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そのこだわり教えてください!トップ工業「コンパクトラチェット」開発秘話

こんにちはトップ工業㈱ 企画担当のSです。
前回のコンパクトソケットシリーズについての
記事はいかがでしたでしょうか?
取り廻しやすい奥行45mmについての話、業界初の
電動ドリル用ソケットでの大径サイズの話…
などなど、気になる方やまだ読んでいない方はぜひ
読んでいただけると嬉しいです。


さて今回は「そのこだわり教えてください!」
シリーズの4回目です。当社の代表工具として、
【モンキレンチ】【先端工具類】と【ラチェットレンチ】
があります。
その中でも1999年に開発された
コンパクトラチェットレンチ】の開発秘話について
色々聞いてみました。コンパクト繋がりです。


コンパクトソケットの開発秘話に引き続き、今回も
技術顧問のEさんにお話を伺いました。
それでは本文スタート!


ラチェットも社内で金型・鍛造・熱処理加工まで行います。


 

Q. 「コンパクトラチェット」 開発のきっかけはどんなものがありますか?


きっかけは1995年に発生した阪神淡路大震災でした。
震災を機に当時のハウスメーカー各社が耐震性に優れた
家づくりを始めたことで「耐震金具」の開発が始まり、
普及し始めました。

その時よく言われたのが、
「ホールダウン金具(24㎜)」
「羽子板ボルト19mm(昔は21mm)」

などの建築金具をメインに締められる。
そしてなおかつ、

住宅施工現場の狭い場所でも取り廻しが
可能なヘッドサイズ”

のラチェットレンチが求められました。
スタンダードタイプでの対辺19×24mmの
ラチェットはヘッド幅が大きくて入りません。
ですが当時すでにあったショートラチェット
(対辺17×21mm)の本体だと狭い場所でも
取り扱えたので、

「本体はショートラチェットをベースに、
ソケット部の厚みが薄い、対辺19×24mmの
ラチェットを作れないか」

という営業の要望から開発がスタートしました。


さらにこれが実現できれば、
「職人のニーズに応えた今までに無い製品ができる」
と期待されていました。


羽子板ボルト:対辺19mm ホールダウン金具:対辺24mm


 

Q. 「コンパクトラチェット」の製品特長を改めて教えてください。


ソケット部の厚みが薄く、住宅施工現場の狭い場所での
作業に最適なラチェットです。
2x4工法やプレカット工法
住宅施工など、一般的な木造建築に比べ、ハウスメーカー
の住宅は耐震金具の取り付け等を含めて、組み立てた一枚
の板を重ねたり、板同士を固定のためボルトを締めていく、
といった作業を狭い場所で行うことが多く、十分な作業
スペースが取れません。

コンパクトラチェットはソケット部の厚みが薄く、
頭部幅が小さく、本体全長も短い、
とにかく狭い場所で
活躍できる機能を持っています。

左がスタンダードな対辺19×24mmのラチェット。
これだけ差があると狭い場所での取り廻りにかなり影響しそう。



当初は対辺寸法19×24mmと19×21mmをという希望で
2サイズのみの展開でしたが、ご要望にお応えして
2000年には全5サイズ展開となっています。


現在のサイズ追加のスタイルとは違い、需要に応じてサイズが揃えられている気がします。
◇のカラーは本体のカラーです。


 ー 阪神淡路大震災がきっかけになっている、
   というのは初めて知りました。耐震住宅への
   需要や意識が高まった、時代のニーズから
   生まれた製品ですね。


Q. 発売までに1番大変だったことや、いまだから言える印象的なエピソードはありますか?


①ソケット加工の問題

ショートラチェット17×21mmのソケット外径で
19×24mmのソケットをどうやって形にするか?
ということで色々と試行錯誤しました。


ソケット外径が対辺17×21mmソケットの幅しか無い、
ソケットのフチの厚みも確保しないといけない、
という条件付き。
さらに当時はソケット部全体の厚みが38mmでしたが、
両側をもう2mmずつ短くしてほしい、という要望で
34mmになり、さらに冷間鍛造※が難しくなりました。


※冷間鍛造は鍛造加工のひとつ。当社のソケットなどの先端工具にはこの技法が使われています。鍛造についてはもっと勉強して、noteでいつかご紹介できたらと思います!


左が原材料の丸棒。右が工程途中の状態。
いくつもの工程を経てラチェットのソケット部になっていきます。


そこで通常は1回の加工で成形できるソケットの内側の
12角部を通常より工程を増やして成形し、仕上げること
になりました。

ギアや19×24mm両ソケット部の冷間鍛造を経ての完成
までは、いくつかのパターンを試しながら現在の方法に至りました。


②名称の問題

発売時期や既存製品のショートラチェットとの関係で
最初の発売当時は名前や品番が現在とは違っていました。

コンパクトラチェットの先がかりとなる対辺19×24mm
サイズのラチェットは、当初「薄型ショートラチェット
という品名で発売されましたが、その後のサイズ追加や
ラインナップ拡充のタイミングで、薄型ショートラチェット
レンチから「コンパクトラチェットレンチ」という正式な
品名となり、品番も現在のものに揃えられました。


2000年2月発行の単品カタログ。この時点では「RM-19×24S」「RM-19×21C」
この2つが「薄型ショートラチェットレンチ」として発売されています。


2000年10月発行の単品カタログで「コンパクトラチェットレンチ」となり、
品番も揃えられています。ちょっとややこしいですね💦


 ー ①のソケットの形状についてはインタビュー後に
   もう少し詳しく教えていただきましたが、限られた
   サイズの中でこの構造を実現するために工夫を
   凝らし、ユーザーの要望に全力で応える!
   というこだわりがものすごく込められている、
   と感じました…。この技法とアイデアが2007年3月に
   発売した「短ガチャ」などにも活かされている、
   ともおっしゃっていました。

 

Q. 発売後のお客様や営業の反響はいかがでしたか?


ありがたいことに予想を大きく上回って
ユーザーの皆様にご購入いただきました。
発売した年は想定していたよりも
倍以上の数を生産した記憶があります。

 ー 「今までに無い製品」と期待されていた
    だけありますね!時代の需要とマッチ
    した製品という感じがします。



Q. コンパクトラチェットの開発にあたって、1番力を入れたポイント、こだわりなどはありますか?



陳列された時に目立つようにパープルを採用して
みたことです。当時は「トップカラーとしてパープル
ってどうなの」などのご意見もいただき、賛否両論
ありました笑

ピンク系、ワインレッド系がもう既にあったので
それらと並んだ時に似たような色だと同じラチェット
に見られてしまうのでは、と思いひと目でわかる本体色
にこだわりました。


パープル系・ブルー系がパッと映えるような気がします。


それと余談ですが、コンパクトラチェットの
開発には既存のショートラチェットの存在が大きく、
本体のベースはショートラチェットになるのですが、

・番線を巻きやすいシノの太さと角度
・使用頻度の高い方に力を入れやすいシノ曲がり方向
 (17×21は17側に力が入るように)
・シノ先端はフェルト缶などのフタ取りがしやすい
 ドライバー形状
・全長は210・230・250mmの3パターン試作して
 重量バランスと使用感の確認

などなど、本体側にも色々とこだわっていました。


 ー カラーの話は気になっていました。当時の
   カタログや今の製品から見るとかなり攻めた
   配色だと思います。私はそれが好きですけど笑

   ラチェットは他にもカラーバリエーションが
   多いイメージですが、特注などで変わったカラーの
   発注があった場合は、割とどんな色でも塗装できる
   のでしょうか?


ショートとコンパクトは特にカラフル


出来ると思います。
特注ですとか、OEM品はそういった発注も多いですから。

ちなみにカラーによって値段もそれぞれ違うんですよ。
中でもワインメタリックが1番高価なんです。


 ー そうなんだ…意外…! 
 
   話は変わりますが、当社は特注品製作も
   行っています。特注品はラチェットに
   限らず1丁からご相談いただけます!
   工具の悩み事お聞かせください~。
   (お問い合わせ時は発注までの流れを
   よくご確認ください)



最後に当社のラチェットレンチを使用されるお客様へメッセージをお願いします。


電動工具の普及が目覚ましい現代ですが、あったら
助かる手動工具がラチェットレンチだと思います。
「カタチ」を変えて進化して、今後ご披露できれば!
と思っております。


 ー 工具業界も様々な進化を遂げて今後さらに
   便利なものが登場することもあるかと思い
   ますが、最終的に便利なのは手の代わりと
   なるハンドツールなのでは、
   と工具メーカーの人間として思っています。
   
   最後の言葉は今後の展開でしょうか?
  「カタチ」を変えて…
   どんなものなのか想像して期待しましょう!




「コンパクトラチェット」の開発秘話、いかがでした
でしょうか? 今までお送りしてきた工具とは違い、
時代のニーズから生まれた工具だと思いました。そして
そのニーズを的確に形にした製品だからこそ多くの人に
受け入れられたのだと思います。
 
さて今回も技術顧問のEさんにお話を伺いました。
いつもありがとうございます!
毎回この機会で初めて知ることが多く、本当に勉強になります。

書ききれなかった部分もありますが、とにかくニーズに
応えるためにどうすれば要望を形にできるか、を考えに
考えて、思考を止めない…そんなものづくりへの熱意が
ありました。

次回は何の工具のお話になるか、または別の話か…
色々と考え中です。または皆様から「こんなテーマどう?」
「この工具について教えて」などリクエストもお待ちして
おります。

ここまで読んでくださってありがとうございました。
また次回も読んでいただけると嬉しいです。

新潟県三条市の工具メーカー トップ工業でした!


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