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#34 フジ新人アナが”最凶失言”で場を凍らした

「告白します」

これが今回のテーマです。言える話と言えない話がそこそこ存在しているので、とても悩んたのですが、思い出しました。
そしてきっと、きっと皆さんのためになる。
僕のアナウンサー人生、出だしの最大のつまずき。もうね、とんでもないつまずきがあったので、ぜひとも聞いていただきたいです。

系列各局との合同練習

アナウンサーになりますと2ヶ月間、発声練習をします。
発声練習のみならず、もちろん早口言葉とかも練習するんですね。先生が来てくださって。腹式呼吸も教わります。そして正しい口の開き方、舌の動きなどを鍛えたりします。筋トレと一緒です。

早口言葉も同じ言葉をずっとずっと何回も言ってると、言えるようになるのは、口がきちんとその正しい大きさ、形になる、舌や口の周りの筋肉が鍛えられるからです。そういった練習を2ヶ月間みっちりやります。

そして、フジテレビのアナウンサーだけではなく、系列各局の同期と一緒にやります。僕は2001年入社なんですけれども、同期の各局の新人のアナウンサーたちがみんなで集まって講習を受けます。
講習期間は各局さんそれぞれの事情があるので、例えば2週間だけとか、1ヶ月だけとか、早く実地訓練を積ませたい、などの個々の方針もあるので人それぞれなんです。僕のときは、そもそも僕の代が6人いるので、多いんですけれども、あわせて20人弱ぐらいいたんではないでしょうか。

もちろん初めましてですが、基本的にみんなものすごく社交性があり
、すぐ仲良くなって一緒に飲みに行ったりするようになりました。

場が凍りついた瞬間はある日突然訪れた

そうしたなか、ある日、アナウンス室のいわゆるトップですね、室長が
昼食会をやろうということで、私達同期6人以外にも、一緒に講習に参加している系列局の新人アナウンサー総勢20人弱が、フジテレビの社員食堂でランチをしました。みんな、なかなか室長の隣とか座らないじゃないですか。
遠慮したりしたりして。だから僕が率先して隣に座りました。みんな席について食事会が始まります。

おもむろに室長から聞かれました。「そういえば、森下くん大学どこなんだい」と。「学習院大学です」と答えました。

小学校1年から5年までの間、イギリスに住んでました。なので、帰国子女枠で受験をしてるんですね。帰国子女枠で受けることができる学校って、なかなか少なくて、いくつか受けた中で、唯一拾ってくれたのが、学習院だったんです。ちなみに、一般は4教科受験。帰国子女枠は2教科+面接です。
海外にいたから受験勉強をする時間が少ないというハンデがあるということで、科目数が減らされています。その代わり、まだ英語の授業なんて小学校にない時代ですけど、英語の面接をやりました。イギリスに4年住んでましたので、きちんと会話をすることはできました。

それで無事、学習院に通うことができたという流れがあるので、僕の中では若干、コンプレックスといいますか、みんなはきちんと受験勉強して4教科受験して受かりました、僕の場合は2教科だった上に、ギリギリここだけ拾ってくれた、という勉強面における負い目みたいなものがあったわけです。

学習院は中等科、高等科、大学とそのままエスカレーター式で上がっていけます。

なぜその学校にしたの、と親に聞いたことがあります。なんで親は学習院にしてくれたんだろうかと。そしたら「知哉は勉強がもうほんと駄目だ。
だから、一発ドンで受かったらその後はもう受験勉強しなくて済む学校を選んだ」
と。

なるほど、エスカレーター式に上がることができるからか。そういう話を聞くとなおさらですね、僕はやっぱり勉強駄目だったんだなって思いがあったから。

だから室長に大学を聞かれた時に「学習院大学です。中学から馬鹿まっしぐら、エスカレーター式です」なんてちょっと自虐的に言ったんですね。

そしたら3秒ほど沈黙の時間がありまして。これ20年前ですよ、20年前にも関わらず、今でもその席の配置そして隣に座る室長、僕がその自虐的に馬鹿まっしぐらなんて言ったときの室長の表情を忘れられません。

彼がね、言ったんです。

「そっか。うちの息子も、学習院中等科から大学までなんだけどな」

その場に20人いるんですよアナウンサー。仮にも1年目とはいえ、喋りアドリブ、それなりの才能を見出されて採用された人たち。誰1人としてフォローできない。場が凍るってこういうことを言うんだ…1年目にして身をもって体験しました。

それ以降、どう取り繕ってどういう会話があったのか、全く記憶にないんですけれども、何ヶ月か経った後に、風の噂で聞いたんです。室長が他の人と会食してるときに「森下は傲慢だ」と言ってた、と。

めちゃめちゃ嫌われてんな俺、と思いました。なので僕が今回告白したかったのは、アナウンサーでも、こんな大失敗あるんだよ、ということ。

教訓は「口は災いの元」

たとえ自分のことを卑下して言ったとしても、それがひょっとしたら誰かを傷つけているかもしれない、ということ。一瞬で学びましたね。

だから、マイナス要素のことを言うときは、この言葉、この発言でここにいる人たちは傷ついたりしないよね。こういうケース、他の人にも当てはまることないよね、そういうことをきちんと考えて話すようになりました。

(voicy 2022 年5月28日配信)

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