかと思ってしまう。 フランとの付き合いはかれ

      • ダニエル・ヘラー=ローゼン 「エコラリアス 言語の忘却について」

        生後何ヶ月くらいだろうか。子供を抱きながら顔を覗き込んでいた。 すると、突如、赤ん坊がそのちいさな唇で、何かしようとしていることに気がついた。 唇をゆっくりと、そしてぐーっと高く突き出し、次の瞬間、「u---」という音を発したのだ。 その「u---」は、それまでの音とは明らかに違い、雑音の混ざらない聞き馴染みのある響きだったので、まっすぐにわたしに届いた。 子供はその頃、いわゆる喃語といわれる言語ではない音を、日常的にいろいろと発していたのだが、その時は特別な瞬間だっ

        • ホオノキのこと

          わが家の庭には大きなホオノキがある。 高さはざっとみても25mくらいはあるだろうか。 樹齢は一体何年くらいなんだろう。 この土地に私たちが越してくる前からこの木はあった。 家が立つ前は、かなり鬱蒼とした森で、針葉樹と広葉樹が入りまじり、雑然としながらも何か豊かな感じのする土地だった。 なるべく木を切りたくない思いでいたので、どの木を残し、どの木を切るのかを決める作業はなかなか悩ましく、一本の木を切る決断をするのにいちいちと時間がかかってしまうのだった。 ホオノキは葉っ

        The sound of the forest