お酒の名前から

 だらだらと考えたことを。

 お酒の名前にもキラキラネームとかあるんでしょうか?マティーニⅡとか。車の名前みたいですが。 名前を和風に直して「 横車 」、とかちょっといいかも。サイドカーのおしゃれな感じをむりやり柔道の技みたいにした強引さが女子に受けると思います。


 先日行きつけのバーで、たまにはウイスキーではないものが飲みたいなと思いました。そこで久しぶりに「 おすすめを 」と頼んでみたところ、あるカクテルを頂きました。薬草酒の香りが微かにするけれど蒸留酒をベースにしたショートのカクテルなので、すっきり飲めて美味しいお酒です。その時の気分にとてもよく合うお酒でした。

 後日渋谷のよく行くお店でも注文。オーダーを聞いたマスターバーテンダーの方の眼が「 おっ 」と言っているような、より真剣味が増した感じがしました。

 季節感があるのでカクテルは面白いです。 ですがそれだけではなく、カクテルの名前に意味があるので、名前を介してお客とバーテンダーさんの間にメッセージのやり取りに似た関係が生まれるところも面白いです。

 昔茶道をかじっていた時の話ですが、点前の途中に都度お茶杓の銘( 名前 )を聞かれました。お稽古なので即興で答えるのですが、事前に歳時記などで季語を調べて季節に合わせて、またはお客様をおもてなしする上でのテーマみたいなものを入れてみたりして答えます。そのようなことも思い出しました。


 茶道をしていて色々勉強になったのですが、
「 点前通り作法通りした茶会が一番いい茶会とはかぎらない 」
ということを茶道の先生に教えて頂いたとき、なるほどと思いました。

 例えば、お茶をこぼしてしまったお客様がいたときにいかにフォローをして居心地よく過ごしてもらうことができるか、こういうときこそもてなす側の力が試されます。 同時に一番の上座に座った正客も、畳を拭いている時に他のお客様の眼を室内の他の部分や窓の外の景色に向けるよう話題を作ったりします。そういったお茶会の方が印象に残るいいお茶会と評価されることもある。

 「 見事な客ぶり 」とお客様のふるまいを褒める文化があるくらいです。 茶道というのは一期一会その空間をいかに良い空間にするかを目的とした総合芸術で、主客が一緒になって 創り上げるものです。点前通り、作法通りにするだけではない。そしてホスト側がへりくだってもてなすだけでは、下手をすれば卑俗になる。

 仕事などになればお客様からの働きかけをどれだけ求めることができるか難しいところもありますが、一緒になって創ることができたときの喜びはとても大きい。お客様が働きかけてくれることでホスト側が想定していなかった可能性が現れ世界が広がることもある。お客様が好奇心を持って質問してくれるだけ、何か行動してくれるだけでも違うものだと思うのです。

 「 おもてなし 」がオリンピック招致の時話題になりましたが、「 おもてなし 」という言葉を言う時にどれだけ主客の関係を意識していたのかな、なんてことをちょっと思ったりしました。呼ぶのはいいけれど、世界から来たお客様とどんな空間を創りたいのかな、と。どうしても箱の話ばかり話題になるけれども、中の話も聞きたい。あと六年あるのだからそういうことも今から考えられるといいですよね。


 頼んだお酒の名前はちょっと難しくて、最初に教えてくれたバーテンダーさん自身が一回噛んでいました。

  Tovarisch( タワーリシチ )。 

  ロシア語で「 同志 」という意味だそうです。

#おもてなし


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