物語のかたち

「物語のかたち」はちょっと変わった書評です。 私は物語を読むと立体的なかたちが見える…

物語のかたち

「物語のかたち」はちょっと変わった書評です。 私は物語を読むと立体的なかたちが見える共感覚?を持っています。 著者がつくり出す物語の世界が読み手をどのような気分にさせるのか、私が見えた「物語のかたち」とともにお届けします。

最近の記事

  • 固定された記事

はじめに

私の共感覚のこと、それから、この書評を書き始めることにした経緯についてお話したいと思います。 私は物語性のある文章を読むと、1つの立体的なかたちが見えます。星形だったり丸形だったり、ガラスのようだったり金属でできているように見えたり。そのかたちは、物語を読み進めるうちに変わっていきます。このnoto「物語のかたち」では、それぞれの本ごとにかたちを書いていきますが、そのかたちは物語を読み終えた時点で見えているかたちです。なぜ、そのかたちなのか。その質問にははっきりと答えること

    • わたしに会いたい(著者 西加奈子)

      わたしに会いたい 著者 西 加奈子 初版 2023年 『くもをさがす』の西加奈子が贈る、8つのラブレター。 この本を読んだあと、あなたは、きっと、自分の体を愛おしいと思う。 「わたし」の体と生きづらさを見つめる珠玉の短編小説集。 わたしを生きるための言葉。#Imissme ──わたしに会いたい。 コロナ禍以前の2019年より、自身の乳がん発覚から治療を行った22年にかけて発表された7編と書き下ろし1編を含む、全8編を収録。 ・「わたしに会いたい」──ある日、ドッペルゲンガー

      • 居場所。(著者:大﨑洋)

        居場所。 著者 大﨑 洋 初版 2023年 ダウンタウンを見出し、 活躍の場をつくり、 ともに歩みつづけた 吉本興業のトップがはじめて語る 「生きづらさ」の処方箋。 激動の人生を歩んだ著者が、 自分や大切な人たちの「居場所」を つくるために心がけてきた 12の「しないこと」とは。(出典:サンマーク出版) https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=3998-6 □「物語のかたち」 白いたらいのようなものが置かれている。そのなかに、

        • 窓ぎわのトットちゃん(著者:黒柳徹子)

          窓ぎわのトットちゃん 著者 黒柳徹子 初版 1981年 <新しい学校の門をくぐる前に、トットちゃんのママが、なぜ不安なのかを説明すると、それは、トットちゃんが、小学一年生なのにかかわらず、すでに学校を退学になったからだった。一年生で!!> これは、第二次世界大戦が終わる、ちょっと前まで、 実際に東京にあった小学校と、 そこに、ほんとうに通っていた女の子のことを書いたお話です。 新しい小学校の校長先生は、 トットちゃんの話をたっぷり四時間も、身をのり出して、きいてくれまし

        • 固定された記事

          汝、星のごとく(著者:凪良ゆう)

          汝、星のごとく 著者 凪良ゆう 初版 2023年 ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。 風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。 ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。 生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。 ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。(出典:講談社) https://b

          汝、星のごとく(著者:凪良ゆう)

          川のほとりに立つ者は(著者:寺地はるな)

          川のほとりに立つ者は 著者 寺地はるな 初版 2022年 カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。(出典:双葉社HP) https://www.futabasha.co.jp/book/978457524572100000

          川のほとりに立つ者は(著者:寺地はるな)

          日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―(著者:森下典子)

          日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ― 著者 森下典子 初版 2002年 お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる……季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。(出典:新潮社HP) ht

          日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―(著者:森下典子)

          月王子(著者:鈴木おさむ)

          月王子 著者:鈴木おさむ 投稿日:2020年12月4日 YOASOBI「ハルカ」の原作小説。 TOKYO FM「JUMP UP MELODIES TOP20」出演をきっかけに、番組パーソナリティを務める放送作家・鈴木おさむが原作小説を書き下ろし。(出典:YouTubeチャンネル「Ayase / YOASOBI」) https://monogatary.com/episode/109217 YOASOBI「ハルカ」Official Music Video 「物語のかたち」

          月王子(著者:鈴木おさむ)

          さざなみのよる(著者:木皿泉)

          さざなみのよる 著者:木皿 泉 初版:2018年 小国ナスミ、享年43。息をひきとった瞬間から、彼女の言葉と存在は、湖に落ちた雫の波紋のように、家族や友人、知人へと広がっていく――。命のまばゆいきらめきを描く感動と祝福の物語!(出典: 株式会社 河出書房新社HP) http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309025254/ 「物語のかたち」 この本では、ひとつの物語を章毎に複数の人の視点で書かれています。そのたびに切り替わるので、物語のか

          さざなみのよる(著者:木皿泉)

          大きな木(著者:シェル・シルヴァスタイン)

          大きな木 著者:シェル・シルヴァスタイン 訳者:村上春樹 初版:2010年 いつでもそこにある木。成長し、変わっていく少年。それでも木は、少年に惜しみない愛を与え続けた・・・何度でも読み返したい、シルヴァスタインのロングセラー絵本。(出典:あすなろ書房 HP) http://www.asunaroshobo.co.jp/home/search/info.php?isbn=9784751525401 「物語のかたち」 最初は、いま空から落ちてきたばかりの雨粒のような透明で小

          大きな木(著者:シェル・シルヴァスタイン)

          82年生まれ、キム・ジヨン(著者:チョ・ナムジュ)

          82年生まれ、キム・ジヨン 著者:チョ・ナムジュ 初版:2018年 ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかのようなキム・ジヨン。誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児…彼女の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。女性が人生で出会う困難、差別を描き、絶大な共感から社会現象を巻き起こした話題作!韓国で100万部突破!異例の大ベストセラー小説、ついに邦訳刊行。(出典: 株式会社筑摩書房HP) https://www.chikumashob

          82年生まれ、キム・ジヨン(著者:チョ・ナムジュ)

          羊と鋼の森(著者:宮下奈都)

          羊と鋼の森 著者:宮下奈都 初版:2015年 ゆるされている。世界と調和している。 それがどんなに素晴らしいことか。 言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。 「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」 ピアノの調律に魅せられた一人の青年。 彼が調律師として、人として成長する姿を温か

          羊と鋼の森(著者:宮下奈都)

          八日目の蝉(著者:角田光代)

          八日目の蝉 著者:角田光代 初版:2011年 逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか……。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。(出典: 中央公論新社HP) http://www.chuko.co.jp/bunko/2011/01/205425.html 「物語のかたち」 長方形の金属のような塊。厚さは5㎜ほどで薄い。でも、驚くほどにずっしりと重い。大きな塊を圧縮させたような密度と重さがあります。近づいて見ると、表面はつるつるしていてピカピカと光

          八日目の蝉(著者:角田光代)

          モモ(著者:ミヒャエル・エンデ)

          モモ 著者:ミヒャエル・エンデ 翻訳:大島かおり 初版:1976年 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語。時間に追われ,人間本来の生き方を忘れてしまっている現代の人々に,風変りな少女モモが時間の真の意味を気づかせます。(出典:岩波書店 HP) https://www.iwanami.co.jp/book/b254851.html 「物語のかたち」 丸くて、焦げ茶色、錆びた鉄の塊のようなかたち。表面全体に、長年の雨風にあたって痛んだよう

          モモ(著者:ミヒャエル・エンデ)

          TUGUMI(著者:吉本ばなな)

          TUGUMI 著者:吉本ばなな 初版:1989年 二度とかえらない輝かしい季節、少女から大人へと移りゆく夏に、ふるさとの海辺の小さな町ですごした少女たちの日々――。めぐりゆく時の切なさと、生きることの歓びを描く。(出典:中央公論社 HP) http://www.chuko.co.jp/tanko/1989/03/001775.html 「物語のかたち」 透明な金平糖のようなかたち。ツンツンといくつもの尖ったものが表面を覆っている。しかし、尖った先は丸みをおびているので、触

          TUGUMI(著者:吉本ばなな)