国籍を変えるということ。

もうタイトルとタイミングからして蓮舫さんの件についてだということはお分かりかと思いますが、その件です。

冒頭述べさせていただいた方が良いかと思いますので、先に。この記事の中身は論理的な問題整理や法的観点、結論などをするわけではなく、「他の国にルーツを持ちながら、日本に生まれ、日本に帰化しようとしている人間」がこの問題をどう見ていたのかということをお伝えできればと思っています。
ですので、非常に感覚的で、そのような立場に陥ったことのない人には理解しにくい部分があることはご了承ください。

今回の一件は、蓮舫さんが17歳の頃に日本国籍を取得することになり、台湾籍を離脱しに父親と共に手続きにいったが、結局は台湾籍が残っており、二重国籍のまま、政治家になったという次第だそう。

日本には58万人ほどの重国籍者がいるということで、人口の0.5%未満の割合からよくぞ720分の1の国会議員(しかもかなり人気の)が出たなという呑気な感想はさておき。

さて、僕の話をすれば、僕は大阪生まれの在日韓国人です。この春に大学院を卒業しまして、司法修習生になるために今は無職という身分です(名誉のためにいえば、ロースクール卒業して、司法試験に現役合格しても、12月までは皆無職なんです。笑)。そして、学生時代から政治関係の事業や活動をさせていただいたこともあり、この国で自分が何ができるのかを考えたときに、将来いつか政治の世界に関わるかもしれないと考えて、帰化をしようと決意しました。

とまぁ、数行で書いたものの、「帰化」というのは非常に大きなものでして。
もはや25歳の今ですら記憶が少し曖昧なのですが、確か20歳のころに、日本と韓国の国籍どちらを取ろうかの選択に迫られ、「自分の意思で」韓国の国籍を取ることにしました。
ここであえて「」書きにしたのには理由があるのですが、当時はまだ一介の学生で、国籍そのものに対する価値観もそれほど強くなく、「たぶん日本人女性と結婚するから、子供が生まれたときに自分のルーツとして日本と韓国の2つがあるんだと知って欲しいから、僕は韓国籍でいよう」くらいに思っていました。

ですが、その後歳を重ね、同世代の投票率の向上のための事業をしたり、政治家さんと若者向けのイベントを作ったり、主権者教育に関わらせていただいたりしていく中で、自分はいつか政治の世界に何らかの形でかかわるかもしれないと考えるようになったんですね。
それから改めて「社会の前進に寄与したい」と自分が考える、そのときの「社会」は僕にとっては「日本」という括りがまずあるなということに気づいた。
だったら、帰化するべきだと。

そんなこんなで、ここ1〜2年は「国籍ってなんだろう…」と問い直す機会が増え、そして今回の蓮舫さんの一件でガツンと再考させられました。

留学中には4つパスポートを持っている友人もいて、じいちゃんばあちゃんのアイデンティティと両親のアイデンティティと自分のアイデンティティをすべて象徴する国籍を持っている人もいた。

Brexitに多大に貢献したボリス・ジョンソンなんて未だにアメリカ国籍持ってるらしいし、フランスのマニュエル・ヴァルス首相はスペインから帰化した人だったり。

でもね、日本には日本の価値観があるから、それはものすごく尊重しないといけないと思うのも確かなんです。「海外がこうだから」とか「他国で認められているのに」論は、非常に外在的な批判で終わってしまう。

自分の心が帰属する先として1つの国しか選べないということは、東アジアの小さな島国が行きていく上で、そして1億人以上の国民が幸せに生きていく上で大切なことなのかもしれない。
だったら、それは心から尊重して、自分がこの国で生きていくと思うなら、ここに住む人たちを幸せにしたいと思うなら、1つだけ、日本という国を選択しようと思うんです。

だから、生まれながらにして日本人である人たちよりも、ひょっとしたらこの気持ちは強いのかもしれません。「私は日本という国で生きていき、この国で生きる人たちのために生きます」という気持ちは。

僕は今回の件で、「そうか、離脱する手続きもいるんだ」ということを思い出し、ぜっっっっったいに帰化したその足で離脱しにいきます。二重国籍であることがこれだけ騒がれて、わざと二重国籍なんかにしたくありません。でも知らない間になっていた人がたくさんいそうで。国籍法なんて帰化するときに読まないし、ましてやほとんど言語も知らない台湾や韓国の法律なんて知るはずもないので。

蓮舫さん一人にこの問題を背負ってもらってしまったことが本当に悔しく、彼女が受けた誹り、罵りは僕だったらたぶん外に出れないほど。
小学生の頃、いじめられちゃって学校に行きたくなかった日を思い出しました。生まれてきたことが罪なのか、なんでこんな風に生まれなきゃいけなかったんだ。

僕が帰化して、日本人の女性と結婚したら、子どもたちはきっとそんな感情も持たなくて済む。政治的な意見も言わせてもらえるかもしれない。
だけど、それでも子どもたちには伝えようと思います。こういう政治家がいて、この政治家さんたちが作ってくれた社会に僕や君たちがいて、だからいま君たちの周りにはたくさんの国にルーツを持つ人たちが笑顔で生きれる日本があるんだよと。

日系人が壮絶な差別、非道な扱いを受け、しかし力強く生き抜いたカリフォルニアで書いてみました。

図書館が無料であるように、自分の記事は無料で全ての方に開放したいと考えています(一部クラウドファンディングのリターン等を除きます)。しかし、価値のある記事だと感じてくださった方が任意でサポートをしてくださることがあり、そのような言論空間があることに頭が上がりません。