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ビリー・ジョエル「We didn’t start the fire(邦題・ハートにファイア)」

ビリー・ジョエルの音楽に初めて触れたのは、高校時代。友人からベストアルバムのCD2枚組みを借りた。英語があまりできない自分が、辞書を引きながらメッセージ性が非常に強い歌詞にいたく感銘を受けた記憶がある。

「ピアノマン」から始まる2枚組みアルバムは名曲の宝庫だった。

「エンターテイナー」は自虐的でありながら、芸能界をチクリと批判するような表現があり、いら立ちを皮肉を交えながら、まとめている。この歌、好きだなあ。

思春期のささくれだった心に「オネスティ」は、思いっきり刺さった。「優しさを求めているなら、見つけるのはそう難しくはない。truthfulness(誠実さや真実)を見つけるのは難しい」と歌う。「誠実とは寂しい言葉」と語り、その無情さを高らかに歌い上げる。非常に美しいながら、無常観と寂寥感を誘う歌。
高校生にとって、オネスティの世界観は新鮮だったし、無常観に魅せられた。

「アレンタウン」「プレッシャー」「ロンゲストタイム」「Just the way you are」

ほぼすべての曲がメッセージ性と芸術性に富んでいた。

もうそろそろ、「We didn’t start the fire」について。
ちなみに上記ベストアルバム2枚組みにはこの曲は入っていません。
1989年リリース。ビリー・ジョエル自身が生まれた1949年から、50歳を迎えた89年までの出来事をずらりと並べて、こんなにも挑戦的な曲に仕上げているのはさすが過ぎる。

ただ、それにしても邦題の「ハートにファイア」ってなんだよ。
いや、そんなに軽い歌じゃないよ。「全然分かってないじゃん」とぷりぷり怒ってたっけなあ。

この歌、出来事、事象を年を追って並べているのに、頭に残る。「ハリートールマン、ドリスデイ、レッドチャイナ、ジョニーレイ・・・」ってね。

東日本大震災が起きたとき、1Fを視察し、原子力政策について書いたことがある。そのとき、この曲を念頭にこう書いたことがある。
「日本に原子力の火がともって半世紀。今の若者が生まれるずっと前から国策として原発は存在してきた。選択の余地はなかった。ただ、東日本大震災を経験し、今後も原発を必要とするかどうかは、今を生きる私たちの選択にかかっている」

ビリー・ジョエルも「But we tried to fight it」で、この歌を締めくくっている。

2022年6月17日 トラジロウ

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