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ミュージカル作品紹介vol.24/ウェイトレス

家族以外との食事はなるべくしないようにしているけれど、その他の行動についてはこれまでと同じwithマスクくらいで暮らしている。

近所の友人との散歩も大体週1回のペースで行い、これが以前も書いたとおりかなりの気分転換になっている。

最近は映画ブームが少し落ち着いてきた。とはいえ先週末に見た「彼らが本気で編むときは、」はまたまた家族とはって考えるきっかけになったし、あとは多様性を認める社会の作り方(これは体制的な意味で)について、改めて「出来ることはあるけれど、正解は無い」というある種の諦念が生まれてしまったのもまた事実だった。

ということで(?)今週は月金と出社で、金曜の夜に日生劇場にて『ウェイトレス』を観てきた。

平日の夜にしては席はほぼほぼ埋まってたけど、2階席(GC席の上の階)は1列目に人がパラパラといる程度だった。

たぶんちょっと賛否両論ある系のミュージカルなのではと予想してるけど、私は好きだったので今回取り上げようと思う。

原作は映画で、2016年にブロードウェイミュージカルとして上演。あらすじは以下のとおり。

アメリカ南部の田舎町。そこにとびきりのパイを出すと評判のレストランがある。ウェイトレスのジェナ(高畑充希)はダメ男の夫・アール(渡辺大輔)の束縛で辛い生活から現実逃避するかのように、自分の頭にひらめくパイを作り続ける。そんなある日、アールの子を妊娠していることに気付く。訪れた産婦人科の若いポマター医師(宮野真守)に、「妊娠は嬉しくないけど産む」と正直に身の上を打ち明ける。
ジェナのウェイトレス仲間も、それぞれ自分のことで悩む日々。ドーン(宮澤エマ)は、オタクの自分を受け入れてくれる男性がこの世にいるのかと恋愛に臆病だが、出会いを求め投稿したプロフィール欄にオギー(おばたのお兄さん)からメッセージが届き困惑する。また、姉御肌のベッキー(Wキャスト:LiLiCo/浦嶋りんこ)は、料理人のカル(勝矢)と毎日のように言い争っている。ベッキーは病気の夫の看病と仕事を両立しているのだった。
ある日、店のオーナーのジョー(佐藤正宏)が、ジェナに「全国パイづくりコンテストに出場し、賞金を稼いだらどうか?」と提案する。その言葉をきっかけに、ジェナは優勝して賞金を獲得できたら、アールと別れようと強く決心する。
診察を受け、身の上話を語るうちに、ポマター医師に惹かれはじめるジェナ。ポマター医師もまた、ジェナへの想いを抑えられず、二人はお互いが既婚者と知りながら、一線を越えてしまうのだった。
そして、ジェナの出産の日は、刻一刻と近づいていく……。
(公式HPより引用https://www.tohostage.com/waitress/intro.html)

…ということで(?)、あらすじ読むだけでも、ね?賛否両論ありそうでしょ???たぶん男性と女性で見方も意見も違ってくる気がするけど、ネタバレしない程度に以下にポイントを書いていく。

①主要スタッフ陣が女性

この作品は脚本、演出、振付、作曲がすべて女性によって製作されている。実際に観終わった後、「この展開もこの終わり方も女性でないと思い付かないよな……」と思った。

まず、男性スタッフによる作品はあまり不倫を描かない気がする。この不倫の描き方がすごかった。どうすごかったかと言うと、あくまで不倫のシーンはポップ。とってもポップ。ポップなはずなのに何故かすごく生々しくて。でもたぶん観客の女性陣を「この不倫ならいいかぁ」って思わせてしまう演出があった。

主人公のジェナの旦那であるアールが、あらすじでは「ダメ男」ってまとめられているけれど、「ダメ男」って言葉じゃ全く足りないくらいの「ヤバ男」。仕事はポンコツで言い訳だらけ、ジェナが稼いだお金を使う毎日、おまけに肉体的にも精神的にもDV。このアールの表現のされ方がなんっっっともリアルで、他のシーンが比較的ポップということもあってかアールのシーンになると劇場内が必要以上に静まりかえって凍ってた。フィクションだって分かってはいるんだけど。

何というか、女性から見た男性の恐ろしさをありありと表現しているように思えて、ある意味で目が離せなくなった。

演出も振付も結構独特で、団体芸的なダンスシーンはほとんど無くて、ポップなミュージカルにしては珍しく抽象的な表現をただの黒いシャツとパンツの役者さんが表現するシーンが多かった気がする。注目してみてください。

②ポップって表現あってる?

こんなにポップポップ言ってるのに、作品を振り返れば振り返るほどポップっていう表現が適切なのか疑問に思えてくる。

たしかにポップなんですよ(なんなんだ)。だけど、テーマが『クレイジーフォーユー』とかみたいに振り切ってポジティブなものじゃないから、断言できないというか。

宮野真守さんやおばたのお兄さんというコメディ上手な役者さんが揃っているし、彼らのシーンはとても面白かった(後述します)けど、結末がどうであれあくまでこの作品のベースの出来事は「不倫」「妊娠」なわけで。

だからただのポップではなくて、ブラックな部分、ブラックとは言えなくてもグレーな部分があるから、グレーポップミュージカルって感じ(新語)。

③とはいえ全編通してキュートな世界観

開演前の舞台の幕は一面がパイで埋め尽くされている。これが何とも「kawaii」って感じだし、主人公が主に着ているウェイトレスの衣装も水色のワンピースに白いエプロンっていう女の子なら憧れちゃう制服だし、トイレのドアすらピンクでカワイイ。あとは舞台の左右に縦にズラッと並んでるパイの数々も観ていて楽しい。

曲調も明るいものが多くて、聴いていて眠くなるような曲は少なかったように思う。

ジェナの友人ドーンは特にキュート。独立戦争とかいわゆるヒストリーマニアなところがあるんだけど、一挙手一投足がもう愛らしいの塊みたいな子で、そんなドーンとオギーのシーンは可愛くて楽しくて二人が登場するとワクワクしちゃう。

これ最大のネタバレかもしれないけど、私としてはこの作品はあくまでハッピーエンドだと思ってる。不倫テーマなのにハッピーエンド?さぁどういうことなのかは是非劇場へ…笑


ってな感じです。以下、役者さんの感想!

ジェナ役の高畑充希さん。『アリスインワンダーランド』のクロエ振りの生高畑さん。本当は去年彼女の『ミス・サイゴン』を観たくてチケットを取っていたのに、公演中止が本当に悲しかったのでここで拝見出来て良かったです。

彼女のことは金八先生の生徒役で出演されていた時から印象に残っていて、郵政のCMで「人生は夢だらけ」を歌っている姿が大好きでした。最近のおげんさんといっしょの時にウェイトレスの曲を歌っていて、テレビ越しに感動して泣いちゃうくらい彼女の歌声は胸にくる何かがある。

ジェナ、難しい役だと思います。キラキラなアメリカンコメディみたいに振り切っていけるわけでもなく、女性としての葛藤も繊細に表現しなきゃいけないから。でも見事に演じ切ってた〜、、やはり好きです大好き。

ポマター先生役の宮野真守さん。いや、おげんさんといっしょ!って感じだし身長高過ぎて舞台に集中出来ない瞬間も超あったけど、コメディタッチのミュージカルばちばちにお似合いでした。かと言ってオスの顔になる瞬間も上手くシフトしていて違和感なく観れました。

ドーン役の宮澤エマさん。もうコメディ大賞。私は『ジキル&ハイド』でしか拝見したことがなく、正直そこまで印象に残っていないのだけれど、いや、コメディやらせたらピカイチだと思う!声質がとにかく可愛くて、だからと言って歌が下手なわけでもなくしっかり歌い上げる。今後も絶対コメディミュージカル出た方が良い…!『ロッキーホラーショー』のジャネット役とか似合うので再演の際にはソニンさんとエマさんのダブルキャストでお願いします業界の皆さん、、!!

あとビックリ大賞はオギー役のおばたのお兄さん!そりゃ本業じゃないし歌は完璧とは言えないけれど、本業じゃないのに普通に上手で且つもう振り切って彼はコメディ担当なのでめちゃくちゃ面白かった!何がビックリって歌もそうだけど途中でバク転すんの!バク転した後歌い続けんの!!!体力オバケ過ぎてビックリ。あとおばたのお兄さん絶対モテる。何か人の良さとか絶妙に惹かれるホルモン的なものが滲み出てたよ。。おばたのお兄さんと恋愛したくなる気持ち何となくわかった。。

てなわけで今月末まで日生劇場で上演、そして福岡、大阪、名古屋と全国ツアーするみたいです。是非観て欲しい〜!年度末の忙しい時期ですが皆さん、是非!

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