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年中休業うつらうつら日記(2024年1月27日~2月2日)

24年1月27日

今日はいよいよレンタカーでない自分たちの車で初めての車中泊。
家の敷地内に車を置いててくれるGくんはすでに何泊かの車中泊をこなしているらしい。
内装をどうするかは使っている間にだんだん決めて行こう、となっているが、今のところ、Gくんが部屋で使っていたベッドの金属フレームとマットレスを持ち込んでいるそうだ。

前夜のZOOMにはまったく現れなかったところを見ると、早々に寝て、明日、我々の家まで車を持ってきてくれるつもりなんだろう。
たった今のレイアウトでは2列目座席が使えないため、乗員は最大2人まで。
せっかく車中泊帰りに家まで来てくれるんだからGくんも一緒に行こうよ、とせいうちくんが食い下がったが、「3人は座れない状態。というか、むしろこの状態だとどうか、まずはそこを体験してきてもらいたい」と言う。
彼は我々に車を渡したら電車で埼玉まで帰るのだそうだ
お世話になっちゃうなぁ。

で、きちんと昼頃に都内に戻ってきて、車の受け渡しをした。
彼が中古屋で買ったクーラーボックスも寝袋も置いて行ってくれるそうで、ほとんど何の心配もない。
我々は連結して2人で入れる寝袋を買ったが、気温的には5℃ぐらいが相手の仕様らしい。
Gくんのはちゃんとしたメーカーのもので、-15℃の気温に耐えるそうだ。
不安だから布団を1枚持って行こうかと思っていたが、Gくんのを広げて掛ければ何の問題もなさそう。
それ以外にも突っ張りポールを使って目隠し用のカーテンを作ってくれたり(「前から使ってるのを持って来ただけだ」とツンデレなGくん)、そもそも1人でベッドのマットを積み込むのは大変だっただろう。
本当にいろいろやってもらえてありがたい。

ただ、我々は彼のように通ったルートをずっとGoogleさんに追跡させて後から旅行マップを作ったりしないしできないから、彼としては「つまらんやつらと組んでしまった」と後悔の念しきりだろう。
Gくんと別れて出発してしばらくしたら「位置情報の共有の実験をするから、Googleマップに認証させてくれ」と言われてもだな、何をどうしていいか全然わからないのだよ。
あちこちいじっていたら、Gくんから「見えた見えた」とメッセ―ジ。
こちらからはどうも彼が電車で帰ってるルートが確認できないのだが、彼が自宅に着く頃にはなんとか彼の所在を知ることができた。
Googleマップを常時使っていると恐ろしい勢いでスマホのバッテリーが減っていくので、この辺で接続を切る。

Gくんの大型汎用のバッテリーも借りてはいるが、すでに彼自身の車中泊でほぼ空っぽになってるそうだ。
一応自分たちの日常用の予備電源は持ってきているので、1泊なら十分もつだろう。
それに、Gくんに「ケチケチせずにつないどけ。車のハンドルの下あたりにUSBコネクタがあるからそこから電気をとればよろしい」と言われて初めて車にも電源機能があるのだと気づいた。
Gくんのおかげでどんどん賢くなっていく。
それでも全ルートを表示したり次に停まる道の駅をさっさか調べたりは到底できないんだが。

昼過ぎの出発だが、それほど混むということもなかった。
途中のコンビニでサンドイッチや飲み物買ったりして、中島みゆきをかけっぱなしにして快走した。
今回は秩父の温泉つき道の駅に泊まって、明日の朝早く出て群馬東の方の温泉にさらに入ろうという計画だったが、いざ走り出してみるとちょっと無理な行程かなぁと思えてきた。
それよりGくんちに朝早く車を返しに行って、9時ごろから朝カラしようじゃないか。
そう伝えたら、「まあ走り回ってもガソリン食うだけだから、カラオケしてもいいけど、よくよく朝早く出ないと9時にこっちには着かんぞ。もっと計画性を持て」と叱られた。でもカラオケは決まった。

せいうちくんはすっかり浮かれてしまって、しきりに「楽しい?楽しい?僕はすごーく楽しいよ!」と喜んでいる。
奇妙な形ではあるが、もう一度車を持つとも思わなかったし、まして車中泊用にベットマット積み込んだ車で走るとは思わんかった。

Gくんが工夫してくれたおかげでベッドのフレームの足元に荷物を置くことができて、スペースの活用になる。
ただ、これだと3人座れないそうだし、たぶん3人が寝ることもできない。
私としては広い荷台部分を全部底上げしてフロアを作る方向で行きたい。
ま、Gくん次第だな。
今は改造に励むヤンキーのようにあれこれやり倒してくれてるようだから。

せいうちくんの大好きな山の中を抜けて走りながら、Gくんと友達になれて本当に良かったこととか「ここまで40年、ずっと一緒にいたね。これからはもっと一緒にいようね。車中泊もGくんといっぱいしたいし、僕がヒマになったら2人でも行こうね」と話したりする。
大きなキャラバンにビビっていたが、実は昔に乗っていたノアと車幅は変わらない、ただものすごく後ろに長いだけ、と聞いて少し安心した。
それなら私もハンドルを握ることができるだろう。
酒が飲めないので常に素面のドライバーは意外と重宝するかもよ、車中泊中に追い出されて移動を余儀なくされた時なんかに

さすがに出発が遅かったので、秩父の道の駅に着いた時はもう16時半だった。
せいうちくんが大好きな「郷土資料館」的なものがあったのだが、16時半で閉門してしまうのだった。
ギリ間に合わず、くやしい。

とりあえず明るいうちに寝床を作っちゃおう、と荷物をあちこちに片づけ、ベッドマットの上に我々の中古寝袋を2人入れる袋にして、その上からGくんの高機能寝袋を広げて掛ける。
うん、いい感じじゃん。あったかく寝られそうだよ。
なぜか屋根のある駐車場が1列あり、当然少しはあったかいだろうとそこに停めた。
しかし不思議なことにその並びに停まっている車は、かつて何度も見たバリバリの「車中泊やる気満々」なタイプではなさそうで、5人乗りで、カーテンもついてない。

施設付属のファミマでカフェラテを買って一服する間にすみっこの方に川に面した小さな駐車場があるのを発見し、行ってみたら、なんとキャンピングカーややる気のあるワンボックスカーばかり4、5台停まっている。
あわてて車に戻って、せいうちくんに、
「あそこだけ車中泊可なのかなぁ。この屋根の下にいる車はみんな温泉に入ったら帰っちゃう人々なのかも」と告げると、「うーん、わかんないねー。不思議だねー」と首をかしげるのみなので、
「口コミとか、ググれや!」とちょっと強く言ってしまう。
なんでもググってみれば何かがわかるんだよ。

で、調べた結果、特にどこが取り締まり対象とかいうことはなくて、川べりに人気があるのは野趣あふれる眺めと、我々が停めたあたりは利便性を考えてトイレの近くだったのだが、いささか匂うらしい。
この寒いのに川っぺりは寒いだろう、トイレの匂いは全然気にならないし、むしろ歯を磨く時とかに遠くまで歩くのが面倒、とそのままにしておいた。偉大なるかな、口コミ。
温泉が19時までなので17時から温泉に入り始め、18時半に休憩所で会おう、と男湯と女湯に分かれる。
髪を乾かしたりするとは言え、1時間半も風呂に入ってられるかな。

中は古典的ないい温泉で、不思議な点と言えば内部に階段があって、岩風呂とサウナに用がある人は素っ裸でその階段を上り下りしているのだった。
私は最初にひとつしかないが大きな1階の湯船のお世話になり、それから地下の岩風呂とサウナのお世話になった。
サウナがあるのはとってもポイント高いんだけどさ、水の浴槽がないんだよね。
サウナのあとの冷水浴がないとしまらないと言うか、「整わない」。

それでものんびりガラス窓の外の森を見ながらの岩風呂はよかった。
どうしても人は上階にたまりがちなので、ドライヤーとか混んでるようだったら地下を使った方がいいかもな、と思ってはみたが、上もけっこう空いていた。
なにより、素っ裸で階段で人とすれ違うという違和感についに慣れることができなかった。

髪を乾かしても、共同浴場に備え付けのリンスインシャンプーは非常に髪が傷む。
持って来た自前のを使えばよかったのだろうが、「うん、ある」と思って持って入らなかったのだ。
めずらしく私より長湯をしたせいうちくんが休憩所に戻ってきた時、私は謎の「足を突っ込んでぐりんぐりんとマッサージしてもらう」機器にうっとりしていた。
100円はかかるのだが、かまわないほど気持ちいい。
せいうちくんにも勧め、彼も「ふわあ」とか言っていた。
家に帰ったら足の筋肉に電気流してビリビリするやつをもうちょっと真面目にやるかな。

車に戻り、充電式の室内灯をいくつか点灯してカーテン等は閉める。
さあ、晩ごはんを食べよう。
ここに来るまでの大型スーパー(こういうのが大好きなんだ、我々は)で夕食は調達してある。
私はけっこう見かけのいいウナギに惹かれて980円の鰻弁当を買ってしまったが、せいうちくんは腹が立つことにこういう時に「厚揚げ2丁」「温泉卵3つ」となんだか修行僧のような食事をするのだ。
私との体重に差をつけたいという見え見えな動機にぷんすかしながら食べたウナギはほぼゴムのようで、「980円!」と天を仰いでしまったよ。
旅先であまり店に入ったり名物を食べたりしないでコンビニやスーパーで済ませている我々は、いったい何をしに来ているのだろうか。

早々に歯を磨き、膝やふくらはぎ、腰などにいつものシップを貼ってもらい、睡眠薬をもらって、なんと220時就寝の健全な旅だ。
「車中泊ってなんであんなによく眠れるんだろう?」と家のフランスベッドクイーンサイズをこよなく愛しているはずの我々も毎回不思議に思う。
今回も、少しiPad Proで読みかけの田中芳樹「アルスラーン戦記」を読もうと思ったんだが、うつぶせで状態を少しでも上げるとその分寝袋に隙間ができて寒い。
外に出してる腕も冷たくなる。
荒川弘がまだ途中までしか描いてないので辛抱たまらなくなって原作に手を出したわけだが、久々に読むとやっぱり面白いじゃないか、田中芳樹。
そう思いながらも私としてはかなりあっという間に眠ってしまった。
車中泊は不眠症に効くのか?

やはり、他に何もないのがいいのかもね。
家にいたらついついテレビ観たりパソコン見に行ったり飲み食いしたり、いろんなことをしてしまうんだけど、ここでは清々しいほど「寝るしかない」のだ。
せいうちくんの体温であったかくてよく眠れた。
夜中に暑すぎて寝袋のファスナーを少し下ろした記憶がある。
でもそれだけ。

24年1月28日

朝の5時に起きて、適当に片づけたり洗面をしたりしてから出発。
このまま一路Gくんちに戻ろう。
やはり川っぺり以外には車はほとんどおらず、あそこが知る人ぞ知る車中泊スポットなんだなーと感心した。

せいうちくんは「夜中にとても寒かった」と言っていた。
どうやら私が寝袋のファスナーを開けたのがいかんかったらしい。
「寒くて目が覚めたのですぐにファスナーを閉めたけど、キミは全然気づかないでぐっすり寝ていた」とのこと。
体感温度の違いは如何ともしがたいからなぁ。
今後Gくんをも相手取って、私の「暑い!」という訴えは難しいかもしれない。

私も少し運転させてもらい、思ったほど怖くなかった。
片手にファミマのラテのカップを持ったまま直進の車を一応警戒しつつも「行ける」とハンドル右に切って、切り切らなくて横断歩道上でいったん止まってしまうドライバーの運転に乗っているせいうちくんの方がよっぽど怖い思いをしてると思う。
いやぁ、ハンドルの径が小さいもんだから、曲がり切らなかったのよ。
後ろは長いしねぇ。

特に戦力外通告を受けることもなくしばらく運転して、せいうちくんの好きな山道に入ったので運転交替。
朝ごはんに私はまたサンドイッチを買っているのに、ビーフジャーキーみたいなものしか食べないせいうちくんがだんだん憎くなってきた。

それでもこんなにゆっくりと2人で時間を使うのは久しぶりで、家ではドラマを観ちゃうか寝ちゃうかのどちらかだからね。

長いこと、この人と一緒にいるなぁ、当たり前なんだろけど、ずっと一緒にいられてよかったなぁ、とやたらにありがたくなる。
向こうもどうやらとてもありがたがっているらしい。

思わず、「老後にお遍路さんとかしてみたくならない?」と聞くと、
「山伏信仰や霊場には興味あるけど、全部のお札を集めて歩こうとは思わないな。そもそもキミにはそんなの無理でしょう」と言われてしまった。

Gくんちに近づいてきたら(「このへんの景色を見慣れてきちゃった、ってのも問題は問題だ」とせいうちくん)「位置共有の実験をもう1度しよう。1時間で勝手に切れる設定になってるから」と何やら送ってきた。
設定すると、「おお、見えた。近づいてるな」と喜んでいた。
結局カラオケ設定時間よりも少し早く着いてしまったぐらいだ。早朝の威力。

寝袋は次の機会まで預かってもらうことにして荷物を減らし、飲まなかったペットボトルのお茶とか開けなかったポテチの袋とかいろいろ置いてきた。
要するにゴミを始末させてしまったわけだ。すまん、Gくん。

両側にほぼ5センチぐらいの隙間だけを残してキャラバンを自宅の庭に駐車したGくんの腕前に感心した。
今後、Gくんがいない時に返さなきゃいけなくなったらどうしよう。
せいうちくんも私もブロック塀をガリガリやらずにあそこに収める自信はないぞ。

カラオケ屋に向かう途中のひと気のない路上で、私はいきなりすっ転んだ。
真正面に向かって、つぶれたカエルのように。
とりあえずボトムズは無事だし、大したことないだろうと思っていた。

しかし十年一日のポルノグラフィティ「メリッサ」を歌っていたりしたら、なんだか膝にスゴイ違和感がある。
せいうちくんがめくりあげて見てくれたが、なんと、幅2センチほどの深い切り傷が膝小僧にできていた。

切り傷と言うか、ぱっくり割れた感じ。
出血もややひどかったが、黒いボトムズが吸っていて、全然気がつかなかった。
せいうちくんが小間物キットからバンドエイドを出して、ひととおり血を拭ったあとに貼ってくれた。
「これ、医者に行った方がいいかなぁ」
「まあ今日は休みだから、明日、行けたら行って。ワーファリン値を下げ始めてる時でよかった」と胸をなでおろすせいうちくん。

マイマイクスタンドを持ち込んだGくんはこないだ私が歌った「山谷ブルース」をちゃんと練習してきて歌ってくれた。
彼が歌うとすごくよく似合う。いよっ、プロレタリアート!

全体としては中島みゆき率の高いカラオケを3時間楽しんで、1人440円。
ガソリン代と一緒に後でPayPayで払うことにして、今日はお別れだ。
再来週の次の車中泊が楽しみだね!
また車の内装は変わってるのかな?

しかし、我々もあんまりお客さん気分で何もかもGくんに押しつけていてはいけない。自分たちでも考えよう。
どうもGくんは工作の結果の判断はしてもらいたそうだが、工作するべきかどうかは自分の気分で決めたいようにも見える。
だんだんちょうどいい距離が見つかるだろう。

電車で家に帰って、駅前で日常生活で食べる1週間分の食料を買って、かなり荷物をたくさん抱えてヘロヘロになってしまった。
せいうちくんはすぐに窓を開けて掃除を始める。
荷物の整理も。
「とりあえず、休もうよ」と言っても、
「やるだけやって、バタンと倒れたい」のだそうだ。
倒れざまは見届けてあげるから、心置きなくどうぞ。

風呂に入ってみたら、膝の傷口はやはり深そうだ。
転んで擦りむくぐらいはよくあるが、切れるというか割れるというか、こんなのは初めてだなぁ。
運が良ければ縫合してもらえるかもしれないから、明日は整形外科に行くことにしよう。
もちろん今夜は18時からの大河ドラマを観て寝ちゃうんだよ。
あー、疲れたけど楽しかった。
せいうちくんとなんでもないおしゃべりをしてるのは本当にいいものだね。
Gくんが入った時の化学反応も大好きだが、今後お互いに自分たちのために車を使うこともあり、と決めて買った共有車だ。
息子たちがカナダに行く前に富士五湖あたりの温泉にでも行くかなぁ。
もちろん車中泊じゃなくて温泉旅館に泊まるけどね。

あ、そう言えば、息子が村上春樹の「街とその不確かな壁」をずっと読みたがっていて、高いから文庫になるのを待つと言ってたんだが、せいうちくんも実は読みたいらしい。
「じゃあ読めばいいじゃん。まず息子んとこに送ろうっと」とAmazonの宛先を息子の住所にして送っておいた。
大変感謝された。
今度遊びに来る時に持ってきて、と見え透いたエサを巻いて来訪を待つ親心なのだ。

24年1月29日

とても疲れているから睡眠薬のまずに眠れると思ったのに、結局朝までうつらうつらと少ししか眠れなかった。
せいうちくんは夜中に「戦争なので挙国一致して食料を確保する」という仕事を受ける夢をみて、水耕栽培でピーマンを山のように作れと言われたらしい。
「歴史を知っているから、この戦争は負ける、ピーマン作っても勝てない」と思ったそうだが、特に敗戦の進言はしなかったそうだ。
「そんなこと言うとつかまるから?」
「まあ、そう」
気持ちはわかるが、歴史がどうなるか知っていてもそれを変えることはできないんだなぁとしみじみ思った。
先の戦争で大量のピーマンを作った事実があったかどうかは知らない。

昨日転んだ時にぱっくり割れた膝の傷口を診てもらいに整形外科に行く。
ひと目見たドクターは「こりゃひどいね」と言い、「昨日の傷だから、もう雑菌が入っていて縫合はできない。本来は縫合したいところだけど」と消毒を念入りにして、「明日も診せに来て」と包帯ぐるぐる巻いて抗生物質を5日分くれた。
看護師さんが「当分お風呂は入れませんよ」と言うので、「膝の包帯にラップ巻くとかして傷をぬらさないように、髪ぐらいは洗えますか」と食い下がったが、「まああきらめてください」とつれない返事だった。

はいていたズボンの膝は全然破れてもいないのに、中身の膝だけが筋繊維に添って割れるとは、はずみってのは恐ろしいものだ。
1泊の車中泊を無事にこなしたというのに、帰りに寄ったカラオケでの道で転んでケガを負うとは、やはり「高い木から降りる時は8分目まで降りた時が一番危ない」というやつだろうか。
せいうちくんが買ってきてくれた「傷をじゅくじゅくさせて治りを良くする」最新の絆創膏もとりあえず無駄になってしまった。

24年1月30日

昼間に整形外科にまた行く。
「あ、化膿はしないで済んだみたいだね」とドクターは言って、消毒してガーゼあてて看護師さんが包帯巻いてくれた。
「昨夜はちょっと右足が熱を持っていました」と言っておく。
本当は37.2度の熱が出たことを言った方がよかったんだろうが、今、熱があるというと病院を追い出されちゃうかもだからなぁ。

「明日は休みだから、あさってにもう1回診せに来て」って、何回続くんだろう。
抗生物質を5日分のみきるまでかしらん。

大好きなマンガ家さんだった芦原妃名子が亡くなった。
自殺らしい。
とても面白かったマンガ「セクシー田中さん」がドラマ化されたことに端を発する政策側とのトラブルがあった模様。
我々も気に入って観ていて、
「あんなに面白かったのに、最後はちょっと変だったねー」
「何も起こらなかったかのようだったね」などと話し合っていたのだが…

多くのファンが悲しんでいる。
ファンならずとも、表現者に降りかかったこの不幸に、大勢が怒りややるせなさを感じている。
もう「セクシー田中さん」は完結しないのか。

24年1月31日

息子妻Mちゃんのお母さまから寒中見舞いの葉書をいただいた。
「今年は2人がカナダで1年暮らしたいということで、心配ではありますが、一度きりの人生悔いのないようにと応援したいと思います」とあった。
Mちゃんのお母さまに伝わっているということはもうかなり本決まりになってるんだろうから、きっと予定通り3月から行くんだろう。

息子の性格を我々を通してよく知っているGくんなどは、「あいつは、行かない。絶対、なんかあって行かない。行く行く詐欺」と言ってはばからないが、まあどっちでもいいんだ。
若い夫婦が2人で決めたことなら、行っても行かなくてもいいよ。

ただ、今の仕事をどうするのか、カナダでのワーキングホリデーでいったい何をするのか、帰ってからの生活はどうするのか、気になることはいろいろある。
なのになんだかいそいそと「バンクーバーの彼らを訪問した後、イエローナイフでオーロラ見て、ナイアガラの滝見て、プリンスエドワード島に行って…これだとツアーよりも旅行社に個別に相談した方がいいね」などと11月ごろを目安に楽しみにしている我々である。

もうすっかりクルーズ船への憧れは冷めて、車中泊への憧ればかりが募っているが、こういう機会に外国へ行けば、またイタリアとか行ってみたくなるかもしれない。
せいうちくん的には10年以内にロシアの戦争が完全に収まったら、バルト海へはぜひ行ってみたいそうだ。
そもそも息子たちは最初ノルウェーに行くと言っていたので、「ムンク美術館に行きたいな」と夢を膨らませていた彼であるのに、いつの間にかカナダになってしまった。
どこでも外国は面白いものだからいいんだけど、いつかオスロ出港のフライ&クルーズでムンクを見つつエルミタージュ美術館に行けたらいいな、と思っている。

それにしても気になるのは自分の健康状態と寿命だ。
若い頃は老いて死ぬとはまるっきり思ってなかったが、還暦を過ぎてからは寿命を意識するようになった。
ただ、私は「一病息災」で常に様々な検査を受けているので、意外と長生きするのかもしれない。
とりあえずの目標は72歳を越えること。
父が肺がんで亡くなったのがその歳だったので。
次は78歳で母親が肺炎で死んだ、そこまでは行けそうな気がする。

この頃ペットボトルの蓋が開けにくいとかよろけた拍子に体勢を立て直せずに転んでしまうことが多いので、長生きするつもりなら身体をもうちょっと鍛えないと楽しくないんだろうな。
いざとなったらせいうちくんは喜んで車椅子を押してくれると思うし、もう買って押し入れにしまってある準備の良さなので、何とでもなると思うんだが。

友人がしみじみ言っていたが、「親を看取ったあとの俺たちの老後って、あまりに短くない?」とはまさに正鵠を得ていると思う。
前の世代が急に長生きになってしまったので、そこらへんを全部済ませた頃にはこちらが老人になっている。
前述の友人も還暦過ぎて90歳のお母さんと同居しているわけで、「老々介護」と言ってもおかしくない。

親の世代を早く看取り終わって自身の退職も早く、年金が今より多かった上の世代がうらやましくなる。
しかも急激に寿命が延びたため、どうかすると30年ぐらいはのんびり楽しめる。
自分たちも子供の世代から「年金もらえて、いいね。オレたちが払ってるんだけど」と言われるようになるのかな。
今は若くてあまりお金に興味がなく、「お母さんたちの財産は好きに使って。やりたいなら、火をつけて燃やしてみてもいいよ」なんて言う息子だが、自分に子供ができたり中年を越えたりしたら少し考えが変わってくるかも。
ごめんね、築20年のマンションぐらいしか遺してあげられそうにないよ。

膝のケガのせいでお風呂に入れないので、せいうちくんが温タオルを作って清拭してくれる。
入院してた時を思い出すなぁ。
髪まで洗うのは難しそうだ、風呂場に頭を突き出して洗ってもらおうか、と考えてみたが、間のいいことに金曜日に美容院に予約を入れていた。
ベタベタの髪を洗ってもらうのも申し訳ないが、きっとケガや病気で洗髪ができない人がシャンプーだけを目的に来ることだってあるだろう。

名古屋の友人Cちゃんに「車中泊を無事にこなしたのに、帰りにカラオケに行こうと歩いてて転んだ。それだけで膝がぱっくり割れた」と愚痴LINEを送ったら、とても同情してくれた。
「走っていたわけでも急いでいたわけでもないのに転ぶなんて、災難ね」と早い快癒を祈ってくれている。
「貴女、もっと歩いて身体を鍛えなきゃ駄目よ」と体重についてのお説教をされても甘んじて受けるつもりだったんだが。

彼女とのLINEを読み返していたら、前にコロナに罹った時、お見舞いにバームクーヘンをもらっていた。
「敢えてクラブハリエ以外のにしたんだけど、どうかしら」と有名店の品を送ってくれたCちゃんに対し、私は不遜にも「バームクーヘンは何でも好きだけど、やっぱりクラブハリエが神」」と答えていた。
怒りもせずに「じゃあ、今度何かお見舞いを送る時はクラブハリエにするわね」と返事をくれているところを読んで、「!しまった!」と脳天に稲妻が走った。

「お見舞いとか送らなくていいからね」とLINEを書いている間に、Cちゃんから「あんまり可哀そうだから、お見舞いにクラブハリエのバームクーヘンを贈っておいたわ。早く治ってね」とLINEが来てしまった。
「まさに今、クラブハリエを送らなくてもいいからね、って書いてたんだよ。Cちゃんの義理堅さと溢れる優しさを見くびってたな。ありがとう」とお礼のラインを返すしかない。
しかも「お返しとか考えないでね」と先に釘を刺されてしまった。
この心優しい友人に、私が何かしてあげられる日は来るのだろうか。

24年2月1日

いつものことで眠りに落ちたのは5時頃だが、今日はまた整形外科に行って膝の傷を診てもらわねばならない。
11時にかけた目覚まし時計でちゃんと起きられた。
出かける前の一服をしていたら、寝室をのぞきに行ったせいうちくんがキッチンを見て、
「あっ、起きてる!すごい!絶対起きられないと思って起こしに行ったのに」と驚く。
ちゃんと目覚ましが鳴ったじゃないか。

11時半に家を出て整形外科に行ったら、12時受付終了なのに待合室はとっても混んでいる。
明日はいつもの先生じゃない医師の日だから、かかりつけの人はみんな今日のうちに来ておこうと思うんだろうな。

ところが、この整形外科の不思議のひとつなのだが、待合室の人はみんな診察を待ってるのかと言うと、そうでもない。
上のフロアでリハビリを受ける時間まで待ってる人や、送迎の車が出るのを待っている人が多いらしい。
あと、なぜか会計に時間がかかるのでそこでの待ちも多い。
というわけで、待合室には患者さんが大勢いるのにすぐに呼ばれて診察室に入れた。

「どうですか、傷は痛みますか?」
「痛くはないです。ちょっと浸出液が包帯にしみ出してます」
看護師さんがくるくると包帯を解いて、ガーゼを取り去ったところで、ドクターが長めのピンセットで傷を固定していたテープを取る。
謎の医学用語で何か要求すると、オキシドールに浸した綿球のようなものが出て来て、それで傷口を丹念に拭う。
「ここの皮が盛り上がってくれば大丈夫ですね」と言って、ドクターがガーゼを当てた上から看護師さんが透明なフィルム様のものをぴたりと貼る。ふちがシールになっているようだ。

「次は土曜日に来てください。今日と同じ時間帯でやってます」と言われ、
「お風呂やシャワーはまだ無理ですか?」と聞くと、
「濡らさないようにしないといけないから、もうちょっと我慢してください」。
今夜もタオル清拭で、髪は明日美容院だな。

思い返せば返すほど、つまらぬケガをしてしまった。
せいうちくんがいつも以上に大事にしてくれるのは嬉しいが、なんであんなところで転んじゃったんだろう。
おまけに、普段だったら擦り傷で済むはずが、なんで深く割れちゃったんだろう。
何の変哲もないアスファルトの小道だったのに。

来週末はまた車中泊で伊豆半島の方に行く予定だから、それまでには絶対に入浴可能にならなければ!
Gくんは毎日張り切ってホームセンターに行ったりネットを見たりして、キャラバンの内装を整えようと計画している。
おまかせしちゃって申し訳ないとは思うものの、実は彼はすごくやりがいを感じ、喜んでいるような気もする。
元来、工作少年のような男なのだ。
費用は3分の2負担するから、楽しみつつ頑張ってくれ。

24年2月2日

名古屋のCちゃんからケガお見舞いのクラブハリエのバームクーヘンが届いた。
30センチ径ぐらいのホールだ。
さっそくお礼のLINEを打って、せいうちくんに小さくひと切れ、自分には大きくひと切れ切って食べる。
薄い砂糖衣が上品で美味しい。
やはりバームクーヘンはここのが一番だ。

Gくんとせいうちくん、共有で買った車のタイヤの件で意見が合わないようだ。
どうやらフォーシーズンタイヤが必要と言っているGくんに対して、せいうちくんは普通のタイヤにチェーンで対応しようと主張しているようだ。
全然わからないから2人がMessengerでやり取りするのにまかせていたが、今夜のGくんは酔っ払っているのか、かなりせいうちくんにイラついている様子。

我々、冬に雪山に行ったことはないわけで、車中泊をかなりやっていろんな季節にあちこち走っているGくんの言う通りにしておけばいいと思うんだが、せいうちくんは頑固になるとわけがわからないほど頑固だ。
「よく相談しよう」を繰り返すせいうちくんに、Gくんは「相談の余地はない。来冬にはわしは1人ででも買う」と最後通達をしてきた。
長々とあれこれ説明してもわからないせいうちくんにキレたようだ。
「わからないの?ばかなの?」「夏タイヤで秩父なんか行くなよ、おたんこなす」と打ってくるあたりでもう、文字数的にも大変で気の毒なので、ZOOMで話すことにした。
早くもこのトリオは崩壊か?

結局Gくんの意見通りにした。
内装とかいろいろ頑張ってくれてるGくんに敬意は払うものの、寝る用具については荷台全体底上げ棚の購入を含め、私にも意見がある。
とりあえず来週の車中泊はGくんがベッドを持ち込んで作ってくれたレイアウトで行くが、快適さによってはこちらも自費で全体棚を買うから、そしたらベッドを運び出してくれるか、と聞いたらそこはまあ、今回試してみてからね、とせいうちくんに止められた。

せいうちくんが「なんとなく」思い込んでることを論破するのは私も40年苦労しているが、頭の回転の速いGくんには耐えられないだろう。
しかしいったん始めてしまったことなので、お互いの性格や考え方に慣れることまで含めて頑張ろう。
「酔っ払ってるからって何言ってもいいわけじゃないぞ」と釘は刺しておいたが、私だって本質的にはGくんの無敵ぶりは怖い。
車中泊におけるアルコール摂取の少ない時のGくんが基本、優しくて冷静なことをしっかり覚えておこう。

さて、膝のケガのせいでお風呂もシャワーも禁止になって5日目。
身体はせいうちくんが毎晩タオル清拭してくれるからいいようなものの、髪の毛が限界。
油でペタッとしてきた。
間のいいことに今日、美容院に予約を入れていたので、事情を話して真っ先に思いっきり洗ってもらう。
ああ、さっぱりした。
洗う人には申し訳ないが、本当に助かった。

息子の結婚式前に髪切って高いトリートメントかけてくれた担当さんにお礼を言って、写真を数枚見せる。
「お嫁さん、綺麗な方ですね」
「息子さんも、明るくて優しそうだし、ダンナさんはカッコいいですね」とたっぷりリップサービスしてもらった。
「歌はうまくいきましたか?」と聞かれて、かなり失敗であったと伝えるのはつらかった。
しかし皆さんとても感動してくれた、というのを伝え忘れてるし。

さて、明日は午前中に整形外科で傷を消毒してもらって、そろそろシャワーのお許しぐらいはもらいたいところだ。
そのあとは友人2人と柳家喬太郎さんの落語を聴いて、蕎麦屋呑み。
Gくんから、Nさんとぜひ車中泊をしてみたいからしっかり誘っておくように言いつかっている。

「で、Nさんは免許は持ってるんじゃろ?」
「いや、合宿で取った免許を面倒だからと数十年前に失効して、以来、免許はないよ」
少々たじろぐGくん。
「ま、何とかなるじゃろ」
新年会で会った時、Nさんも車中泊には大いに興味を持っていたよ。

ただ、
「Gはオレのこと、嫌いだからなぁ」と尻込みするので、
「そんなことないよ。リスペクトしてるよ」とは言っておいた。
学生時代以来あまり会ってない人で、Gくんに好かれていると自信を持ってる人は少ないと思う。
私たちだって、Gくんが怖くなくなったのはコロナが始まって彼主催のZOOM飲み会が3、4年続き、リアルでもしょっちゅう会うようになってからだ。
それでもいまだにたまには怖い。
たぶん、頭が良すぎて持て余してるんだろうなぁ。

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