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国際化推進コーディネーターの日常

今日は小林市の国際化推進コーディネーターにお話しを聞きます。
業務内容についてお聞かせください。

Mさん:業務内容は市内に住んでいる外国人の方の支援です。生活情報発信やコミュニケーションの支援、国際交流のイベントを企画したりしています。

トニー:コロナで変更がありましたか?

Mさん:イベントができないですね。コロナ前は、中学生を対象にしたWorld Camp を企画して、中学生が宮崎大学の留学生とキャンプをする中で自然と英語を使って交流するというものがありました。他には市内に住んでいる外国人の方を講師に迎えて、その方の文化や食について共有いただきました。この交流をとおして、日本人住民が外国人の方をより身近に感じてもらえるようなイベントを企画していましたが、現在は一切できていなくて、コロナになってからは情報発信や翻訳・通訳が主な業務になってきていますね。

トニー: コロナがいつか収束したら、どういったイベントをやってみたいと思いますか。

Mさん:コロナ禍でも、なんとかコロナの状況を見ながら『地域日本語教室KIZUNA』や、サポーター養成講座を開催していました。やっぱりみんなさん、対面だとすごく嬉しそうにされていて、人と人とのつながりや触れ合いがいかに大事かというのを実感しました。ですので、人と人とが交流できるようなイベントをしてみたいですね。

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トニー:そう言えば、その前はオンライン教室が開催出来たと思いますが、対面式と比べたら、どうでしたか。

Mさん:また少し違った形で、上手くできたのではと思います。ただそう思う理由が、オンライン教室の前に既に対面で話ししたり、一緒に出かけたりしていたのでオンラインでもスムーズに移行できたのだと思います。

トニー:最初からオンラインだけだったら、少し難しいかもしれないという意味ですね。

Mさん:特に私たちが目指したい教室は、日本語の文法だけを教えるための教室ではなくて、交流や人とのつながりを中心にした会話型の教室を開催してきました。人とのつながりが土台にあるから、オンラインに切り替ってもスムーズに移行できたのだと思います。

トニー:もしコロナがなければ、オンライン教室という形に挑戦みたと思いますか。

Mさん:コロナがなければ、オンライン教室はしなかったかもしれません。でもコロナで、オンライン教室をすることになったのですが、日本語教師の先生方のおかげで教室が開催できたと思っています。ただ今後もオンライン100%の教室を開催していくというよりは、テーマに合わせてハイブリッドで実施できたらと思っています。

トニー:この『地域日本語教室KIZUNA』の目的はなんですか。

Mさん:日本語教室をとおして、地元に住んでいる日本人・外国人という垣根を越えて、つながりができる事だと思います。日本語教師の先生や日本人サポーターと一緒に色々なコミュニケーションツールを使って交流することで、外国人の方を身近に感じてくださるかもしれません。ただ、こういったことが意識されていくのは時間をかけて浸透していくのかもしれません。私もアメリカから帰ってきた時、まさか小林市に、こんなに外国人の方が生活されているとは思わなかったので、国際交流や多文化共生はどこか遠い話という意識だったと思います。

トニー:帰ってきて何年ですか。

Mさん:6年ぐらいです。

トニー:6年前だと、外国人人口はどれくらいでしたか?

Mさん:1%を下回っていたと思います。今は1.2%ぐらいですね。この数値って少ないと思われるかもしれませんが、人口比率でみると県内で2番目に多い数値になっています。

トニー: コロナ禍の中、状況が少し変わっているかもしれませんが、新しい人が入って来れないという問題があるんじゃないですか。

Mさん:去年の12月には1.2%で増加傾向でしたが現在は少しずつ減少傾向になっています。

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トニー:コロナを別にしたら、これからさらに上がってくると思いますか。

Mさん:いろんな専門家の先生と話ししていると、増加すると考えておられるようです。「技能実習」や「特定技能」など増加していくとお話をされてました。

トニー:「技能実習」と「特定技能」の違いは説明できますか。

Mさん:専門家ではないのですが、技能実習という在留資格は日本に来て日本の技術を習得して、自国にその技術をもって帰国される方たちです。

トニー:今は技能実習生が多いけど、これから特定技能という資格を持っている人の割合が上がるということですね。

Mさん:そうなるかもしれません。特定技能の方はより日本に長く滞在されることもあるので、そうすると小林市の生活や文化に触れる機会が増えて来ると思います。今後さらに小林市に定住される外国人の方が増えるかもしれません。

トニー:先ほど、国の制度について聞きましたが、ここに住んでいる地元の人の立場からいうと、技能実習生はどんな存在ですか。

Mさん:その企業にもよるんでしょうけど。私がお話させていただいた企業の方は、技能実習生の事をその企業にいなくては困る大事な存在という印象を受けました。

トニー:企業側はやっぱりある程度の日本語を身に付けてほしいと思っていると思いますか。

Mさん:私個人の意見ですが、業種によるかもしれないです。作業によっては例えば、生産ラインであれば一回動きや指示が入れば、特に日本語はあまり必要がないかもしれません。また、企業によっては日本語が堪能な外国人の方もいらっしゃいますから、その方が指示を出したりして橋渡しのような役割をされている企業もあるかもしれません。また、外国人の方が熱心に日本語を勉強しているという話を聞いた事もあります。

トニー:小林市の場合は、技能実習生側、企業側、双方満足していますか。例えば、今まで技能実習生を雇って、よく働いてくれたので、同じように続いて行きたいという企業はあるんですか。

Mさん:技能実習制度の中では大変なんじゃないかなと思います。数年経過するとどうしても帰国されます。せっかく教えたとしても結局、その人たちがいなくなってしまって。そしてまた新しい人が入ってきて。例えば、日本の人であれば新規採用したら、半年程度は試用期間で、そこが終わり徐々に何年かすると独り立ちして、今度は新入社員を助ける立場になっていくところを、この制度を活用する限りは、在留期間というのがあって、それがやっぱりネックになっているというところはあるんじゃないでしょうか。

トニー:小林市の企業からすると、少し不利益な状況ですよね。

Mさん:当然、優秀な人材であればずっと働いてほしいと思いますよね。それって日本人・外国人関係なくですよね。

トニー:結局、こうなってきたのは、小林市で働きたいと思う人材が小林市に少ないという問題があるからじゃないですか。

Mさん:大学や専門学校に行きたいと思ったら自然と小林市を出て行くという選択しかないです。そうすると、卒業して向こうで仕事をすることになれば、帰ってくる確率というのがかなり減ってしまうかもしれませんね。

トニー:ベトナムから若い人が日本に働きに来ますが、将来的にどうなると思いますか。

Mさん:私がこの「国際化推進コーディネーター」という仕事を始めてから在住されている外国人の方は変わってきています。最初、中国の方が8割ぐらいだったのが、一昨年には、ベトナムの方が急激に増えてきていました。市内に在住される外国人の方も常に変動しています。自分の国の経済が発展するとともに自国内で仕事をされるようになったり、世界で外国人材を求めているので条件のいい方を選んだり。

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トニー:ここ田舎の話だと思います、大都会での労働者として入ってきている外国人に対する意識感は比較的高いか、低いかどうですか。

Mさん:場所にもよるんですけど、なんとなく、見える外国人と見えない外国人がいると思います。メンタル的にですが。やっぱり、日本の人が考える・見える外国人の人ってアメリカ人、ヨーロッパ人とか、肌が白くて、目の色が私たちのブラウンの色とはちょっと違って、背が高くて、英語を話していてとか。

トニー:アメリカに住んでいたんですね。どんな国でも外国人に対するステレオタイプや偏見はあると思いますけど、日本と比べてみたら、どう違いますか。違いますか。

Mさん:アメリカの方がはっきり見える時が多いかもしれません。やっぱり、地域によっては、アジア人・黒人の人と話す時の態度にトゲあったりする時もあったので、そういう時は「あー(こういう人ね~)」と思ったりしました。あと、マイノリティと言われている人同士でもやっぱりランク付けがあったりとか、その中にちょっとした圧というかギスギスしたものがあるとか。アメリカでは身近にあったと思います。まぁ、小林で考えてみると、こういう仕事をしていなかったら、あまり意識しなかったかもしれません。

トニー:意識してないというのは触れ合う機会が少ないという意味ですか。

Mさん:そうですね。

トニー:技能実習生だと、大体職場では寮があって、そこに住んでいる感じが多いですよね。お出かけするのは、買い物をしたり、市役所で手続きなどをしたりするときぐらいですか。

Mさん:そうですね。週末に、どこかお出かけされたりはされていると思いますが。

トニー:当たり前だとは言えないかもしれませんが、自分たちの周りに外国人がいることを意識しないのは、ありえそうですね。

Mさん:特に、同じアジア系の人だから、ちゃんと意識を向けていれば、ファションも違うし、目の形とか、髪型とかも違うから、「あー外国の方だな」というのが分るけれども、あまり意識していないと、黒髪で、背格好も似ていて、そうすると溶け込んでしまう部分もあると思います。

トニー:そこが面白いと思います。結局その「意識しない」というのは悪いことなのか、別に悪いことではないのか考えてみたいです。

Mさん:すごく不思議ですよね。元々日本人の血の中にほかの国の血が入っているという感覚が他の国の人と比較してみると、たぶん少ないのでどう説明したらいいか…。それがいいことなのか悪いことなのかというのはわからないけど、どこか排除的な部分もあるし。無意識にかもしれませんが。たぶん何十年も前であれば、それが当たり前だったかもしれませんよね。それは排除しているというわけでもなんでもなくて、少しずつグローバル化が進むにつれ、ここにも外国の人が働かれていていらっしゃいます。もう外からやってくるお客様というだけではなく、同じ地域に暮らす隣人という意識もあってもいいのかもしれません。

トニー:外国人である私にとって、自分らしい暮らしさえできたら、意識されていなくても、攻められてない限り、それでもいいんじゃないかなというふうに思いますが、まぁ、人によって、それが充実した暮らしではないかもしれません。

Mさん:そうかもしれませんね。たぶん上手くいっている時はそれでもいいんですけど、例えば、価値観や文化の違いなどそういったことをあまり意識しないで生活されていたとして、地域特有の風習や暗黙のルールをお互いに理解していなかったとしたら、不信感や違和感が強くなるかもしれませんよね。それが「新鮮な気づき・異文化理解」となる時もあれば、「地域のルールを守らない人」とネガティブに取られてしまうかもしれませんよね。なので、意識にないというのが必ずしも良いのかな?というのは思います。

トニー:結局、外国人の観点や意見には日本人側にとっても価値があると言っていますよね。でもその意見交換などができるために、ある程度のコミュニケーションができないと難しいですよね。そこは日本語教室が入ってくるんじゃないですか。

Mさん:そのとおりですね。外国人の方にも日本語を使って楽しく会話できる「居場所」が『地域日本語教室KIZUNA」だと思います。またそれ以外にも私たちがやっている業務で、情報発信していくことも大事ですよね。こういった事をとおして、少しでも日本人も目にする機会が増えることで意識してもらえるとか、対面型の交流だけでなく日常的に例えば、回覧板の中にそういったチラシが入ったり、防災や何かの機会に外国語の文字や日本語にふりがなつけるというのを見るという機会が少しあるだけでも意識が変わったりするかもしれませんね。

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トニー:最後に言いたいこととかありますか。

Mさん:トニーさんが準備してくれていた質問で「外国に住んだり、働いたりした経験、今の仕事に役に立っていますか」というところは、もともと、向こうに住んでいた目的が音楽療法だったのですが、人生にアップダウンがあってその時に人の心どう動いていくのか、そこをどう私なりに支えられるのか、というところにすごく興味があって。音楽療法という領域で様々な背景を持つ患者さんに寄り添ってきました。そういった意味で外国人の方の支援とサポートを広い意味を見ていくと、自分が培ってきたスキルというのが今の仕事に反映されているのかなと思います。

トニー:結局、患者さんであろうが、外国人であろうが、サポートが必要なというのが共通点でよね。苦労してきた人とも言えるかもしれません。

Mさん:大なり小なり、人って考えているものや見えているものが、社会の中の基準とは少し違ったりしますよね。でもそこにも意味があるのかもしれません。障がいがあるから、外国人だからではなくて、その人だからこそできることがあると思っていますので、自分たちの基準に当てはめて人を見ていくだけというのは違うかもしれないと思っています。
私自身、色々な人と交流する中でたくさん教えてもらったり、気づかせてもらったり、自由にさせてもらったり。体が不自由なのに、心は自由だなとか。ピュアだなとか。あー私もこうなりたいとか。そういうところの固定概念というのをなるべく固めないようにして生きていきたいなというのは思っているので、そういった意味でも同じ地域に暮らす日本人・外国人や様々な背景を持つ方たちとどう繋がっていけれるのか。すごい遠いようで近いような、そんな感じもあるのかもしれません。

トニー:その固まってきた概念とか価値観があることをまず認めるのが大事なのではないかな。人がよく自分のことを「平等観のある人」として思いますが、本当はそうではないことが多いですね。

Mさん:私も外国人歴長かったので、日本人であることとか、女性だから、アジア人だから、自分ではどうすることもできないことで差別を受けたりとかありましたし。それは冷静に見ると、相手の問題であったりとか。それをどうやって自分のこととしてあまり真面目に受けずにしたりしていましたね。やっぱりそこってすごいネガティブなエネルギーがたくさんあるので、そこに引っ張られると私も嫌になるし、でもそこじゃないところで自分らしさ、日本人らしさ、アメリカ人らしさというところと上手く共存しながら、外国で生活をしていくというのがすごく大事だなと思っていました。それが帰ってきて国際交流や多文化共生に関する仕事をすることになったときに、例えば、ベトナムの方が自分の文化を全て押し殺して、日本の文化に馴染むというのはすごく苦しいかもしれませんので、どこか自分で割合というか。まぁ場面によってでしょうが、「今は8割ベトナム人とか」、「今ちょっとだけ日本人」とか、「あ、この場面は8割日本人がいい」みたいに、こう上手く自分の中でバランスを取りながら生活すると少し楽に自分らしく生きられるのかなと思ったりします。でもそのためにはお互いの文化・習慣を知ることは大事ですし、日本語教室で日本や小林の文化とか、人と人の交流をとおして「あ、やっぱ違うな。合わないな。」とか、「あ、良かった!この人に会えた」とか。そういった経験が自分の中で蓄積されていくと小林に住んでみて「住みやすいな」とか、「楽しいな」と思ってもらえる機会も増えていくかもしれません。

トニー:素敵!ありがとうございました。

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