同性愛者は「異常」だろうか ―台湾に関する同性婚の法制化と優生思想を考案―

はじめて

 2019年5月17日、台湾ではアジア初となる同性婚の法制化(パートナーシップ制度)が実現した。新たな歴史を確実に刻んでいた。その後、一千組以上のカップルが登録を済ませた。

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↑当日に支持側が同性婚法制化の結果を待っている現場(出典:自由時報,2019.05.17)

 台湾社会において、同性愛者の権利獲得運動を牽引してきた人は祁家威(チー・チアウェイ,1958-)であろう。台湾の結婚届には証人のサインが必要なため、同性カップルたちに請われ、立ち会いに訪れた。制度の実現について、「これから、多くの人々の幸福な人生が始まる」と述べていた。

 一方、同年2月14日、日本同性婚が認められないことの違憲性を問う訴訟が始まり、関心が高まっているという。しかしながら、今までも未だに終わらず、各地の裁判官がこの訴訟にのぞむ態度は同じくなかった。札幌地裁の訴訟は、裁判官の訴訟に対する姿勢が真摯で、他の地裁より早く進んでいる一方で、東京地裁の裁判官は、憲法に関する議論は抽象的なものなので、原告の陳述は「夾雑物」、つまり不要なものといったという。

 以前、LGBT(性的少数者・性的マイノリティ) は全く認められない存在である。同性愛については、1872年日本には「鶏姦律条例」 が発令され、肛門性交が禁止されていたこと、1939年ドイツ・ナチス「T4作戦」による安楽死政策には、精神病質者や遺伝病者のほか、低価値者(労働能力の欠如)、性犯罪者、同性愛者なども含まれていたこと、このように昔の時期に同性愛者が異常な罪人のことは明らかにした。

 なぜ昔の社会においては、同性愛を認めていなかったろうか。それを解明するために、第1章「同性愛者に関する歴史と考究」と第2章「台湾における同性婚の法制化」で詳細に考案する。また、『優生学と人間社会』(米本,2000)により法律・人権・思想を把握するため、第1章および第2章より第3章「同性愛者に関する優生思想」に深く考究して進むと思っている。

第1章 同性愛者に関する歴史と考究

同性愛者を問題視

 宗教の面においては、アメリカにおける聖書の文言を絶対視するキリスト教原理主義者ら は、同性愛の存在を認めていない。したがって、キリスト教の影響を受けた欧米諸国では伝統的に、同性愛は聖書において酷評される性的逸脱であり、宗教上の罪(sin)としてきた 。2009年、福音派教会、正教会、カトリック教会の指導者らは、マンハッタン宣言を発表し、結婚は「生命の創出と繫栄と保護」と「一組の男女間で結ばれる契約」であり、健康、教育を維持する制度であることで、同性婚の法制化を反対している。

 典型例として、アメリカの「ソドミー法(Sodomy Law)」が挙げられる。ソドミーの言葉が明確にどの性行動を示すかは、中で詳細に説明されないが、裁判などでは主に「自然に反する」 と見なされる性行動を指すとされる。1969年、ニューヨーク州で起こった「ストーンウォール事件(Stonewall riots)」という2,000人ほどの同性愛者らが400人の警察官と戦ったことをきっかけとして、1960年代働きで緩やかに進めていた差別撤廃(反人種差別運動,第二波フェミニズムなど)の動きが70年代に加速し、ゲイ解放運動が激化し、活動家らはその時点で同性愛が病気ではないことを主張していた。その影響で、1971年コネティカット州がソドミー法を撤廃したのを皮切りに、いくつかの州議会や裁判でソドミー法が撤廃または緩和される決定がなされた。

 もう一つ紹介するのは、今までも続いているホモフォビア(同性愛嫌悪,homophobia)という雰囲気である。ホモフォビアとは、同性愛や同性愛者に対する嫌悪感や恐怖感など否定的な感情や価値観である。学校や職場で同性愛者をいじめること、同性愛者ならばエイズ(AIDS)の感染程度の高さを疑うこと、その行為は現代社会に稀ではない。それが形成される理由としては、(1)男・女同士の絆(ホモソーシャル)との区別が明らかにしないこと、(2)同性愛者により自分が堕落または誘惑されることへの恐怖心であること(Adams, 1996)、が主になされる。

 精神医学の面においては、かつて同性愛は「疾患」と呼ばれ、診断基準が国際疾病分類(International Classification of Disease)にも記載されていた。しかし、1969年のストーンウォール事件などを踏まえ、1973年にアメリカの精神医学会は精神障害の診断・統計マニュアル(以下「DSM」) のリストより同性愛という項目を完全に削除され,性的指向障害(sexual orientation disturbance)へと変更された。1980年DSM-IIIで自我異質性同性愛(ego dystonic homosexuality)という名称に変更され,1987年DSM-III-R以降では同性愛に関する診断分類は完全になくなり、1993年世界保健機構(WHO)の全ての公式文書に記載された病名のリストから、ホモセクシャリティという文字は削除された。

性同一性障害
 これまでも病名として存在しているのは「性同一性障害」(GID,Gender Identity Disorder)である。それは、生まれた時に割り当てられた性別と異なる性の自己意識を持ち、自らの身体的性に持続的な違和感を覚える状態である。

 1964年、日本に「ブルーボーイ事件」という産婦人科医師が十分な診察を行わずに性転換手術(現在,性別適合手術)を行った法律違反事件である。当時、優生保護法(現在,母体保護法)によると、

何人も、この法律の規定による場合の外、故なく生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行ってはならない。(優生保護法,第28条)

 したがって、その医師が翌年(1965)麻薬取締法違反および優生保護法違反により逮捕され、1969年有罪判決を受けた。
 性同一性障害を抱える人々への治療の効果を高め、社会生活上の様々な問題を解消するには、2003年7月16日、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」を公布し、翌年に施行した。

この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律,第二条)

 この法律により、定められた要件を満たすと、戸籍上の性別を変更できるようになった。欧米諸国でも1970年代から立法や判例によって性同一性障害者の法的な性別の訂正を認めている。日本を含めこれらの国の法律は、性別適合手術を受けていることを要件の一つにしているが、新たに21世紀になってより立法したイギリスとスペインでは、性別適合手術を受けていることを要件とせずに法的な性別の訂正を認める法律を定めた。

第2章 台湾における同性婚の法制化

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 台湾では、1980年代の民主化運動に伴い、LGBTの権利を獲得する意識が増えてきた。その中、1986年ゲイの祁家威が同性婚を求めて、国会である立法院に請願するも「同性愛は公序良俗に反する」と回答された所から、同性婚の法制化への道のりは開始した。1996年同性カップルの結婚式がメディアで取り上げられ話題になった。2003年台北でLGBTのイベントが開催され、翌年よりこれまで大規模なパレードになっている。加えて、2004年「性別平等教育法」、2008年「性別就業平等法」が成立した。学校や職場での性的指向による差別が法的に禁止された。

 2017年5月、台湾の司法院(=最高裁判所)の大法官会議によって次の決定が出されていた。

民法(第4編親族の第2章婚姻)は、性別を同じくする両名については、共同生活を営む目的のために、親密性と排他性ある永続的な結合関係を成立させていない。それは中華民国憲法第22条が保障する人民の結婚の自由、および第7条が保障する人民の平等権の趣旨に反している。
関係機関はこの解釈公布の日から2年以内に、この解釈の趣旨に従って(民法など)関係法を改正するか新法を制定するべし。どちらを選択するかは立法機関の裁量に委ねる。
2年以内に法令が制定されない場合は、同性の2人も、民法の婚姻規定に従って証人2名が署名した書面を持参すれば、自治体窓口等で婚姻を受理しなければならない。(鈴木賢・明治大学教授の訳より作成)

 すなわち、台湾の最高裁は同性の婚姻が認められていないことを憲法違反とし、2年以内に民法改正か新法制定による是正を立法機関に命じたということであった。2018年11月、台湾における同性婚の承認また同性愛の教育事情に関する様々な公聴会を行った。その間で賛否両論が激甚に展開されていた。その後、台湾における全国性公民投票(=国民投票) が成立となった。以下は、当時の同性婚に関する公民投票項目を示したものである(太字項目成立,他は否決)。

民法が規定する婚姻要件が一男一女の結合に限定されるべきであることに同意するか否か。(第10案)
義務教育の段階(中学及び小学校)で、教育部及び各レベルの学校が児童・生徒に対して「性別平等教育法」(=ジェンダー平等教育法)施行細則が定めるLGBT教育を実施すべきではないことに同意するか否か。(第11案)
民法の婚姻に関する規定以外の方法で、同性カップルが永続的共同生活を営む権利を保障することに同意するか否か。(第12案)

民法の婚姻章が同性カップルによる婚姻関係を保障することに同意するか否か。(第14案)
「性別平等教育法」が義務教育の各段階でジェンダーの平等に関する教育を実施するよう明記し、且つその内容が感情教育、性教育、LGBT教育などに関する課程を盛り込むべきだとすることに同意するか否か。(第15案)

 その結果、特別法で同性婚が認められることになることが明らかにした。立法院には、国民投票の結果を受け、3つの法律案が提案された。①行政院(=日本内閣)の提案した「司法院釈字第748號解釈施行法」、②反対派の「同性カップルに『婚姻』ではなく『同性の家族関係』を認める」という「同性家族法案(通称)」、③反対派の「『婚姻』ではなく『同性結合』という名前になっている。『これは婚姻ではないけれど、婚姻のいくつかの権利を認める』という形になる」という「同性結合法案(通称)」。その結果、2019年5月17日、行政院の法案が賛成多数で可決し、5月24日、同性婚が可能となった(詳細な説明は,松岡(2019)に参考)。

第3章 同性愛者に関する優生思想

「LGBT生産性ない」炎上事件

 一つの事件を述べよう。2018年7月、自民党の杉田水脈衆院議員が月刊誌への寄稿で、同性愛者を念頭に「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』 がない。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」と行政による支援を疑問視した。そのときSNS上で「優生思想だ」といった批判が広がった。また、LGBT反対派の先輩議員からの応援も原因で炎上した(詳細な説明は,松岡(2018)に参考)。

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 清水(2008)の論文によると、同性婚に対する反対派は主な7つの論点を挙げた。①婚姻はそもそも「男女」による「生殖」を伴うもの、②同性愛者が増加し、種の存続に危機が生じる、③子の福祉への悪影響、④法的保障など必要ない、⑤同性婚などの法的保障の前にやるべき、⑥同性婚以外の保障方法で十分、⑦婚姻制度を放棄すべき。また、青山(2016)の論文によると、同性婚に関する反対意見として、①性的少数者の中のマイノリティ排除、②経済的弱者の排除、③社会規範・国家法制度への包摂、④新自由主義経済政策との親和性を問題視していることを指摘した。
以上の論点を簡単に整理すると、(1)婚姻の定義(2)種の存続(3)子の福祉(4)法的保障、4種類に分けることができる。本章で、(2)と(3)を説明する。

種の存続

(2)の論点として、第一に、同性愛者の増加の問題視である。現在、性的指向が同性同士に向かうという要因が解明されておらず、要因が先天的なのか後天的なのかははっきりしない。したがって、同性婚の法制化により、同性愛の後天的な要因に加勢するという懸念もあり得るだろう。確かに、仮に同性愛者が増えたとして、「社会の秩序が乱れるという不安」という多少の不利益があるかもしれない。しかし、その社会秩序自体が異性愛・ジェンダー秩序を前提としており、セクシュアル・マイノリティを切り捨てていることに留意しなければならない、つまりホモフォビアにすぎない。

 第二に、少子高齢化が進展しており、子を産む可能性のない同性愛者が増えたら種の存続に危機に生じるなどとするもので、第一の側面よりいっそう「実害」に踏み込んでいく。しかし、同性婚の法制化を可決すると、同性愛者が増加するかどうかは述べられなかった。より本質的な問題として、仮に同性婚が法制化されていない場合、同性愛者は事実上異性婚を強制され、異性愛的な社会秩序の維持や少子化対策に有用などとみなされるのならば、重大な人権侵害であるということである(清水,2008)。

子の福祉

 同性カップルが子を産むことができないが、養子縁組(連れ子、生殖医療技術)という形で子育てに携わることができるようになる。しかし、他の側面から見ると、反対派による(3)の論点としては、①同性カップルにより育てられた子が同性愛者になる可能性が高くなること、②同性カップルに育てられていることで社会的にいじめや差別を受けること、③父性や母性が欠如し、標準的な男女の役割モデル(=社会的な性)や性自認を身につけるのに困難が生じることが挙げられている。

 ①は、前述のように主にホモフォビアにすぎない。②に、それは被害者を罰せよといった誤謬であり、ホモフォビア感覚を持っている加害者こそ罰せられるべきだという反論をするものだが、深く考えると、加害者側の心理行動の裏を解明また解決することが重要になる。③は、仮にその疑問点が成立すれば、シングル・ペアレントなど標準家庭以外の家庭に育った子に、そのような悪影響を受け取るというのであろうか。加えて、養子縁組としては、同性カップルである両親の間に法的関係が存在しないからこそ、子の福祉にとって正しく悪影響が生じうる(清水,2008)。

意見・考察

 筆者は日本における同性婚の法制化の背景と賛否両論として、よく勉強になった。また、台湾と対極的な意見と同性婚の法制化のタイムラインとして、もう一度深く確認していた。これまで生物学、心理学、社会学、法律など様々な同性婚法制化に関する有力な支持意見・論点が提出され、それを支持する人々が増えている。ゲイの一員である筆者としては、感謝極まりない態度を差し上げよう。以下は筆者の結論である。

(1)結婚の権利を求めるが必要:日本の歴史を見ると、日本国憲法ができた1946年当時、世界で同性婚を法制化している国はどこにもなかった中で、確かに同性カップルの結婚を想定することは難しいだろう。また、両性の合意は、それまで結婚は親類によって決められていたものを、当事者二人の合意でできるものとするために明記されたもので、これは同性婚について何も規定していない。したがって、単なるホモフォビア感覚を放棄して、きちんと同性婚の法制化に面して討論すると思う。

(2)種の存続と生育としては未だに悪影響を引き受けない:以下の図を見ると、デンマークのみならず、他の同性婚を認めた国の出生率も減少しないことが明らかにした。確かに、その因果関係は論拠が全くないだろう。しかし、前章で述べられた(3)という論点がすぐに崩れることはわかっている。

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↑同性婚を認めた国の出生率の推移(出典:『百合のリアル』,2013) 

 「法律とは『最低限の道徳を定めたもの』という各人を保障される権利である。」その言葉は、台湾でよく言われている。筆者としては、同性婚の法制化で、性的少数者の文化が多数者の地位を乗り越えることではなく、最低限に、疾患ではない同性愛者が結婚・子育てしたい気持ち、その権利を守るのは必要不可欠なのだ、と望んでいる。

参考資料

・青山薫. (2016). 「愛こそすべて」. ジェンダー史学, 12, 19-36.(07.01閲覧)
・清水雄大. (2008). 同性婚反対論への反駁の試み--「戦略的同性婚要求」 の立場から.(07.01閲覧)
・松岡宗嗣,2019,「アジアにおける人権の灯台になる」台湾の同性婚法制化への道のり,fair(07.01閲覧)
・松岡宗嗣,2018,「杉田水脈LGBT差別問題」の経緯を振り返る(07.11閲覧)
・米本 昌平他,2000,『優生学と人間社会 』(04.30閲覧)


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