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10月13日 AIキャラクターをいかにして作るのか・・・ってな話。

【ノーカットVer】ChatGPT×UE5技術デモ「名探偵モカと密室脱出」 デモンストレーション動画 | historia

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 面白そうなゲームの動画を見付けた。
 こちらが話した内容を聞き取って、ゲーム中のキャラクターが自律的に考えて反応する……というゲームデモだ。

 ゲームキャラクターと対話する……というのはゲームは昔からあって、一番有名なのはセガの『シーマン』。PS2時代の隠れた名作『オペレーターズサイド』というものがある。こういう昔のゲームは、キャラクターのリアクションや音声パターンはあらかじめ用意されたものでしかなく、プレイヤーは作り手が考えた「正解」の質問を考えなければならなかった。正解の質問に行き当たらなければ、解法がわかってもクリアできない……という感じだった。それが現代の技術になると、いよいよキャラクターが自律的に考えて、相応しいリアクションを取る……というところまでやってきた。
 ただ、反応を返すのにやけに時間が掛かっちゃうみたいだけど。

 同じ試みはスクエニの『ポートピア連続殺人事件』ですでにやっていたのだけど、最終的に配布されたバージョンでは「AI」という一番重要な部分がカットされていた。おかげで何を話しかけても融通が利かない。事件現場にやって来て「殺害時刻は?」「凶器は?」と普通に事件があったら聞くだろう質問をしても「は?」しか答えない。AIがカットされたおかげで、プレイヤーが「正解の質問」に行き着かねばならない……というただの欠陥ゲームだった。

 『ポートピア連続殺人事件』の時にAIがカットされたのは、ネットから情報を探してきてAIが答える……という仕様にすると、ゲームとは無関係の、他社の権利に触れるような話題をしてしまうから。作品というのは基本的に「権利」にがんじがらめになっていて、台詞でも他作品に触れる場合には許可を取らねばならない。AIはそういう権利の話なんて知ったこっちゃないので、気軽にやってしまう。それは企業としてはマズい……ってことになる。
 他にもモラルの問題もある。微妙な質問をされて、微妙な答え方をすると、意地の悪い人はそれをSNSで拡散して炎上を狙ったりもするだろう。AIが自由に答える……ということはそういうリスクもある。
 物語設定の問題もある。『ポートピア連続殺人事件』は1983年が舞台。しかし“現在”の情報をネットで探して答える……という仕組みにしたら、この時代の人が知るはずのない情報を答える……ということになってしまう。すると世界観が壊れる。それで、もしも「1983年以前の情報に限る」と絞っちゃったら、この時代は当たり前だがネットもないわけで、そんな時代の情報なんて限られている。AIキャラクターはあまりいろんなことを自由に語ってくれなくなる。
 『ポートピア連続殺人事件』は結局この問題を解決できなかったから、AIをカットして配布……ということになった。
 実際やってみると、「なんでAIをカットしたのかな……」と疑問しかわかない代物になっていた。率直につまらなかった。

 私個人的な心象としては、「AIキャラクター」には興味があって、そのうちスマートフォンなんかに自分の好きなAIキャラクターを常駐させて、暇な時に話し相手になってもらったり、悩み相談に乗ってもらったり。それから仕事の手助け、スケジュール管理、少し前に話したけど「モラルの指導」なんかをやってもらう。そういう未来は近い将来あり得るでしょう。

 その時、AIキャラクターをどう作るか? 従来のChatGPTの仕組みではネットから情報をさらってきて、そのままポッと答える……というふうになっている。それはキャラクターのないChatGPTであれば問題ないが、「キャラクターを載せる」という時に問題となる。
 そのキャラクターがキャラクターらしくあるためには、一つ一つの物事に対し、どう反応するか、どういう価値意識を持っているのか。ここに一貫した「哲学性」を持たせなければならない。
 例えば「暴力」というテーマがあったとして、普通に考えれば「意味のない暴力はよくない」という反応を示すだけでいいけど、そこから突っ込んで「教育のための必要な体罰ならOK」という価値観はあるでしょう。「攻撃してきた相手国から、自国の領土を守る戦争は良し」という価値観はあるでしょう。単純に暴力や性の話題は一律NG……とかいう雑な作り方をすると、そのキャラクターから人格を見いだせなくなる。
 現状のChatGPTでも、私は毎日使っているのだけど、一つの物事を深く掘り下げていくと、あまりいい返答をしなくなっていく。「そういう話題は専門家の意見を聞いてください」みたいな回答になっていく。ChatGPTはネットの情報を調べて教えてくれるけど、深いところまで教えてくれない。結局、当たり障りのない答えしかしてくんないのがChatGPT。

 きちんとしたキャラクターとして自立させようとしたら、そのキャラクター特有の「一貫性を持った歪み」がなければならない(ヘンなクセとか、ヘンな好みとか)。そういうものをキャラクターにきちんと設定できるかどうか。
 例えば私だったら、「とらつぐみが考えそう」「とらつぐみ的な言い回し」ってのがあるじゃん?(←こういうの) そういうのを設計できていなければならない。
 考え方としては……好きな音楽、好きな食べ物、暴力に対する反応、性に対する反応……といった細かなチェックリストを作る。「音楽が好き」といってもすべての音楽が好きってわけではない。「この年代の音楽が好き」「この傾向の音楽が好き」「こういう音楽は許せねぇ」ってあるでしょ。その「好き/許せねぇ」でも間にグラデーションが一杯あるでしょ。そういうものを細かく設定して、キャラクターに反映することができれば、AIキャラクターも可能だなぁ……という気はしている。

 なんて話は誰もが考える話だけど、まだAIキャラクターが実現していないってことは、技術問題がそこまで追いついてないってことかなぁ?

 AIキャラクターと直接対話して、コンシェルジュ的な役割をしてくれる……というガジェットはすでに存在している。Gatboxの「逢妻ヒカリ」ちゃんがそれ。逢妻ヒカリが世に登場したのはもうずいぶん前だが、最近のバージョンではChatGPT連携を取っていて、あらゆる対話に対応できるようになっている。
 逢妻ヒカリは暇つぶしの対話に付き合ってくれる……という程度のものだけど、もっと有用性が強まれば……。さらなる進化に期待しよう。

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