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神々の山、ヒマラヤの夜明け

カトマンドゥ空港に向けて徐々に高度を下げる飛行機の中から、私はヒマラヤ山脈を仰ぎ見ていた。飛行機よりも高く聳え立つ8000m級の山々。飛行機は山肌を横に見ながらゆっくりと下降していく。
沈められていくティーバッグからは、カップの縁がこのように見えたりするんだろうか。

36時間後、私はヒマラヤトレッキングルートにある簡易宿で目を覚ました。星空を背景に黒ぐろと浮かび上がるアンナプルナを眼前に、私は震えていた。ダウンジャケットを着込んでも寒い。ネパール人トレッキングガイドが横にきて、そっと私にミルクティーを渡してくれた。

じわっと空が白み、一瞬で山肌がピンクに染まる。宿の前庭が光に包まれマリーゴールドが黄色く輝いた。

神々の山、ここは天地創造の場だ。私たちは神が持つティーカップの中にいる。甘くて乳が濃い温かいネパールティーをすすりながら、山々が朝日に照らされて色を変えていくさまをじっと見つめた。

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