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芝生で動画を表示する研究をしています。【研究紹介】

こんにちは,Tonaliです.メディア装置をつくるクリエイターとして,筑波大学にて研究・創作活動を行なっているものです.ここ最近私は,街の景観を潤してくれる「芝生」に注目した研究を行っています.具体的には,芝生の動画表示ディスプレイ化を目指した研究です.

この研究,アカデミック領域ではすでに学会発表などを行ってはいるのですが,専門外の方に向けてこの芝生研究を説明するコンテンツを今までに用意していないなぁと感じていました.そこで今回はこのnote記事を通して,私がどのような夢を抱いて芝生研究を行っているのか少しばかり語ってみたいと思います.「へぇー,こんな研究もあるんだぁ」ぐらいの気持ちで読んで頂けたら幸いです笑

「芝生で「動画」を表示してみたい」という夢

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【芝生で動画表示?】

これまでにみなさんは芝生をじっくり観察したことありますか?芝生って一面緑色に見えても,よーく見ると場所ごとに色むら・グラデーションを確認することができます.真緑な芝生だったり,少しだけ黄色み要素がある芝生だったり,芝生はさまざまな顔を持ち合わせています.そしてこの芝生の色むらを駆使して,幾何学な模様やアートを芝生上で展開するムーブメントが見られています.例えば...

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【サッカーフィールドの芝生模様】

【芝生で写真を描画するアート】

このように芝生の色むらを利用した模様・イラスト・写真などの描画はこれまでにさまざまな方法で模索されてきましたが,これらの手法の多くは,一枚の静止画表示手法が中心でした.つまり,現代では芝生で動画を表示する光景はまだ誕生していないのです.そう考えるとそんな光景...

見てみたくないですか...?

数え切れないほどの芝生たちが互いに協力しながら自身の色むらを調整し,一つの動画コンテンツを表示する光景.けれども,人々はそれを当たり前のように芝生を動画表示端末として扱う世界線.まさにサイバーワールド.そんな世の中,素敵ではありませんか?しかし,芝生で動画表示を実現する研究はこれまで全くと言っていいほどありません.ですが,写真ですら表示できるすることができる芝生が,どうして動画を表示することができないでしょうか (反語). 私はまだまだ芝生の表示能力のポテンシャルの掘りがいがあると確信しています.

そのような好奇心と熱意から現在の研究テーマ「実世界における芝生の動画ディスプレイ化」に辿り着きました.これで少しは私の研究についてイメージして頂けましたか笑?

動画表示できる芝生は社会に何をもたらすのか?

これまでは私の研究に対するモチベーションのお話でしたが,動画表示できる芝生は,これからの情報社会において新しい価値を与えられると私は信じています.ポイントは「便利な情報技術」と「潤いのある自然景観」の調和です.

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【生活にあふれる電子看板たち】

現代の情報社会において私たちのスマートフォンは無くてはならない存在ですが,多様な情報を表示するディスプレイを看板として扱う電子看板も無くてはならない存在です.駅の時刻表を表示したり,ショッピングモールのお得な情報を提供したり,普段意識していなくとも電子看板は私たちの暮らしを豊かにする現在の情報社会の象徴の一つと言えます.そんな電子看板は今もなお活用方法が模索されており,公園や河川敷など,自然溢れる緑地空間でも電子看板を利用する動きが見え始めています.

しかし,電子看板として利用されているディスプレイデバイスを緑地空間で利用するには,自然景観に関する問題が生じてしまいます.

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【筑波山神社に実際に設置されている電子看板】

現在,電子看板として利用されているディスプレイは主に液晶ディスプレイやプロジェクタなどが挙げられますが,これらは人工物の見た目から緑地空間の自然景観を損ねてしまう問題があります.さらに,発光による情報表示手法も自然景観を害する要因となりえます.例えば,上の写真は私が筑波山神社へ赴いた際に偶然発見した電子看板です.このデバイスによって登山者は筑波山の魅力・つくば市の観光情報を確認することができます.しかしその人工的な筐体ゆえ,自然あふれる筑波山神社の景観を犠牲にしてしまっている現状があります.

つまり,このままの電子看板のスタイルのまま緑地空間で利用し続けると,緑地空間の利便性は向上するものの,緑地空間にとって重要な自然要素を犠牲にしてしまいます.

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【芝生に電子看板の展開 (傘素材: [*])】

この問題を解決するために芝生の動画表示機能の登場です.これまでの液晶ディスプレイとは異なり,芝生は自然景観を構築する要素となり得ます.そのため,芝生による動画ディスプレイは,景観の緑を維持しながら情報をユーザに提供することができます.イメージが膨らみやすいように上の画像を用意しました.これは私が3Dモデリングソフトを用いて作成したもので,芝生の動画表示ディスプレイによる天気予報アプリケーションです.従来のディスプレイデバイスとは異なり,自然景観を保った情報提示を動画を交えて行えるようになります.

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【タッチ操作を利用した芝生の新しい使い方】

さらに,この芝生のディスプレイにタッチ操作を加えることで,芝生の活用幅がグッと広がります.上の図では簡単な例を三つほど載せていますが,我々がスマートフォン・タブレットを操作する感覚で芝生を操ることができれば,情報提示機能のみならず,エンタメ・スポーツ・アートなどのアプリケーションを景観を保ったまま緑地空間で展開できるようになります.ゆうなればこの芝生の研究は,情報技術が発展したSociety 5.0に向けた芝生の進化といえます.

芝生の夢,叶え始めています

【芝生の動画表示研究に関する現在の研究成果】

芝生を動画ディスプレイ化するという空想上のアイディアは,ちょっとずつですが実現してきています.上の動画が現在の研究成果ですが,芝生の芝丈を自動で調整することで芝生の濃淡を動的に調整できることを発見し,3x3ピクセルのシンプルな濃淡動画を芝生で表示することができました.これを最初見た時,自分の思い描いていた未来が今の時代に寄り添ってきた気分で心が躍りました.この成果は論文 (proceedings)にまとめ,グローバル向けに情報工学系の国際会議に発表する予定です.

しかし,芝生を動画ディスプレイとして利用するためにはまだまだ研究する余地があります.正確な濃淡制御,グラフィカルな動画表示,タッチ操作の実装などなど...解決すべき課題はまだまだ山積みです.

さいごに

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【芝生 @筑波大学春日エリア】

以上,私の研究テーマ「芝生の動画ディスプレイ化」について紹介してみました.この記事で少しでも芝生研究の魅力や,「情報技術と自然景観の両立」の価値観が伝われば幸いです.これからも研究成果ができ次第,アカデミック分野に加え,一般の方向けのコンテンツも用意していきたいと思います.ただ,研究の合間に作っていくのでマイペースに更新していきます.

それでは,Tonaliでした.

ノシ.

傘素材[*]: ぱたぱたアニメ館, https://pata2.jp/index.html

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