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阪神ファンのマナーについて書く。

関西生まれ関西育ちの私にとって、他の地域での会話は少々おとなしく感じることがある。逆に見ると、他の地域の方からは関西というエリアの人間は「うるさい」「こわい」などと感じられることもあるのだろう。

その象徴のように語られるのが甲子園のタイガースファンである。昨日2022年4月6日の阪神対Dena戦では、大きく負け越しているチーム状態と当日の試合の不甲斐なさが引き起こしたタイガースファンの行動について、ファンのマナーが大きくクローズアップされた。

これらの行動に弁解の余地はない。100%関わったタイガースファンに非がある。

しかし、「甲子園で荒れるタイガースファン」にはもうひとつ要因があるのではないかと、私は感じている。明らかに他のスタジアムとは異なる点、それを今回は記しておこうと思う。


荒れるタイガースファンと言えば甲子園である。なぜかおなじ関西にある京セラドームでのタイガース主催試合では4月6日に発生したようなレベルの荒れ方は、まったく無いわけではないが頻度は少ない。

圧倒的に試合数そのものが甲子園の方が多いので単純な比較はできない。しかし、京セラドームも1997年に開場してから26年経過している球場である。「マナーの悪い関西のタイガースファン」がスタンダードであるならば、同様の事態が発生してもおかしくないのではないだろうか。


この春、感染症対策が実施される中、私は京セラドームで行われた阪神タイガースのオープン戦や公式戦を観戦した。京セラドームではマスクを着用していない観客がいれば係員がほどなく駆けつけ、その観客に近づきマスク着用を促す。係員は観客がマスクを着用したことを確認してその場を立ち去る。

大声を出している観客に対しても同様である。係員がすぐに直接注意喚起を促すために該当する観客のもとに駆けつける。

つまり、係員によって場が統制されているのだ。小さな違反行為を細かく潰しているので、トラブルが拡大する前にその芽を摘んでいるのである。


一方甲子園。

マスクを外している観客の横を「マスクをご着用ください」と看板を持った係員が黙って通過する。大声を出している観客の横を「声を出さないでください」と書いた看板を持った係員が素通りする。程度のひどいものは申し訳程度の注意をするも、焼け石に水である。

そうなると今度は、マナーを守ろうとする他の観客が問題の観客に直接注意するような事態が起こる。どちらも同じ観客である。注意する方の言葉も激しい表現になることもある。

マナーが悪い観客は同じ観客に注意されると、自分が悪いことは棚にあげ激昂する。こういうトラブルがあちらこちらで発生し、大きなものは新聞沙汰になる。ほとんどがこのパターンである。

本来、主催者側が統制するべき「場」を観客にその統制を任せているのである。これではトラブルが無くなることはない。警察がいない無法地帯の国家のようなものである。悪事を働いても声が大きい者や力がある者が強い。ハナから「どうせ注意されても程度は知れている」「外ではダメな行為もここなら大丈夫」とタカをくくっている輩も存在するのではないだろうか。


関西地区以外の球場では、そもそもの気質もあるのだろうが、目を覆いたくなるようなマナーの悪い観客は少ないように感じる。それでも、違反行為には厳格に対応しており余計にトラブルが発生しにくい状況である。


「昔の甲子園はもっとひどかった。今はおとなしい。」という声もある。確かにその側面は否めない。しかしちょうど20年ほど前、私はライトスタンドでこのような光景を目にした。

当時は暗黒時代と呼ばれる、歴史上でも阪神タイガースが最弱であった時期だ。当日も中盤で大差をつけられ敗戦はほぼ確実、という状況でさらに満塁弾を被弾した。

その瞬間、中段付近に座っていたある観客が座席の下に置いていたビニール傘を、何事かを叫びながらあろうことか前方の座席に大きく投げつけたのだ。

幸い、傘は通路に落ちて事なきを得たものの、着地点が数十センチ違えば命にかかわる大惨事となる可能性がある行為だ。

その瞬間、スタンド前方に陣取っていた黄色ジャージの応援団4-5名が傘を投げた観客の元へ集まった。そして有無を言わさず席を立たせスタンド下の通路へ誘導した。かなり厳しい「指導」が行われたようだ。

きのうの事件の記事を見て、かつて私が見たこのことを鮮明に思い出した。確かに、昔の方がマナーは悪かったのかもしれない。しかしそこには今には無い自浄作用があったのではないだろうか。


再度言うが、最大の悪はマナーの悪い観客そのものである。タイガースファンの一員としてそれは認めなければならない。しかしそれを防ぐ手段もあるのではないかと改めて感じた、昨日の事態であった。


このままでは到底女性や子供が安心して楽しめるスタジアムにはなり得ない。屈強な警備員を配置するなどしてみてはどうだろうか。

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