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駅伝鉄 ふくしま駅伝を観に行く(2022年)

 今年の大会が週末に迫っているので、昨年の観戦記をアップします。
 
 2022年11月20日、東北本線矢吹駅に降り立ったのは、自分一人だったような気がする。ちょうど自分が降りたのが、階段の近くで周りに人がいなかったので、そう感じたのかもしれない。

矢吹駅


 郡山駅から乗った普通列車が矢吹駅に着いたのは8時7分、日曜の朝なので駅周辺は静かだ。改札付近には下り列車を待つ人が数人いる程度。駅前に立つと、タクシーが1台止まっているだけだ。
 スマホの地図アプリを確認し、現場に向けて歩き出す。

 ふくしま駅伝、正式名称は市町村対抗福島県縦断駅伝といい、平成とともに始まり、今回が34回目の福島県内の市町村対抗の駅伝大会である。この大会を知ったのは、20代半ばのこと、職場の親睦旅行先だった磐梯熱海温泉の旅館でテレビ中継を見たことである。地元の駅伝大会がテレビで生中継をしていることにカルチャーショックを受けたのだった。関東に住んでいると、駅伝中継というと、箱根駅伝だったり、ニューイヤー駅伝だったり、全国規模の大会くらいしか見ないので、県レベルの大会が生中継されていることに驚いたもので、この大会をきっかけに、ローカル駅伝に興味を持ったといっても過言ではない。一度現地で見てみたいと思っていたが、ようやくこの日叶えることができた。
 コースは白河市から福島市の福島県庁までの95㎞。鉄道は東北本線沿いになるのだが、なかなか線路に近いところを走らず、観戦場所選びに悩み、まずは矢吹をチョイスした。大会の公式ホームページには、各区間の詳細なコースが掲載されており、各区間を確認していたのだった。
 スタート時刻も7:45と早く、家からは始発電車に乗っても、スタート地点に行くことはできない。また、新幹線に乗り、新白河で東北本線に乗り換え、矢吹を目指すのがスタンダードな行き方だが、いい時間に新白河に止まる新幹線がなく、新幹線でいったん郡山まで行き、東北本線で折り返すという芸当で矢吹を選んだ。
 耳にはイヤホンをつっこみ、ラジオ福島の駅伝中継をききながらポイントを目指す。すでにレースは2区から3区にタスキが渡っている。この矢吹は3区から4区への中継所がある地点だ。
 何度かスマホを確認しながら歩く。初めてきた土地は、わずかな距離でもかなり歩いている感覚がするが、実際には駅から観戦スポットまで1㎞ほどだったことを後で理解することになる。
 ようやくという感じで、コースの県道が見えてきた。すでに警察官が交差点に立っている。地元の人の姿もちらほらと見られる。手にはスマホという姿が多い。地元テレビユー福島のYouTubeライブ配信を見ているものと思われる。自分もYouTubeにすればいいのだが、何となくラジオ中継に傾いている。
 中継所までは1㎞を切っている場所。選手の来るほうを見ると、ゆるやかにカーブしている。中継所の通過予定時刻は8:37となっているが、その時刻ごろに、選手の通過を予告する広報車がやってきた。助手席の女性がマイクをにぎり、沿道に案内をしている。白河からずっとしゃべっているのだろうか、と思ってしまう。先頭は福島市と1区からずっと逃げている福島市がここも先頭で通過しそうだ。

広報車がやってきた


 しばらくすると、露払いのパトカーが見え、それに続いてテレビ中継車が見えた。見たことあるロゴが中継車についているな、と思ったらTBSの車だった。地方局は、キー局などから車を借りて中継するのか、と納得した。
 先頭の福島市の選手が苦しい表情を浮かべながら通過していった。
 52チームが出ている今回の大会、先頭が通過してからも選手が続々とやってくる。この3区は男子選手が走る区間だが、ラジオ中継を聴いていると、中学生からシニアまで幅広い世代の選手が走っているようだ。
 福島市の選手は高校生と言っていたが、町や村の選手では中学生と思しき姿も見られたし、シニア選手の姿もあった。
 3区、レースの序盤ではあるが力の差がすでに出ていた。矢吹駅発9:01の電車に乗らないと、1時間ほど待たないといけなくなる。8:45くらいには駅に向かわないといけない。
 まだ全チームの通過が済んでいないが、8:45にこの場所を離れることにした。少し走りながら、駅へ。走ったおかげで6分ほどで駅に到着。距離を確認すると1kmほどだった。歩いた感覚ではそれ以上に感じたが、そんなものだったのか。
 このあとは福島へ向かう。フィニッシュ地点の福島県庁到着予定は12:37頃。電車で行っても十分余裕があるので、ここで駅伝観戦からそれて、開催中の福島競馬場へ行くことにしていたのだ。
 降りた時は閑散としていた矢吹駅だが、時間的に外出にいいころ合いなのだろう、電車を待つ人の姿が多くあった。
 福島行の普通列車に乗り、郡山を目指す。矢吹駅の時刻表には4両編成と書かれていたが、実際には6両編成の電車だった。なんとなく、郡山から乗った電車では? と思った。乗った721系はクロスシートもある車両で、もう20年近く前になるが、東日本縦断駅伝(青東駅伝)観戦した際の東北本線は701系がメインで、車両はロングシートしかなく、乗り鉄としては最悪な車両と思っていたが、721系にはクロスシートもあるので乗り鉄としてはありがたい。空いていたボックスシートに腰を下ろした。
 途中須賀川駅の手前で、自分の座る左側に先頭の姿をとらえることができた。ちょうど線路とコースが近い場所で、見ることができた。須賀川も観戦候補に考えていたが、やはり矢吹にしてよかったようだ。
 郡山について、乗客が一斉に降りる。福島行ではあるが、ここで20分ほど停車する。郡山目的のお客さんが多かったようだ。自分は新幹線ホームへダッシュ。予定の1本前の新幹線の発車ベルが鳴っていたが、乗ることができた。
 福島駅まで20分弱。新幹線はやはり早い。さっき郡山まで乗った列車はようやく郡山を出たころだろう。

福島駅でお馬さんに迎えられた


 福島駅前から、競馬場へ向かうバスに乗り換える。競馬場に向かうが、普通の路線バスで目的地は競馬場より先である。それでも、車内はおじさんが多く、やはり競馬場へ向かうバスだなと感じさせる。
 途中、バスは県庁のそばを通った。すでにフィニッシュのアーチがセッティングされていた。フィニッシュまでまだ2時間半ほどの時間がある。
 船場町というバス停がコース最寄りのバス停になりそうなので、チェックしておく。
 今回、福島競馬場を交えたのは、一度行ってみたい競馬場だったこと、ちょうど自分が好きな障害レースが組まれていたことだった。滞在時間は短いが、こういう機会がないと来られないので、よしとしよう。

目の前で障害レースを見られた


 福島競馬場で3レースほど観戦し、駅伝観戦に戻ることにする。
 やってきた福島駅行のバスに乗り、競馬場に向かう際に確認した、船場町の停留所で降車する。バス停の付近にはカラーコーンが置かれていて、バス停付近では観戦ができないようだ。大会ホームページでもフィニッシュ付近の入場が規制される旨が書かれていた。もうこの辺りは応援ができないエリアなのだろう。
 近くの阿武隈川にかかる橋を渡り、対岸の橋のたもとで最終区を見ることにする。この場所の反対車線は、10数年前に青東駅伝を見た覚えがある。大会5日目、仙台~郡山間の日で、仙台から東北本線を乗り降りしながら南下して福島駅で降りて、この橋のたもとで観戦をしたのだ。しかし、この時が最後の青東駅伝になってしまい、その後観戦できなくなるとは思わなかった。それ以来この場に立つことになった。
 ラジオを聴いてると、まだ最終区にタスキはわたっておらず、2か所の中継所でタスキリレーが行われている様子だった。
 しばらくラジオを聴きながら観戦ポジションをキープし、道路を眺めていると、遠くから追い越し車線をゆっくり走る黄色と白の二色塗りのトラックがやってきた。何をしているか最初はわからなかったが、近づいてくると、荷台からカラーコーンを下ろしていた。2車線の道路の片側1車線を規制して、コースとするようだ。慌てて右車線に進路を変える車の姿も見られる。

カラーコーンを置く作業員


 ラジオでは、最終区にタスキを渡しているところが聴こえてきた。ラジオはすべての中継所をカバーしていないようだ。ちなみに、テレビ中継は前半区間生中継だが、後半は録画で放映。その間はYouTubeでライブ配信を行っていて、全中継所をしっかりと実況入りの映像が見られる。県民がそれぞれの市町村で見ているから、すべてのチームを映そうという方針があるのだと思う。YouTubeの配信はここ数年見ているが、この方針は聞いたわけではなく、あくまでも個人的な主観だが、いいことだと思う。スポーツは勝ち負けのあるものなので、上位チームしか放映しないということもあるのだろうが、この大会はそれぞれの市町村を背負った代表が出ている。県内のテレビ局が制作しているので、そのすべてを網羅することに力点を置いているのだろう。
 ラジオ実況では、上位5チームは最終16区にタスキリレーをしたが、それ以外のチームは繰り上げとなったと伝えている。52チームが出ている今大会、交通事情があるとはいえ、タスキ渡しが数チームしかできないのはどうなのか、と思ってしまう。
 そういえば、いつの間にか曇ってきた。そんななか、先頭でやってきたのは、郡山市。独走でフィニッシュの福島県庁へ向かう。まさにビクトリーロードだ。

ビクトリーロードを行く、郡山市


 それからしばらく空いた。やってきたのはいわき市。また間が空いて自分が矢吹で見た時にトップだった福島市が3位で通過した。
 4位で通過したのは会津若松市。ここまで来たチームは、いずれも優勝経験のあるチームだ。5位で二本松市が来たが、ぴったりと桑折町が付いている。桑折町の選手は白タスキ、繰り上げスタート組だ。以降は、繰り上げスタートをしたチームが続々とやってくる。

繰り上げタスキを付けた選手が続々と


 最終区は8.4km、一般選手が主となる区間だが、高校生やシニア選手の姿も見られる。繰り上げチームが続々と通過していく。駅伝なのでやはりタスキを受けてスタートしたかっただろうな、と思ってしまう。人口が少ない自治体は、走る選手を発掘するだけでも大変なのだろうと思う。公道を使うレースなので、交通規制に制限があるのは致し方ないが、なるべくなら多くのチームにタスキ渡しをしてもらいたいと思うのは勝手な外野の意見だが、考慮されるべきかと思う。
 長崎や大分、佐賀の県下一周駅伝では、交通規制の関係もあるのだろうが、区間を区切って、再スタートという方式をとっている。これを採用するのもいいかと思うのだが…。
 すべてのチームが通過し、船場町のバス停に戻ってきた。ちょうどやってきた福島駅行のバスに乗り込む。県庁前がちらっと見え、撤収作業が始まっていた。来年はどんなレースになるだろうか。おそらくライブ配信での観戦になりそうだ。帰りに名物の円盤餃子を堪能し、新幹線に乗り込んだ。

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