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ルールを「守れる」人から「書き換えられる」人になりたい ~企画メシ2021#1~

 ついに楽しみにしていた #企画メシ 2021が始まった。

 主催している阿部広太郎さんのことは、著書「コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術」を通じて知った。なんて温かくて、勇気をくれる本だろうと思って、少なくとも3周は読んだと思う。

 私は言葉を扱うことを得意と感じていない。自分の言葉は他の人と比べて、薄っぺらいと感じていたから。ただ、この本を読んで、「素敵」という言葉は安易に使わず、なぜ「素敵」と思うのか一度立ち止まって考えるようにした。すると、自分の感情を一段掘り下げて捉えることができるようになった気がする。それをアウトプットするまでの時間はかかるし、慣れてもいないけれど、言葉を扱うことには少し前向きになれた。

 そんなポジティブな影響を与えてくれた阿部さんに興味を持ったことと、本を通じて、企画メシを知ったことが今回参加した理由の一つ。他にも参加の理由や想いはあるのだけれど、また別途noteに書いていきたいと思う。

自分の解釈の狭さに気づかされた

 第1回目の講義の前に、事前に「自分の広告をつくる」という課題が出された。

 自分が取り組んだ「自分の広告」については、このnoteの最後に改めて振り返りたいと思うが、とにかく悩んだ。提出期限ギリギリまで、コピーの書き換えや抜き差しを行った。デザインもとても苦手だが、フォントの変更やサイズ調整、色味の修正など、できる限り、自分のできる範囲でこだわった。頭の中に汗をかくということを実感した。Dropboxに手放すときは、本当にこれで良いのだろうかとソワソワした。

 そして、企画生80人強の「自分の広告」を見て、圧倒された。私の場合は、嫉妬や悔しさという気持ちよりも、「そんな捉え方があったのか~!」や「そういう切り口できたか~!」といった発見感だった。そんな企画生の皆さんと一緒に #企画メシ 2021に臨めるワクワク感と、自分が埋もれかねないちょっとした不安感が入り混じっていた。

 ついに、第一回目の講義を迎え、阿部さんや平賀さん、企画生の皆さんと会えて、改めて熱量を感じた。
 私が、第一回目の講義、そして、改めて皆さんの「自分の広告」を見て、最も気づきとなったことは、『自分の解釈の領域の狭さ』だった。

 阿部さんが講義でお話されていた、企画で意識されていることで、「他の人と被らないように、密集地帯に行かない」というのがあった。

 自分も今回の「自分の広告」のお題で、同様のことを意識したつもりではいた。具体的には、80人強いる中で、自分のことを記憶に残してもらえるように、自分が伝えたいこと(=自分の名前+何を大切にしているのか)を、自分独自の視点や解釈と、自分の個人的な想いを掛け合わせて、表現に落とし込むようにしていた。

 ただ、自分が今回の課題で考えていた世界が、「“広告”を、一人で、1枚で、drop box内に提出する」の中に留まってしまっていた。正直、動画やGIF、HP制作、外部サイトへの誘引、ナレーション、複数人での共作、dropbox外でも届けるなど、全く頭の中になかった。

 今回の課題に対して、勝手に自分でルールを設けて取り組んでしまったと思った。「密集地帯に行かない」ためには、最初に与えられたお題に対しても、自分の視点で解釈して、拡張して、捉えていかなければいけない。

 つまり、多くの企画に埋もれないためには、目の前のルールを自分流に書き換えていくことが必要だと気づいた。

企画に対してフィードバックできるくらいの力をつけたい

 阿部さんが、第1回目の講義前日に一つひとつの作品に対して、良かった点と改善すると良くなる点をフィードバックした動画をあげてくださった。
 まず、普段お仕事がお忙しい中、全員にフィードバックしてくださったことに心打たれた。
 また、自分が課題に取り組んでいた際に、悩んでいたポイント(締めの部分)をズバリ指摘いただき、「やっぱりここはもう少しやりようあったな…」と改めて思った。私の中で、「『「ねじれ」を良い意味での「うねり」に』という言葉が残っていて、締めの部分は今後の企画でもっと頭に汗かいて取り組もうと思った。

 このフィードバックについて、自分がフィードバックする側になった時を想像すると、「改善すると良くなる点」は、現状では全く挙げられないと思った。
 この要因の一つに、講義でも阿部さんがお話されていたが、「自分のものさしが定まっていない」ということがあると思う。
 そのため、自分の好きなもの(広告に限らないあらゆるもの)を寄せ集めて、「なぜ自分はそれが好きなのか?」と向き合って、言葉にしていく訓練をしていきたいと考えている。

「自分の広告」を振り返る

43田中智也

 最後に、改めて「自分の広告」とどのように向き合って取り組んだか、思考の形跡を書き残しておこうと思う。長くなってしまったので、もし興味があれば、読んでもらえるとありがたい。

 まずは、課題に取り組む前に「自分の広告」とは何なのか、改めて考えてみることから始めた。

【私の「自分の広告」の定義】
「自己紹介」+「興味を持ってもらうための遊び心を加えること」


 そして、「自分の広告」の目的を定めた。

【「自分の広告」の目的】
自分の名前=田中(智也)と、自分が大切にしている考え(=好奇心旺盛で活発であること)を知ってもらうこと


次に、それを達成するために、やるべきことと、やらないことを決めた。

【やるべきこと】
・情報は極力最小限に抑える。
 →80人以上の広告を見るのはカロリーを消費するので、なるべく負荷を減らしたい。

・キャッチコピーで読んでくれた人の「?」を作って、ボディコピーで「なるほど!」とスカッとしてもらう。
 →まずは入口で興味を惹いて、ボディコピーまで誘導して、ボディコピーで頭や心の中を刺激することで、記憶に残してもらいたい。

・読んでくれた人に「クスっ」としてもらう遊び心を取り入れる。
 →読んでくれる人に対して、せっかくなので、少しでもポジティブな気持ちになってもらいたい。
【やらないこと】 
・背伸びは絶対にしない。
 -自分とかけ離れた言葉は使わない。
 -苦手なデザインを無理に凝ろうとしない。


そして、参考とする自分の好きな広告を考えてみた。

【自分の好きな広告】
「自虐広告」。食品業界に多い印象。
<例>
ピノやみつきアーモンド「また売れなかったらどうしよう」
コンビーフ「ぶっちゃけ肉より高い」
ガツン、とみかん「ガリガリ君より売れてないのに20周年」

 自虐広告はクスっとさせてくれるところが好きなのと、純粋に応援したくなって、買いたくもなる。楽しい気持ちにさせてくれながらも、広告としてしっかり機能しているところが良いなと思った。
 なので、今回の「自分の広告」に対しても、「自虐広告」の要素を取り入れることにチャレンジした。

 また、自分が好きな言葉があり、それも取り入れようと考えた。

【自分が好きな言葉と実践】
「最も個人的なことは最もクリエイティブなこと」
byマーティン・スコセッシ

 この言葉は、映画監督のマーティン・スコセッシさんという方の言葉で、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督が、第72回カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した際のスピーチでも話していたものである。

 私はクリエイティブには自信がない(自分をみくびっていはいけませんが…)と考えていたが、個人的なことをアウトプットすることはできるので、とても勇気をもらえる言葉だと思った。
 今回の課題も、なるべく個人的な想いをぶつけようと考えた。

「自分の広告」の戦略方針

 以上を踏まえて、「自分の広告」の戦略方針は以下の通り定めた。

【「自分の広告」の戦略方針】
■伝えたいこと
・「田中(智也)」と「好奇心旺盛で活発」
■伝え方
「個人的な想い」×「自虐」の要素を組み込む
 ※↑独自性を出すために最も重要な部分
・情報は最小限に。
・キャッチコピーで「?」をつくり、ボディコピーで「なるほど!」をつくる。
・遊び心を取り入れる。
・背伸びは絶対にしない。

「伝えたいこと」と「伝え方」の接着点からどう広げていくか


 方針が決まり、では具体的なアウトプットをどうするか。ここから思考が行ったり来たりを繰り返していたが、大まかな流れは以下のようなものだったと思う。

 まず、真っ先に思いついたのは、田中という苗字に対する小さい頃からの不満。これは個人的な想いであり、自虐的なものとして捉えられるため、ここを起点にしようと決めた。

 そこで、改めて、なぜ不満なのかを考えると、“ありきたり”や“普通に見られがち”なところがやはり好きになれない。

 さらに、なぜ、“ありきたり”や“普通に見られがち”なのかを考えた。その原因は、“田”の“中”という、映えなくて、限定的なエリア感にあると思った。

 ここで、改めて“田”の成り立ちに着目した。田は象形文字で、区切られた狩りのためのエリアや耕された土地を表しているらしい。(成り立ちすらも想定内で普通だ…)

 ただ、「区切られたエリア=区画」の考えは使えそうだと思った。そこで、4つの区画に着目した。自分は趣味が多い方で、すぐに4つ以上が思い浮かぶ。つまり、4つでは自分には足りないなと思った。

 そこで、具体的なアウトプットの方針として、『”田”の“中”というエリア限定感』と、『“田”の4つしかない区画』を、自分の「好奇心旺盛な活発さ」と対照的に表現しようと思った。

 このような思考の流れで、「自分の広告」の具体的なアウトプットのキーとなる考え方に至った。

 その他、細かい部分では、以下のような点を心掛けた。

 ・デザイン力はないにしても、田んぼっぽい色合いを目指した。
 ・同じ苗字を持つ企画生の田中亜希子さんや田中ゆき乃さんをはじめ、田中さんが不快に思わない表現をなるべく心掛けた。具体的には、あくまで個人的な想いであることを強めたつもり。。(もし不快にさせてしまっていたらすみません…)
 ・“名字”という漢字ではなく、”苗字”を用いて、“田”との親和性を高めた。
 ・「田中」という苗字は、キャッチコピーでの読み方の答え合わせとなるように、一番最後に配置した。(おそらく多くの人がキャッチコピーの初見で読めるのではと思いますが…)

最後に

 今見ても、私の「自分の広告」は質素な仕上がりだと思うけれど、これでも自分の頭の中ではかなり汗を掻いた。
 とはいえ、自分の立っていた土俵は、他の企画生の「自分の広告」を見ると、限定的かつ狭かった。他の企画生は、違う土俵を選んだり、広げたりしていた。自分のお題に対する解釈の狭さに気づかされた。

 お題を素直に受け止めるだけでは、みんなと同じ狭い土俵に立つことになるので、目立つことは難しい。お題を自分なりの解釈で広げて、自分流のルールに書き換えることで、他の人がいない土俵に立つことができ、埋もれない企画に近づけるのだと思った。

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