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ドラマティック・転職

2023年1月に永住権が承認され、5月にPRカードを受け取った。永住権が承認されるまでは同じ職場で働く必要があったが、その縛りももうない。これで私は、どんな場所でも働ける職業選択の権利を得たのだ。


保育士やめたい

現在の保育園では、3〜5歳児のクラスを担当しており、子どもたちやその保護者との関係も良好。ただし一つ問題なのが、園の拡大に伴い、人員確保のために大量の保育補助(ECEA)を雇い始めた点だ。

保育補助の資格は、数ヶ月で取得できる。一方で保育士の資格を取る場合、最低1年は必要だ。そのため、そもそもの知識・指導方法、そして子どもに対する向き合い方への大きなギャップを感じるのだ。(なかには素晴らしい保育補助の先生もいると思うが……)

この前なんて、外遊びの時間に、保育補助の先生2〜3人で集まって長らくおしゃべりをしていた。「ちゃんと子どもたちを見てくれよ」と思い、彼らの後ろにいる子どもたちがなにをしているのか覗いてみると、なんとハチを集めていた。勘弁してくれ、こっちはもう白目である。

憤りを抑えながら「刺されたら危ないから、ハチは逃してあげてね。虫取りしたいんだったら、ミミズとかダンゴムシはどう?」と対応した。こういった保育補助の先生たちの見逃している部分を、保育士二人でカバーしまくらなければいけない。

そんな日々のなか、ふつふつと湧き上がってくる「私、保育士として成長したいだけなのに、なんでパッションもない保育補助の先生の面倒をみないといけないわけ?」という疑問。そこからのモチベーションの下がり具合は酷かった。

かつてないほどのやる気の出なさに、カレッジでお世話になった先生のもとへ足を運んで「もう今の園でやっていける気がしないんです。どうしよう」と相談した。カレッジ時代の友人S(いまはカレッジでインストラクターをしている)にも「あんな園辞めちゃえ!もっといい園あるよ」と言われた。

日本一時帰国とメッセージ

釈然としない気持ちのまま6月になり、日本へ1ヶ月一時帰国した。海鮮丼が食べたいと思った私は、築地を一人彷徨いていた。比較的空いてそうな海鮮丼屋に入り「ウニ中トロマグロ丼」を注文。一人モクモク海鮮丼を食べている最中に、友人Sから連絡がきた。「あの園で保育士一人探してるってよ。連絡してみなよ!」

「あの園」とは、私がカレッジの夏休みに働いた保育園だった。ほぼ全ての先生が保育士以上の資格を持っていて「こんな保育士に私もなりたいな」と思えた場所。そして、初めて保育補助(ECEA)としてお金をもらって働き、園長先生が私のハードワークを買ってくれた場所でもあった。

ただ、自分が今日本にいることもあって、友人Sには「カナダに帰ったら園長に連絡してみるよ」と伝えた。彼女は「そっかあ。そのときにはもうポジションが埋まってるかもよ」と心配そうだったが、「まあなるようになるよ、ありがとう」と返した。

海鮮丼を食べ終えたあと、なんとなく築地から代官山に向かって歩いていた。あのオシャレな蔦屋にでも行って、子どもたちに本でも買っていってあげよう。そしたら、突然園長から連絡が来たのである。「いま仕事探してるって?もしよければ一緒に働かない?」

なんというタイミングだろう。もちろん私の返事は一つ。「はい、一緒に働きたいです。でもいま日本にいて、働き始めるのが7月下旬になっちゃいそうで。もし早急に人手が必要であれば、お気になさらず…!」

やはり働き始める日程が遅すぎるだろうか…。そんな不安を抱いていると「本当!?一緒に働いてくれる!?全然1ヶ月待つよ!」とのことだった。園長の文面はどれもびっくりマークで溢れていた。それから、時給について少しやり取りし、カナダに帰ってきたら必要なペーパーワークを進めよう、という話になった。

こうして、私の転職活動は1日も経たずに終わったのである。

縁ってきっとある

きっとカレッジの先生や友人Sが園長先生に「ちひろが仕事探してるよ」と伝えてくれたのだろう。自分を助けてくれる人たちとの縁が、周り回って、あの園に導いてくれたんだと思う。これはもう一度、保育士としての仕事を自分の納得する形でやり遂げるための大きなチャンスだ。

「カナダはコネが大事」とはよく聞く。でも、これはコネというより縁なんじゃないかなと思う。助けてほしいときに助けてくれる人が周りにいることのありがたさを改めて実感した出来事だった。

転職活動をしようかなあと考え始めた次の日には、転職先が決まっているなんて、とってもドラマティックだ。


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