おまけ漫画19_2

アレの補足 「世界観の欠落」とは何か

 『ProjectMOE 2』のおまけ漫画……誰も読んでないんだろうなぁ。かな~り真面目なお話を描いたつもりだったんだけど。
 誰も読んでないおまけ漫画の補足をここでやります。書き終えた後、「こういう例えで話せば良かったかな」と思い付いたことがあったので。「みんな読んでいる」前提で書くので、「何を言ってんのかわかんねー」という苦情は受け付けません。意味理解したければ買え。

 おまけ漫画にちらっと出てきた「世界観の欠落」という謎ワードについてのお話。

 これもブログで書いたことのある話なんだけど、私が郵便局員だった頃、よく見かけた光景。
 台風が来て、強風大雨のなか配達に行くと、必ずといっていいほど電気会社の人達を見かけた。嵐が吹きすさぶ中、クレーンを上げて、電線を直している……という光景だ。
 単に、台風で電線が切れたから直しに来た……というだけの話だけど、状況は大粒の雨が横殴りに迫っている中。見かける度に、「大変だなぁ」と心の底から感心した。私たちがこうやって気楽に電気を使えるのは、ああいう人が頑張ってくれているおかげなんだよなぁ、と。

 しかし、こういう話をしていると、必ずこう反論する人が現れる。
「それが仕事なんだから、当たり前だろ」

 当たり前だから、労をねぎらう必要もないし、感心する必要はない。感謝する必要もない。そう言う人は必ずいる。

 確かに当たり前といえば当たり前だけど、その当たり前の生活を支えるために頑張っている人がたくさんいる。スイッチを押せば照明が点くし、蛇口を捻れば水が出る。そういう諸々は、そういうインフラを作り、維持するために頑張っている人達がいるから成立しているものだ。
 それで、そういう人達がどうやって生活をしているかといえば、私たちのお金で生活しているのだし、そういう人達にも当然、家族がいて、家族を守るために仕事をしている。

 ……と、いうことを想像できない人がいる。

 「自分」という視点だけで生きていて、その周囲から「世界観」が抜け落ちている。「世界観」というのは、自分の知らないところでも頑張って生活している人がいる……その全てを包括したものを、ここでは「世界観」と呼ぶ。
 そういうのを想像できないというか、想像しようとすら考え付かない人達が、一定数……もしかしたら恐ろしいほどたくさんいるのかも知れない。「いるかも」ではなく、どうやらたくさんいるっぽい……というのが私が最近思い始めていること。

 ……ちょっと怖くない?

 そういう人達が、「なんでお金払わなくちゃいけないの? 自分とは関係ないじゃん」とか言い始めている。対価の意味がわからない。電気や水道にお金を払うとしても、単に義務くらいでしか考えていない。その向こうに、生活している人がいる、とは思い至らない(多分、NPCだと思っているんじゃないかと)。「対価」ではなく「義務」だから仕方なく払う。

 この状態が、おまけ漫画に書いていた「世界観の欠落」している状態。
 漫画を描いている時は「どう説明しようかな?」と思っていたけど、こう書けば良かったね。書き終えた後、ようやく考えがまとまってきたんだけど。

 最近、世間を騒がせている漫画違法サイト「漫画村」の問題も同じような話ができると思う。
 電気や水道は、ある種の義務感でお金を払うけど、その義務感の対象外である漫画にお金を払う意味を理解できない……。漫画違法サイトを抵抗感なく見られる人、というのはそういう人なんじゃないかな。
 漫画を描くにもお金はかかるし、大変な労力も必要だ。でも、そういった苦労やどれだけ時間がかかるかとか、そういうのを想像できない人がたくさんいる。そういう苦しみとは自分は無関係だ、と思っている人がいる。
 無関係ではない。色んな人が苦しんだ上に、よりたくさんの人の笑顔がある。それはどんな仕事だって一緒。みんな苦労している。苦労している人にお金を払って、「頑張ったね」と言うのは、わりと大事なことだ。

 ところで、なんでおまけ漫画に「漫画村」問題に触れられていなかったのかというと、知らなかったから。「漫画村」の存在を知ったのは、ここ1ヶ月かそこら。本当に知らなかった。いま世の中、そんな問題が起きていたのか……とびっくりした。
 なぜ知らなかったかというと……もう制作に没頭していたから。本当に忙しかったから、世の中のこと何も知らなかった。
 知らなかったからおまけ漫画にも取り上げられず。

 色んな絵師の話を聞いていると、仕事を発注するクライアントにも、この意識が欠如してる人って多いらしい。Pawoo界隈にいると、毎日誰かしらの「あそこのクライアントに酷い目に遭わされた」みたいな話に行き当たる(「仕事したのに報酬なかった」みたいな話)。
 コンテンツの世界がまず多くの人にとって「世界観」の対象外になりつつあるんじゃないか……という危惧がある。

 この辺りも、場所を変えて深く掘り下げたいところだけど、テーマから遠ざかってしまうので、ここまで。

 おまけ漫画に「ちょっとこのテーマで描いてみたい話がある」みたいな曖昧な描き方をしていたけど、この「世界観の欠落」の問題……未来の世界ではより深刻になっているんじゃないか、と考えているんだ。要するに私が描こうとしているのはSF。こういうテーマで書いている人は、多分まだいないんじゃないかな? と思うし、描く価値はあると思う。
 もちろん、理由や根拠はある。
 ネットで世界が広まった……というのは嘘で、ネットにどっぷり浸かることによって、「苦労している人にも生活がある」という想像力を失っていくんじゃないか。そんなふうに考える機会すら奪ってしまうんじゃないか……という危惧がかなりある。ニュースサイトとか見ても、苦労している人に対して「自業自得」としか言わない人、たくさんいるじゃない。
 なぜそういう危惧を抱くのかというと、嵐の中で電線を直す……という仕事を現実に見ていないから。実際に見たら「ああ……大変な仕事だ」と思うのだけど、ネットではその凄さは伝わらない。モニター越しに見ると、「なんかやってるね」くらいの厚みでしか感じられなくなってしまう。
 ネットでなんでも知ることができる、というのは嘘で、多少の知識は得られるけど、そこから凄みや厚みが失われてしまう。失われてしまっていることに、ネットを見ている人は気付いていない。そういう危うさに気付く機会がない。
 だから私は、未来の人達から「感情移入」という感性が失われるんじゃないか……と想像している。

 と、自分の漫画の補足で書いたけど、そもそも読んだ人ってどれだけいるんだろう? たぶん、1人もいないだろう。これ読んだ全ての人が「この人、なに話てんだ?」みたいな反応になりそうだ。もともとのテキスト読んでねーもの。仕方ない。

 というわけで、今回記事の意味を知るために買え。わりと真面目な話もしてるぞ。
 リンク貼っとくからな。買えよ!

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こちらの記事は、私のブログからの転載です→アレの補足「世界観の欠落」とは

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