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観光地とヒーローと文化と

日本とシンガポールの外交関係樹立55周年記念事業の一環として、ウルトラマンがシンガポールの平和を守っているようである。

私にとってウルトラマンとシンガポールは両方縁がある。ウルトラマンは、子供の頃から特撮を観ていたことに加えて、一時期、怪獣酒場という居酒屋でアルバイトしていた。シンガポールは、修士を卒業したあとの約半年間、シンガポール工科デザイン大学(Singapore University of Technology and Design: SUTD)にあったAugmented Human Labにお世話になった。怪獣酒場やAugmented Human Labの話は、いずれ機会があれば書くことにする。今回はシンガポールの観光とヒーローの話をする。

シンガポールといえば、ベイエリアの近未来的な雰囲気が印象的である。マリーナベイ・サンズやアートサイエンスミュージアムなどの奇抜な建物は、非日常感を演出する。ランドマークは観光地の重要な要素であり、また特撮との相性もよい。例えば、東京タワーはランドマークであり、だからこそ怪獣に何度も破壊されてきた。いずれにしても、ベイエリアの独特な、ある種のレトロフューチャー的風景は、真夏の日差しと相まって私の心に残っている。ほかの観光客も同じような印象を抱いている気がする。

未来的な雰囲気を纏う一方で、複数の文化が混ざっているのもシンガポールの特徴である。地元の人が集うレストランに行けば、インド系、マレー系、中華系のさまざまな料理がメニューに載っているし、道路を数本挟んだ程度の距離感にも関わらずエリアごとに異なる外観の建築をみることができる。私がよく利用していたお惣菜屋さんは中華系のところで、おばちゃんが中国語で接客をしてくれていた。また、滞在中にラマダン明けのお祭りのようなものに足を運ぶ機会もあった。きっと実際には現地なりの大小様々な問題はあるのだろう。それでも、私は文化が混在するシンガポールの良い面を感じることができた。

これ以上のシンガポールの紹介は、ほかに任せるとして、ウルトラマンの話に少し戻そう。魅力的な都市には魅力的な物語がついてきて、そこにはヒーローも現れやすいのかもしれない。先に挙げたランドマークも一例だが、街や文化に勢いがあると、物語は加速する。例えば、光と闇を描くにしても、そのコントラストが大きいほど劇的なものになる。ゴジラや初代ウルトラマンが社会問題をテーマに扱っていたのにもそういう要因がありそうである。

さて、都市と物語に関連して、最後に地域とヒーローについて少し述べる。昨今の日本では、ご当地キャラと似たような形で、ご当地ヒーローが活動しているようである。八百万の神よろしく、日本各地にヒーローが遍在していることは興味深い文化である。最近おもしろかったのはアニメ「怪人開発部の黒井津さん」であり、各地のご当地ヒーローの魅力をうまく描いていた。魅力的な都市が物語を紡ぐだけでなく、魅力的な物語が地域の魅力を引き出すような、そんなローカルヒーローの活躍に期待している。

庵野監督によるウルトラマンの映画も間も無く公開されるので、ウルトラマンの話題も事欠かない。映画にはおそらくシンガポールは出てこないが、ウルトラマンもシンガポールも引き続き興味を持ち続けたいと思う。

あと最後に、やはりマーライオンは現物よりも写真が映える。

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