「ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~」ストーリー妄想

はじめに

このnoteは「ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~」の公演解説と、原作「理想の夫(結婚)」とを元にしたストーリー妄想です。原作の容赦のないネタバレ、殊にいわゆる「転」にあたる部分のネタバレを含みますのでご注意ください。

あらすじ比較

まず原作「理想の結婚」と「ザ・ジェントル・ライアー」の公演解説を比較した上で気になった点に注目したいと思います。
まず「ザ・ジェントル・ライアー」の公演解説がこちら。

オスカー・ワイルドの戯曲「An ideal husband(理想の夫)」をもとに、独身貴族の青年が、“理想の夫”とされる親友のスキャンダルを巡って、やがては真実の愛に辿り着く姿をユーモラスに描く。
舞台は19世紀末のロンドン。プレイボーイの子爵アーサー・ゴーリング卿は、友人であるロバート・チルターン議員の邸で開かれた夜会を訪れる。そこには、アーサーと関わりの深い三人の女性の姿があった。
かつて密かに惹かれ合いながらも、現在はロバートの“貞淑な妻”であるガートルード。顔を合わせればいつも喧嘩になる、ロバートの勝気な妹メイベル。そしてもう一人、財産目当てでアーサーに近付いたものの、更に良い条件の相手と結婚するため、アーサーとの婚約を三日で破棄した過去を持つ、ローラ・チーヴリー夫人だ。
今やウィーン社交界の花形となったローラが故郷に戻り、チルターン邸を訪ねたのには訳があった。それは政界一高潔な紳士と名高いロバートに、ある“切り札”を突き付け、彼女の不正に加担する議会演説を求めること。
「地位を守るため脅しに屈するか…はたまた、身を亡ぼしてでも正義を貫くべきか…?」
苦悩するロバートから全てを打ち明けられたアーサーは、彼の窮地を救うべく奔走することになるのだが…

これをまとめますと、

ガートルード:ロバート・チルターン卿の貞淑な妻。かつてアーサー・ゴーリング卿と惹かれ合っていた
ローラ・チーヴリー夫人:過去に財産目当てでアーサーに近付き、そしてよりいい条件の相手がいたため三日で婚約を解消した
メイベル:ロバートの妹。アーサーと顔を合わせればいつも喧嘩になる、勝気な性格

これが、「ザ・ジェントル・ライアー」における三人娘ちゃん達の説明ですね。実はこれ、原作の「理想の結婚」とは少し異なっているんです。どう異なっているかというとこちら。

ガートルード:アーサーとの過去のロマンスは特にない。アーサーは、昔からロバート夫妻の良い友人
チェヴリー夫人:かつてアーサーと婚約し、そして本当にアーサーを愛していた。婚約破棄はアーサーから言い渡された。アーサーに対して、自身と結婚するのであればロバートの不正の証拠を引き渡してもいいと交渉する
メイベル:素直にアーサーを好いており、アーサーも彼女を憎からず思っている。互いに軽口を言い合い、喧嘩をしている描写はない

ざっくりこんな感じです。なので、「ザ・ジェントル・ライアー」の公演解説と原作とでは、下記のような変更点があります。

①アーサーとガートルードのロマンスの追加
②アーサーとローラのロマンスの削除
③アーサーとメイベルが常に喧嘩をする仲になっている

これらの変更点を踏まえて「ザ・ジェントル・ライアー」のストーリーを妄想していきます。
私が考えたのは「原作との相違点がどのようにストーリーに噛んでくるのか」という点についてです。順を追って見ていきましょう。

①アーサーとガートルード

まず①について、原作ですと「親友ロバートに対する友情」が、アーサーが事件解決に奔走する動機だったわけですが、これにガートルードへの過去の愛情を乗せて、より宝塚らしく仕上げる感じかな、と思います。そして恐らく、互いを慈しみ愛し合う親友とかつて愛した女性の幸せそうな姿を見て、自身の近くにあった真実の愛とその相手に向き合う、みたいな感じにするのではないかな、と思います。

②アーサーとローラ(チーヴリー夫人)

②について、可能性として考え付いたことが二つあります。一つは「ローラとの過去のロマンスの設定をガートルードに移した」、もう一つは「公演解説ではネタバレになるためこう書かれているが、実は原作と同じくローラは過去にアーサーを愛しており、現在もそうである」という可能性です。前者ですと、主人公とのロマンスを無くすことにより、ローラを徹底して悪役・悪女に書くつもりなのかな、という感じですね。よりアーサー達に感情移入しやすくする、といった所でしょうか。
後者の場合ですと、ここで①のアーサーとガートルードのロマンスが効いてくると思います。つまり、「ローラはアーサーと婚約していたが、彼がガートルードに惹かれていることに耐えられず婚約破棄。その後、ガートルードはロバートと結婚した」という流れを作ることが可能になります。そうすると、ローラがロバートを脅迫する動機に「自身の不正の計画を成功させる」だけではなく、「過去に恋敵であったガートルードへの復讐」及び「再びアーサーと結ばれる」という二点が加えられます。こうすると、よりストーリーに重みが持たせられるのかな、と思います。

③アーサーとメイベル

続いて③についてですが、まず、アーサーの「真実の愛」の相手、これはおそらくメイベルで間違いないでしょう。原作でもそうですし、喧嘩ップルが最後にくっつくのは割と宝塚的なあるあるかな、と。あと田渕先生は喧嘩ップル好きそう(※「王妃の館」しか見てない人間の発言です)。そして、なぜメイベルに原作にはなかった「アーサーと顔を合わせればいつも喧嘩ばかり」という設定が加えられたのでしょうか。
これについての推測もとい妄想ですが、まず、二人は最初から喧嘩をし合う仲ではなかったと思います。何かしらの事件があって、喧嘩し合う仲になってしまったのではないかと。そして、その「事件」が何かと言うと「アーサーがメイベルに贈ったブローチを、メイベルが紛失してしまった」という事件です。突然具体的すぎる事件で「え、何?」という感じかもしれませんが、これは実際に原作で起きている事件です。と言っても、アーサーがブローチを贈った相手は違いますが。
原作では、「昔、アーサーが従妹に贈ったブローチが何者かに盗まれる事件が起きた。その事件から時が経ち現在、チェヴリー夫人がそのブローチを所持している。アーサーはそれを元に、チェヴリー夫人に『警察に通報されたくなければロバートを脅迫するのをやめろ』と交渉する」と言った流れがあります。つまり、このブローチがロバート脅迫事件解決の鍵になるわけです。そして、このアーサーがブローチを贈った相手を、メイベルに改変するのではないかと予想しています。このブローチを贈る相手をメイベルに改変するとどうなるのか。まとめますと、こうなります。

・アーサーとメイベルは素直に愛し合っていた
・愛の証に、アーサーはメイベルにブローチを贈った
・しかし、そのブローチはローラに盗まれる
・アーサーはメイベルがブローチを紛失したと思い込み、これをきっかけに二人は喧嘩をし合う仲になる
・時が経ち、ローラによる脅迫事件が発生
・事件を経て、再びメイベルへの愛を見つめ直す

③のメイベルへの設定に対する改変については、こういった流れにするためなのかな、と予想しています。

「ザ・ジェントル・ライアー」妄想

以上の点から、「ザ・ジェントル・ライアー」のストーリーを妄想するとこうなります。

かつてアーサーとガートルードは互いに密かに惹かれ合っていた。しかし、ガートルードはロバートと結婚し、アーサーはローラ(チーヴリー夫人)と婚約する。しかしローラはアーサーの心が自身に向いていないことに耐えられず婚約を破棄。その後、アーサーはメイベルと愛し合うようになり、メイベルにブローチを贈る。そのブローチはローラに盗まれてしまい、その事件をきっかけにアーサーとメイベルは喧嘩をし合う仲になる。
そして時は現在、失恋を経たアーサーは社交界でプレイボーイとして知られるようになる。そこにローラによる脅迫事件が発生。アーサーは親友への友情と、かつての思い人ガートルードへの愛情のために、事件解決に奔走する。そこで、ローラの思いやロバート達の愛し合う姿に触れ、自身の真実の愛に辿り着く。

以上が「ザ・ジェントル・ライアー」のストーリー妄想です。重ねて言いますが、妄想です。初めから終わりまで徹頭徹尾妄想です。ツッコミ所や矛盾が多々あると思いますが、暇と情熱を持て余したオタクの怪文書だと思って本気にしないでください。マジで。
そんなこんなでどうなるかが大変楽しみな、瀬央ゆりあ東上主演公演「ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~」は、2022年2月1日(火)初日です!!!!!!!!!!

参考文献

オスカー・ワイルド著、厨川圭子訳『理想の結婚』角川文庫、2000年
宝塚歌劇団ホームページ(https://kageki.hankyu.co.jp/sp/news/20210831_004.html)

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