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あの迷走塁はどうやったら防げたのか 2022/7/16 今日のワンプレー

相手の先発投手は中日ドラゴンズの大黒柱、大野雄大である。おそらく得点のチャンスは少ない。

少ないチャンスのなか可能性にかけたプレーで1点ずつ積み重ねなければいけない試合である。その序盤2回、相手のミスも絡みタイガースはノーアウト1・3塁と絶好のチャンスをつくった。

打席には長打を期待されて久々のスタメンに名を連ねた陽川が立つ。陽川が放った打球は右中間ライトよりやや浅めのフライとなる。犠牲フライとなるか微妙な位置であったものの、3塁ランナーはタッチアップで本塁を狙う。

ところが、外野手から中継の内野手へとボールが送球されたところで、3塁ランナーは三本間のちょうど中間あたりで急停止。3塁へ帰塁を試みるもタッチアウトとなる。

なぜこのようなプレーが起こったのか。以下私の想像である。

スコアは0-1のビハインド、回はまだ序盤。初回から好投していたピッチャー才木を援護するためにも、少しでも早く同点に追いついておきたい状況である。しかし好投手大野雄大から連打は難しい。

そこで、ベンチからは得点を奪う可能性を追求するために
1.内野手が捕球までに時間を要するボテボテのゴロ
2.多少浅めの外野フライ

いずれの場合も本塁へ突入することを試みるよう指示が出ていたのではなかろうか。そして3塁コーチャーを通じて3塁ランナーへ伝達されていたのではなかろうか。

それぞれのメリットとデメリットを考えてみよう

1.内野ゴロで3塁ランナーが本塁へ突入
・得点できる可能性がある
・本塁でタッチアウトになったとしても1アウト1・2塁で攻撃を継続できる
・三本間の挟殺プレーに持ち込めば1アウト2・3塁と、アウトカウントは増えながらもチャンスが拡大できる可能性がある

2.浅い外野フライでタッチアップ
・得点できる可能性がある
・本塁でタッチアウトになったとしても2アウト2塁の形をつくることができ、次打者でもうひと勝負できる
・三本間の挟殺プレーに持ち込めば2アウト2塁・もしくは3塁と得点圏にランナーを残すことができる

いずれもリスクは負いながらも得点できる可能性がある方針である。今回は「2」であったわけだが、要約すると
「多少ギャンブルだがやる価値はある。最悪タッチアウトになったとしてもまだチャンスは残る。だから突っ込め!」である。

このような場面でランナーは「浅いフライなら突っ込むのか自重するのかどちらが今のチームにとって良いのだろう」と考える。そこでベンチから何の指示も出ていなかったとは考えにくい。

ベンチからそのような指示が出ていたのだとしたら、ランナーは返球が良かろうが悪かろうが本塁を目指して走れば良い。アウトになっても指示をしたベンチの責任である。

それを、ランナーは自分の判断で相手野手の返球を見てストップした。そのあとは添付している動画のとおりである。

上記のように、この場面ではランナー自身の判断は不要である。アウトになってもベンチの責任にすればよい。しかし自身で判断して最悪の結果を招いた。どうすればこのような試合を左右するようなミスを防ぐことができるのだろうか。

・ランナーに明確にベンチの意図を伝える
「多少難しくても本塁へ突っ込めと指示が出ている。なにも考えずに進め。」と、方針の意図と責任の所在が明確にランナーに伝わっていたのか。「いけそうならいくぞ」程度ではその根拠や意思まで伝わっていなかったのではないか。

・方針に従うことに対し選手への意思統一を徹底する
数年前、高くバウンドする内野ゴロで3塁ランナーが本塁へ向かわず、即交代となったケースがあった。厳しければよいというものではないが、それぐらいの緊張感か今のベンチにあるのか。

このような細かな指示がプロの野球選手に必要なのかと心配にもなるが、できないのならやるしかない。


1点追記しておきたい。この種のプレーで3塁コーチが批判されることがある。しかし3塁コーチはこのプレーには一切関与できる余地が無い。3塁コーチができるのは事前の意思伝達と、フライが上がった瞬間にタッチアップかハーフウェイ待機かを指示するところまでである。

このプレーではベンチの指示をもとに、打者がフライをあげた瞬間にタッチアップするよう3塁コーチは指示したのではないだろうか。3塁ランナーも速やかに帰塁しタッチアップの準備をしていることが、動画でも確認できる。

ランナーコーチの役割はタッチアップでランナーをスタートさせるまでである。この場面でも自身の任務をまっとうしている。誤算はランナーの動きであった。ランナーコーチ自身もまさかランナーが途中で止まって戻ってくるとは想像していなかったのではないだろうか。

ちなみに3塁ランナーコーチが直接プレーに関与できるのは、2塁から3塁に向かってきたランナーに進むか止まるか指示をする場面のみである。この時でもコーチを通り過ぎたあと本塁へ向かっているランナーに対して、3塁コーチは物理的に指示などできない。

タッチアップで本塁へ向かっているランナーに対しても同様である。自身でプレーした経験がない方にとってはわかりにくい部分かもしれないが、その点は頭に入れておいていただきたい。

中 日 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 2 3
阪 神 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1
【中日】 大野雄 清水 R・マルティネス ○藤嶋(1勝0敗) S祖父江(1セーブ)
【阪神】 才木 岩貞 加治屋 浜地 岩崎 ●アルカンタラ(1勝3敗) 渡辺
[本塁打] 平田1号(中)

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