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せがれと児童館へ

毎週水曜日はせがれと過ごす。

飯を食いに行くか?と聞くとせがれは首を縦に振って「うんー」と答える。最近覚えたやり方だ。こちらの言っていることは大体わかるのに話せる言葉が少ない。結構もどかしいだろう。

近くのビジネスホテルのランチバイキングに行く。2歳児は金を取られないので二人で千円だ。サラリーマンで混む時間を避けて11時半に着いたが代わりに老人で賑わっていた。せがれはディナーショーの歌手のように各テーブルを回って愛想を振りまく。反応があったりなかったりする。老人が全員子供に優しいわけではない。若者や中年と同じで人によって違う。

席に戻るとおれがとってやった飯に目もくれずジュースばかりを飲んだ。「飯を食わないとプリンは食えないぞ」というとあわててそばを食って咳き込んだ。やはり言葉を理解しているらしい。カラメルだけ器用に残してプリンを食べ終えたので自転車に乗って児童館へ向かった。

児童館は時が止まっている。高度成長期にそこら中に作られてから粛々と子供を送り出し続けてきた。子供は入れ替わるが児童館は変わらない。漫画コーナーにはドカベンとタッチがおいてある。おもちゃは黒ひげ危機一発だ。もしかしたら壊れる度に新しい黒ひげを買っているのかもしれない。

せがれは他の子のおもちゃを奪ったり、叫びながら端から端まで何往復もしたり、無意味に絵本をぶちまけたりして楽しんでいる。大人だったらどれもアウトだが、ガキンチョなので職員に困った顔をされるくらいで済む。たまにおれが叱ると「はいー」と言う。サザエさんに出てくるなんとかというチビと同じ言い方だ。全くこたえていない。

平日児童館に来ているのは母親と子供ばかりでおれのようなオヤジはいない。毎日来てるのか、母親同士は顔見知りのようでガキどもが遊んでいる間に会話を楽しんでいる。おれには誰も話しかけない。おれも誰にも話しかけない。

しばらくすると韓国人の母子がやってきた。入る時に名前を書くのがわからないようだったので、おれが教えた。児童館は当然多言語対応などしていない。最近はこのあたりも外国人が増えた。異国で子供を育てるのは大変だろう。

ふとせがれを見ると韓国人の女の子に電車のおもちゃを渡していた。「どうじょー」と言いながら。女の子は恥ずかしそうにそれを受け取り、何か言った。せがれは首を縦に振って「うんー」と答えた。

#日記 #コラム #エッセイ #2歳児 #無職

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