猪熊洋介(とんすけ)

ゲームと物語を作っています。 『八人のアダム』というWeb小説書いています。 フリーゲ…

猪熊洋介(とんすけ)

ゲームと物語を作っています。 『八人のアダム』というWeb小説書いています。 フリーゲーム『八人のアダム外伝』、『花まるプリンセス』 HPアドレス:https://www.tonsuke.jp/ Twitter:@fall_night_

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  • 【八人のアダム】二章 旅立ち

    ギャランシティを飛び出したピップとラムダ。 エネルギーも食料もない二人は、新たなシティを探す。

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    自分の好きなことなど、適当に語っています。 同じようなものを好きなかたがいたら、ぜひコメントください。

  • 【八人のアダム】イラスト

    『八人のアダム』の各話イラストです

  • 【八人のアダム】一章 ギャランシティ

    ギャランシティのスターエンジニアであるピップは、軍のために働くことに疑問を感じながら、スターズの整備をする日々を送っていた。しかし、ラムダという不思議なこどもとの出会いが、ピップを思わぬ運命へと導いてゆく。

  • 【八人のアダム】序章 スターズ

    <別れの日>に発生した<白い穴>により荒廃した世界。 ギャランシティのスターエンジニアであるピップは初めての実戦を経験する。

最近の記事

【八人のアダム】 2−25 旅立ち

一行がウィークシティへ到着すると、駆け寄ってきたロバート市長は真っ先にティアに詫びた。 「ティアさん、誠に申し訳ございません。まさか、ワイルドたちが誘拐を企てていたとはッ…」 「いえ、私も脇が甘かったです。ただ、ロバート市長も今後は、人員の事前調査などをしっかりなさってくださいね」 「は、おっしゃる通りです。それで、あの、こんなことがございましたが今後の取引に関しては…」 「ええ、今回のことは、ホープシティとウィークシテイの取引に影響は出ません。ただ、この遠征で消耗した物品の

    • 【八人のアダム】 2-24 帰還

      「出てくるときに、誰かに見つからなかったか?」 ピップはラムダの服についた汚れを手で払い落としながらいった。 見たところラムダに目立った損傷はなく、ピップはホッとした。服がところどころ焦げてしまっているので、ウィークシティに帰ったら別のものを買ってあげないと。 「はい、ピップ。二階の窓から静かにでたので、誰にも見つかっている様子はありませんでした」 ピップはうなずくと、ラムダにスターバッテリーを持たせた。 「よし。じゃあ、ラムダはシティに先に帰っていてくれ。宿屋の人たちに気が

      • 【八人のアダム】 2−23 決着

        激しい金属音とともに、ザーズの<モルスラッグ>が地面を転がった。 (ザーズ!) ワイルドは世界が真っ白になったようなショックを受けて、しばらく動けなかった。しかし、倒れたモルスラッグがよろよろと起きあがろうとしているのを見てワイルドは我に返った。よく見ると、破損したのは脚部だけで、コックピットなど機体の中心部に重大な損傷はないようだった。 (あの小さなスターズはどこだ?) とワイルドは周囲を見回した。どこかへ飛んでいくのを視界の端で見たような気がしたが、やはりもう近く

        • 【八人のアダム】 2−22 帝国の仇

          (なんというスターズだ) ワイルドは自分たち四機による集中攻撃を回避する小さいスターズを見て、恐怖を感じた。 <ムーンファルコ>は半壊しているとはいえ、その壮絶な火力はいまも健在である。そこにワイルドたち三人の集中攻撃も加わっているのに関わらず、被弾はいまだに皆無である。 その回避性能と情報処理能力に加えて、あの頑強なムーンファルコを半壊させた攻撃力をも有しているのだ。 (やはり、俺の直感は正しかった。俺たちが加勢しなければ、ムーンファルコは撃破されていた。だが、問題は、

        【八人のアダム】 2−25 旅立ち

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        • 【八人のアダム】二章 旅立ち
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        記事

          【八人のアダム】 2-21 決断

          「何をやってんだる俺はッ!」 ピップはモルゴンを空中で加速させながら、ワイルドの思惑に気が付かなかった自分を呪った。 目指すのはラムダがムーンファルコと戦闘を行っている地点だが、ラムダとはまだ通信可能な距離にないため、その正確な位置は不明である。そのため、まずは廃墟付近まで戻ろうとしていた。 ワイルドと戦闘を行っていた際、ピップは逃げることにあまりにも必死だった。 ワイルドは元軍人だったということもあり、ピップよりも腕が立つことは明白だった。傷ついたモルゴンでは、ピップに

          【八人のアダム】 2-21 決断

          【八人のアダム】 2-20 ムーンファルコ

          自律式スターズ同士の戦いというのは、どんなに激しい戦闘の場合でも、不思議と静かな印象を与えるものだと言われている。 そこには人間のような肉体がなく、神経がなく、感情がないためだろう。 自律式スターズは部品を欠損した痛みで声を上げることもないし、迫り来る死に恐怖の叫びを上げることもない。 「だが、それは本当だろうか?」 そう呟いたのは、かのアダム博士だったという。 人間は、五感で得た情報を神経を通じて信号として脳に送り、情報処理をしている。 高度な機能を持つ自律式スターズ

          【八人のアダム】 2-20 ムーンファルコ

          【八人のアダム】 2-19 戦略

          激しい怒りを覚えながらも、ワイルドは戦況を的確に分析していた。 苛酷な戦場を職業軍人として生き抜いてきたワイルドだからこその技能といえるだろう。 <ムーンファルコ>はピップが呼び出した光る小さなスターズと戦いを始めたようだ。その二機はどういうわけか、廃墟から徐々に離れていっている。 周囲にほかのスターズの気配はない。ザーズとブーラには戦闘に参加するよう通信を送っているが、息子たちがスターズに乗り込むまであと数分かかるだろう。 よって今、ワイルドはピップと一対一の状況である

          【八人のアダム】 2-19 戦略

          【八人のアダム】 2-18 夜空の星

          突然現れた巨大なスターズを目にして、ピップはつぶやいた。 「これは…」 「見たことがないだろう。こいつは<ムーンファルコ>という自律式スターズだ。帝国が大戦末期に開発したスターズだから、知るものはほとんどいない」 「見たことはない……いや、でも、すこし似ている気がする。ギャランシティで見た<オルガレイズ>に」 とピップは思わず口に出した。 「へえ、おまえ、<オルガレイズ>を見たことがあるのか。あれを持っているとは、やっぱりギャラン=ドゥは侮れねえな」 「あれを知っているのか?

          【八人のアダム】 2-18 夜空の星

          【八人のアダム】 2-17 屋上

          頭上には満天の星がきらめいている。 廃墟に入ったときはまだ昼過ぎだったが、屋上に出たことでいつの間にか夜になっていたのをピップは知った。昼は暑いくらいだったが、夜は冷え込んでおり、肌寒さを感じた。 「その縁のところに立て」 とワイルドはピップに命じた。 逆らうこともできないため、屋上の縁の部分にピップは立った。柵は壊れており、危うく落下してしまいそうになる。 「なんなら飛び降りてもいいんだぜ。高さは十メートルってところだ。うまく着地すれば、逃げられるかもな」 ザーズがあざ笑

          【八人のアダム】 2-17 屋上

          【八人のアダム】2-16 逃亡

          「ピップくん、すまない。とんだことになってしまった」 「どうしてティアさんが謝るんですか?」 「だって私が君を巻き込んだからこんな目に…」 「違います! ティアさんはおれを助けようとしてくれた。さっきだって、俺が足を引っ張らなければ、こいつらにやられることもなかった」 「だが…」 「ここからは俺が役に立ちます。だから…」 ピップは座席に座って菓子を食べているブーラを肩で示し、 (すこし目を引きつけてください) と声に出さずに、口の動きだけでいった。 ティアは小さくうなずくと、

          【八人のアダム】2-16 逃亡

          【八人のアダム】2-15 人質

          いつの間にかピップは自宅のベッドの中にいた。 うららかな日差しが窓から部屋の中に差し込んでいる。 久しぶりの自宅の部屋は何も変わっていない。 壁に貼られた大好きなミュージシャンのポスター。 じいちゃんが買ってくれた机、愛用のパソコン。スターズの模型…。 そういえば今日は、じいちゃんとどこかに行く約束をしていた気がする。 でもまだ眠っていたい。この穏やかなまどろみから覚めたくない。 どこからか、女の人の声が聞こえる。ピップに近づいてくる。 母さんが起こしに来たのかな? あれ、

          【八人のアダム】2-15 人質

          【八人のアダム】 2-14 廃墟調査

          この廃墟は、スターズや物資などの保管倉庫だと思われた。主屋はコンクリートの三階建ての建物となり、そこに格納庫と倉庫がつながっている。軍事施設としては小規模と言えるだろう。 施設の調査に向かった五人、すなわちワイルド隊長、ティア、ザーズ、ブーラ、そしてピップは格納庫から調査することにした。理由は外部に続くシャッターが開いていたためである。 五人は格納庫に入った。 格納庫はスターズ十機ほど入れる程度の広さだった。シャッターが閉まっていなかったせいで、床には砂が散乱している。照明

          【八人のアダム】 2-14 廃墟調査

          【八人のアダム】 2-13 シルガラ

          部隊は目標の軍事施設廃墟に向けて、移動を開始した。 先頭は囮役であるピップのモルゴンである。その両脇後方にはウィークシティのスターズ五機が布陣し、上空からは全体を俯瞰するように、ティアのティターニアが旋回している。 ピップのモルゴンが目的の廃墟まで五kmほどの距離まで接近したとき、上空を旋回していたティターニアから部隊各員に通信が入った。 「こちらティターニア。前方にスターエネルギー反応を検知。複数機がモルゴンに接近中」 「こちらモルゴン、了解」 ピップは岩を障害にするよう

          【八人のアダム】 2-13 シルガラ

          【八人のアダム】 2-12 マザースター

          翌日、早朝。 ピップにとっては思わぬ出来事が起きた。 それは各隊員、顔合わせの時であった。 ウィークシティからは隊長のワイルドを含めて五人の隊員が作戦に参加するとして、ワイルドからティアとピップに紹介があったのだが、そのうち二人は見覚えのある顔だった。 「あっ!?」 と先に声をあげたのは、痩せ型の男であった。 「うわ、昨日のつれないおねえちゃんじゃん、見ろよブーラ」 ブーラ、と呼ばれた太った男は、荷物を詰みながらティアとピップを見た。 「ふワ〜、本当だネ、ザーズ。こりゃびっ

          【八人のアダム】 2-12 マザースター

          【八人のアダム】 2-11 依頼

          「依頼の背景を伝えよう、こっちへ」 ロバート市長は部下にピップの手錠を外させると、机に地図を広げた。 「我々は、今は廃墟となっているある軍事拠点に貴重な物資があるという情報を手にした。ウィークシティとしてはその物資はぜひ入手しておきたいと思っているのだが、そこは数機の自律式スターズが防衛しているらしい。おそらく、大戦前に拠点防衛を託されたスターズではないかと思われる。君への依頼というのは、モルゴンでこのスターズを引きつける囮となってもらうことだ」 「戦うのではなく、引きつける

          【八人のアダム】 2-11 依頼

          【八人のアダム】 2-10 尋問

          「ギャランの犬め、よくもシティに入れたものだ!」 ウィークシティの留置所の取調べ室に、警備兵の声が響いた。 重苦しい灰色の壁に囲まれた室内で、ピップは椅子に座らされ、机に手をつきながら頭を下げ、自分の手にはめられた手錠をじっと見つめている。 ピップの向かい側では、今叫んだばかりの屈強な警備兵が歯を剥いてピップをにらんでいる。 その奥の壁ぎわには、数人の警備兵に守られながら、ロバート市長が苦い表情を浮かべて腕を後ろ手に組んでいる。 格納庫での市長との遭遇のあと、すぐに警備兵が

          【八人のアダム】 2-10 尋問