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塩見選手のランニングホームラン 外野守備が「致命的」であった理由とは。2022/3/27 今日のワンプレー

野球の試合を語る時「致命的」という表現を用いることがある。その試合の勝敗を決めるエラーをしたときなど「致命的なエラー」などと使う。

しかし、今回私がタイトルに使った「致命的」は試合における決定的なミスを指すのではない。文字通り「命にかかわる」という意味での「致命的」である。


問題のプレーを語る前にまず外野守備の基本を復習しておこう。

野手間に飛球が上がった場合、いずれの野手が処理するかはプロ・アマ問わずどのチームにも決め事がある。簡単に例を言うと「右中間に上がり、センターライトいずれも処理できる打球はセンターが捕球する。ライトは万が一センターが打球を処理し損ねた時のためにバックアップに回る」のようなものである。

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今日のプレーに関連付けるためにセンターとライトを例に挙げたが、もちろん左中間や内野手との間にもすべて「どちらの野手も処理できる場合に優先して打球にかかわる野手」を決めている。

そして、どの野手が優先度を持つのかは、そのチームの事情・各野手の能力・打球が上がったときのランナーの状況などにより決定される。


たとえば、ランナーがいない時はセンターが処理するが、2塁もしくは3塁にタッチアップのランナーがいる場合には肩が強いライトが処理してランナーの進塁を防ぐ、などがある。おそらく全盛期のイチロー選手がライトを守っていたケース、タッチアップの対象となるランナーがいる場合には強肩のイチロー選手が処理することになっていたはずである。

そして現在のタイガースの場合、左中間・右中間に上がった飛球はセンター近本選手が捕球することになっていると、私は想像する。

レフトは外人選手やベテランの糸井選手が、ライトは本来内野手である佐藤選手が、それぞれ守る頻度が高い。センター専属でありかつ守備範囲が広い近本選手が処理するのが、ひとつのアウトをとるには確実であろうと考えるからである。


問題のプレーに言及する前にもう一点触れておきたいプレーがある。昨日26日の試合、9回表2アウトから見られたプレーである。

典型的な「センターでもライトでもどちらも捕球できる浅い飛球」であった。しかし、センターライトいずれも落下点にて捕球を試みグラブを差し出し、最終的にはライトの佐藤選手がセンター近本選手と軽く交錯しながら捕球した。

このプレー、上記のように「どちらでも捕球できる打球ならセンターが処理する」という決まりごとがあったとしたなら、ライトの佐藤選手はバックアップに回らなければいけない打球であった。しかし佐藤選手自ら捕球しようとしたために、センター近本選手とあわや交錯落球となる危ういプレーとなった。

本来、このプレーをもって選手同士はもちろん首脳陣を含めて、改めて「飛球を処理する野手の優先度」を確認するべきであったのだが、実際プレー後や試合後にそのようなコミュニケーションはあったのだろうか。

そして、今日27日の問題のプレーである。

https://youtu.be/gsQlZ44Yj6M?t=237

ここまでお読みいただいた方ならご理解いただけるであろうが、もしいまのタイガースの外野陣に「右中間の打球で、センターライトいずれも処理できるようなものはセンターが処理する」と明確な共通認識があるなら、これはセンターが捕球を試みる打球である(もし明確な共通認識が無いのなら、野球チームとして問題である)。

こうしておけば、センターが捕球できなかった場合にもフェンスに到達する前にバックアップに回ったライトが打球を処理できたはずだ。そしていかに俊足の塩見選手であっても、ホームまで進塁することはできなかった。

そもそも、プロのプレーで転倒や突然の故障などのトラブルが無い打球で、いくら外野の真ん中を破ったとは言えランニングホームランにまで至ることは極めて珍しい。


ここまでは野球というゲームのプレー上での話である。ここからは私が本当に伝えたい点で、このプレーはおおげさでなく「命に関わるプレーであった」という点に触れたい。


考えてほしい。このプレー、打球の落下点という1つのポイントに2人の野手が全力で、しかもダイビングで捕球を試みている。下手をすれば双方の体が、最悪の場合は頭部同士がまともに激突する可能性があるプレーである。

センター近本・ライト佐藤という、現在のタイガースには欠かせない2本の柱を、この一瞬でまとめて「失う」可能性があったプレーなのだ。考えただけでも身の毛がよだつ。

野手同士の交錯が選手生命どころか生命そのものの危険を伴うことは、野球ファンのあなたらよくご存知なのではないだろうか。

記憶に新しいのは東京ドームで当時タイガースに所属していたライト福留選手とセカンド西岡選手がフライを追って激しく交錯し、西岡選手がそのまま救急車で運ばれたプレーである。

また、古くは読売ジャイアンツの吉村選手が同じ外野手同士で交錯し足に大怪我を負った。その後吉村選手はプレーに復帰したものの、自分の力では足首を動かすことができなくなり、ギブスを付けてプレーをし続けたと言う。


今日のランニングホームランに至った「致命的な」プレーが発生した原因はいくつか考えられる。
・昨年よりも観客が増えたため、野手同士の「オーライ」が聞こえにくくなっている
・外野の連携プレーの練習回数の不足
・内野に付くことも想定されている佐藤選手のライトでの練習不足
・前日のプレーを踏まえての確認不足

いずれにせよ失点や敗戦を招くだけでなく、選手生命をも脅かすようなプレーを減らすため、選手・首脳陣は再確認を徹底してもらいたいものである。


2022年ペナントレース、タイガースは開幕3連敗。細かいプレーの修正がなければ巻き返しは望めない。


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