次期学習指導要領でどう表記? 学年別漢字配当表の「字体」について

本年も、よろしくお願いします。
国語の教育を中心に、気になったことをぽつりぽつりと書いていこうと思います。
なるべく誤解なく伝わることを目指します(が、がんばります……)。

雑誌『日本語学』(明治書院) 2016年11月特大号では、「手書きの字形を考える」の特集が組まれていました。
その中の論考の1つ、佐藤栄作「『字体』と『手書きの字形』」にて指摘していることがが気になっています。
それは、「学習指導要領」や「学年別漢字配当表」に書かれている「字体」とは、常用漢字表の定める「字体」と一致していないのではないかということです。

現行の「小学校学習指導要領解説 国語編」から1つ拾ってみると、

漢字の指導の際には,学習指導要領の「学年別漢字配当表」に示された漢字の字体を標準として指導することを示している。しかし,この「標準」とは,字体に対する一つの手掛かりを示すものであり,これ以外を誤りとするものではない。

とあります。学習指導要領解説では、学年別漢字配当表に示された漢字を「標準」の「字体」と定めていますね。「字体」の記載は、解説内の他にも見られます。

「字体」を、目に見える形で学年別漢字配当表に示していますね……。確か文化庁の指針の内容とは違うような……。


文化庁と文科省で、認識にずれ?

文化庁の「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」では、

字体
文字を文字として成り立たせている骨組みのこと。同じ文字としてみなすことができる無数の字の形それぞれから抜き出せる,形の上での共通した特徴とも言える。(後略)
字形
字体が具現化され,実際に表された一つ一つの字の形のこと。字形は,手書きされた文字の数だけ,印刷文字の種類だけ,存在するとも言える。字体は,様々な字形として具現化する。
通用字体
一般の社会生活において最も広く用いられ,今後とも広く用いられることが望まれる字体として,常用漢字表がそれぞれの字種を示すに当たって採用し,現代の漢字の目安としているもの。

と定義づけています。

「字体」は、その字をなす骨組みのことあり、どういった漢字の形が「字体」であるのかを明示していません。
つまり、学習指導要領解説で「標準」の「字体」として説明していることと矛盾しています。
「字体」は骨組みなのに、完成形が掲載されているのではないか、と。

では、学年別漢字配当表の「標準」とされた「字体」が指針での「字体」でないとすると、どこに属するのでしょう?
教育上の「通用字体」のようなもの? ということは、「標準」ではなく「目安」なのでしょうか。それならば常用漢字表との兼ね合いはどうするのか……。
それとも、単純に「字形」の1つと考えるべきなのでしょうか……。

うーん、わからないですね。。

佐藤氏は、学習指導要領での「字体」表記は、常用漢字表制定の以前からの記載が残ったものであると説明したうえで、

文科省関係者が今でも「常用漢字表」以前の文言にこだわっている(あるいは十分に理解していない)のであるから、現場の先生方、児童や親御さんたちに「常用漢字表」の字体の考え方が伝わっていないのも当然である。

と指摘しています。そうですよね……。

次期学習指導要領の解説が出るのは、半年後、今年の6月くらいでしょうか?
次期学習指導要領では、文化庁指針に合わせて、文科省が学習指導要領での「標準字体」の記述を変更するのか、文科省と文化庁の連携がしっかりとされるのか、気にかかります。

ちなみに、文化庁指針発表後の去年3月の国会答弁にて、馳前文科大臣は

文部科学省としては、引き続き、児童生徒が、標準的な字体による漢字習得を通じて、生涯にわたる漢字学習の基礎を培うとともに、将来の社会生活における円滑な漢字運用の能力を身に付けていくことができるように、取り組んでまいりたいと思います。

と述べています。
指針が出ても、なお「標準的な字体」と述べていますががが。。

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